士魂商才とは
「士魂商才」をもう少し説明しますと、商売をするには、武士の魂をもって行うことが重要だ、という意味になります。では、武士の魂とはどういうものでしょうか。
新渡戸稲造は、その著書『武士道』の中で、こういっています。武士の本分は、「仁・義・礼・智・勇」であると。論語の教えの中にもあることです。
渋沢も同じことを言っています。「仁・義・礼・智・勇」に基づいた商売をすることが、商人(経営者)にとって必要だというわけです。『論語と算盤』は、そうした考え方で貫かれています。
そして、「儲ける」ことについても、考え方は明確です。このように書かれています。
「真正の利殖は、仁義道徳に基づかなければ、決して永続するものではない」
つまり、思いやりや正しい行いによって得られた利益でなければ、事業は長続きはしない、ということです。
また、こうも書かれています。
「道理をもった富貴でなければ、むしろ貧賤の方が良く、もし正しい道理を踏んで得た富貴ならば差支えない」
道理や徳による富の形成ならば、大いに結構だということです。さらに渋沢は、「自分の人生は忠恕一貫の思想をやり通した」と振り返っています。相手への思いやりと誠実な態度を貫いたということです。
まさに、経営者だけでなく人間のとるべき道ですね。実業家として成功を納めた人の言葉だからこそ説得力があります。ビットコインに振り回される人たちが聞いたら、どう思うのでしょう。
それはともかく、正しい道を歩んでこそお店も繁盛することを、この機会に渋沢栄一から学びたいと思います。
■今日のツボ■
- 儲けることは良いことだが、考え方が大切である。
- 「論語と算盤」には、正しい経営の道が示されている。
- 「士魂商才」こそ、経営者の目指す道である。
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