1月23日午前、草津白根山の本白根山(群馬県草津町)が想定外の場所から噴火し、12名の死傷者を出すという大惨事になったことは記憶に新しいところです。また、宮城県の蔵王山でも警戒レベルが上がるなど、日本の地下でいま何かが起きていると考えるのは自然なことなのかもしれません。この事態を受け、メルマガ『DuMAの「地下天気図」』の著者で地震予知の第一人者としても知られる長尾年恭さんは、近年になって認識が変わりつつある「噴火のメカニズム」を図入りで紹介するとともに、3.11以降、地下の様相が大きく変わったという東北地方の現状についてもわかりやすく解説しています。
蔵王火山の活動活発化のニュースや草津白根の噴火をどう考える
宮城・山形両県にまたがる蔵王山で火山活動が活発化しています。現在、噴火警戒レベルが2に引き上げられていますが、火山性微動という最も噴火に直結すると考えられている現象は、まだあまり増加していません。そして山体の膨張を監視する傾斜計という装置でも変動はやや穏やかになっているようです。
また1月23日には草津白根がそれこそ”想定外の場所”から噴火し、死傷者が出てしまいました。これらの状況をどう考えたらいいのでしょうか。さらに東北地方で本当に火山活動が活発化しているのでしょうか?
火山はどのようなきっかけで噴火するのか?
皆様は火山噴火がどのような事をきっかけにして発生するのか、ご存知ですか?実は今から30〜40年前に考え方の大きな転換がありました。
それまでは火山は(プレート運動などの)圧力(=圧縮力)がだんだんと高まって、マグマがあたかも歯磨きチューブから押し出されるように噴火するのではと考えられていました。
ところが、噴火は地殻の圧力が減少したときに起こるのではという考え方が主流となったのです。
つまり、ぎゅうぎゅう押されてマグマが地表に絞り出されるのではなく、地下での圧力が下がって、マグマの中に溶けていた揮発性物質が気体となり(これをマグマの発泡現象と言います)、マグマの体積が結果として大きくなり、地表に噴出するというものです。
シャンパンやビール瓶の栓を急激に抜いた時に中の液体が泡とともに吹き出しますが、これが噴火と同じメカニズムと考えられるようになったのです。
東北地方の現在の状況
2011年の東日本大震災により、日本列島の地下の様相は大きく変わってしまいました。この地震で東北地方は大きく東に動き、東日本は大きく東西に引き伸ばされてしまったのです。
つまり、東日本では、火山噴火の準備に必要な地下での圧力低下があり、マグマの中で発泡現象が起こりやすくなったのです。地球にとって、地震後の7年というのは一瞬の事で、東日本大震災の影響(たとえば余震活動やそれに誘発される火山噴火)は100年のオーダーで続くのです。
次の図は2011年3月以降に発生したマグニチュード7以上の地震(7.4以上の地震は発生日などを記入してあります)の分布です。
本震がマグニチュード9という事は、地震学のこれまでの常識では、最大余震はマグニチュード8が予想されるのです。ところが、現時点での最大余震は、マグニチュード7.6で、まだ最大余震は発生していない可能性が高いのです。
DuMAでは、このような地震や火山噴火に関する正しい知識の啓発活動にも力を入れています。そしてニュースレターやウエブを通じて、最新の情報発信に努めていく所存です。(長尾年恭 DuMA/CSO)
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