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なぜ世界中で暴れている中国人たちは中国国歌を大合唱するのか?

世界中でトラブルを起こしている一部の中国人たちが、みな一様に「中国国歌」を大合唱するという現象が話題になっています。彼らはなぜ、海外で問題行動を起こした際、まるでテーマ曲かのように国歌を歌い出し始めたのでしょうか? その背景には、習近平政権が推し進めてきたナショナリズムが深く影響しているようです。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の著者で台湾出身の評論家である黄さんは、習政権の国威発揚に乗っかった「中国人暴徒」たちの目に余る蛮行を厳しく批判するとともに、その責任は習近平氏の神格化を目論む中国国家にこそあると指摘しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年2月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め1月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】中国国歌が中国人暴徒のテーマ曲となる理由

成田空港で中国国歌大合唱、立て続けに起こる海外での中国人トラブルに中国国営テレビが苦言

1月24日、上海行きジェットスター航空35便が、到着地の悪天候によって欠航になったことで、不満に思った多数の中国人乗客が成田空港で中国国歌を歌いながら大暴れするという事件が起こりました。その模様は動画で撮影され、中国国内でも流されました。

成田空港で欠航に苛立った中国人男性が暴れる 中国国歌を歌う集団も

さすがに中国国営テレビCCTVも「祖国は危険が迫った時の後ろ盾であって、スケープゴートではない。何かにつけて中国などと叫ぶのは、国外の空港での理解が得られないだけでなく、国内の同胞の賛同も得られないと苦言を呈しました。

世界各地で見られる一部の中国人のマナーの悪さについては、いまさら説明する必要はないでしょうが、今回の件で中国政府が警戒したのは、ちょっとした不満が反日行動に結びつき、コントロールできなくなることを恐れたのだと思います。

この中国人たちが大合唱した中国国歌は、「義勇軍進行曲」という題名ですが、もともとは日中戦争中の抗日曲でした。1935年に抗日プロパガンダ映画として製作された「風雲児女」という映画のなかで歌われたものです。

● 风云儿女(Wikipedia)

その歌詞は、「起て! 奴隷となることを望まぬ人びとよ! 我らが血肉で築こう新たな長城を! 中華民族に最大の危機せまる、一人ひとりが最後の雄叫びをあげる時だ。起て! 起て! 起て! 我々すべてが心を一つにして、敵の砲火をついて進め! 敵の砲火をついて進め! 進め!進め!進め!」という、非常に好戦的な内容です。

例の中国人たちは、便が欠航したことで、日本で不当な扱いを受けたと逆恨みし、「中華民族に最大の危機せまる」などと大げさに歌ったわけです。しかし、彼らのほとんどは、LCCの安チケットを購入した者たちでした。格安ですからいろいろ制限や不便があるのも仕方ないのですが、にもかかわらず、いざとなると法外な要求をする。

そうした不逞の連中ですから、中国当局も国歌の歌詞を引用するようなかたちで、「祖国は危険が迫った時の後ろ盾であって、スケープゴートではない」と批判したのです。

ただ、中国人が抗議のために国歌を歌ったのは成田がはじめてではなく、世界各地の空港でよく歌っています。2015年にはタイの空港で飛行機の遅延に怒って国歌を歌い大騒ぎした事件もありました。

● タイの空港で大騒ぎした中国人ツアー客、なぜ国歌を歌ったのか

抗議の際に「義勇軍進行曲」を歌うのは、その歌詞もさることながら、共通の曲がそれほど多くないからです。もちろん「東方紅」という曲もありますが、毛沢東を讃えるための歌ですから、やはり時代遅れでしょう。

改革開放後、日本の著名な音楽家・高木東六が中国へ歌謡採取に赴いたことがありましたが、あの広大な中国に民謡は少数民族にしかなく、かつてのものはほとんど消えてしまっていました。文章は国の大事ですから、歌詞だけは残りますが、唱歌としては残っていなかったのです。だから共通の歌がないのです。

2014年には、タイのエアアジア航空の機内で、座席のマナーをめぐり中国人女性客が大暴れしたこともありました。客室乗務員に熱湯を注いだカップラーメンをぶちまけ、さらにそのボーイフレンドが参戦し、「私の友人は人民解放軍だ。この航空機を爆破してやる」と恫喝したため、航空機はそのままバンコクに引き返し、カップルは拘束されて多額の罰金を支払わされました。

もっと楽に旅をしたいなら、ビジネスクラスにアップグレードすればいいと思いますが、それをせずに揉め事を起こすというのは、マナーや教養の問題です。

四川大地震の際、台湾は台湾人観光客救出のためにチャーター機を成都空港まで飛ばしました。しかし、中国人観光客が空港の滑走路に乱入して、台湾機が飛び立つことを阻止しました。その大義名分は、「同じ中国人なのに、台湾人だけが四川から逃げるのは卑怯で不公平だ」というものでした。しかし、文句を言うなら、北京中南海の国家指導者たちに言うべきです。

今年の1月28日にはイランのテヘラン空港で、20年来の大雪により滑走路が閉鎖され、中国人客約240人が空港で待機。一部の中国人乗客が興奮した様子で「中国!中国!」と叫び、顰蹙を買ったそうです。

このように、中国人が国歌や中国を叫ぶ背景には、習近平が大々的に唱える「中華民族の偉大なる復興」というスローガンがあることは間違いありません。習近平は一貫して、ナショナリズムを鼓舞してきました。

とはいえ、中国人に国家意識が芽生えたわけではありません。かつて孫文は、中国人を「バラバラの砂」と表現しましたが、近年の世論調査でも6割の中国人が「生まれ変わっても中国人にはなりたくない」と答え、金持ちになって中国から脱出することが「中国人最大の夢」なのです。

そのため、ことさら「中国を強調するのは、単に他者に不満をぶつける際の方便として使っているに過ぎません。最高指導者である習近平が唱えるスローガンだから、それを使えば問題ないだろうということで、自己中心的で勝手な振る舞いに愛国を利用しているのです。つまり「愛国無罪」(たとえ蛮行であっても愛国的行為は許される)です。

2012年9月に中国各地で発生した反日デモでは、中国国歌を歌いながら日本企業から略奪する暴徒が頻発しました。今回の成田空港の一件は、それと同じ性質のものです。ただ違うのは、中国での反日デモは中国政府が押さえ込めますが、海外ではそれができないということです。

しかも昨年10月には、国歌に対して替え歌やブーイングなどの侮辱行為を禁じる国歌法が施行され、香港にまで適用されています。習近平政権そのものが愛国意識高揚政策のために国歌を利用しているのです。

中国の国歌法、香港にも適用、侮辱で懲役3年と罰則も強化、「一国二制度」の本土化着々

近年、習近平は絶対権力者として神格化が進んでいます。憲法に習近平思想が明記されることも決まり、毛沢東と並ぶ偉大な指導者という地位を獲得しつつあります。それだけに、ますます習近平の金言を利用して、身勝手な要求をゴリ押しする中国人の振る舞いが増えているのだと思われます。

今年の3月から、中国の中学校の歴史教科書から、文化大革命の項目が削除されることが明らかになりましたが、数千万人もの犠牲者を出した文革についての毛沢東の「誤り」を消し去ることで、建国の父である毛沢東の権威はますます高まり、そして習近平が毛沢東に並んだという評価をつくることで、習近平も絶対無謬の指導者と崇められようとしています。

教科書から「文化大革命」消える ネットで批判噴出

そんな習近平の進める国威発揚に乗っかって、中国人が海外で愛国無罪を叫んで傍若無人に振る舞う、ということが起きているわけです。習近平政権としてもここは痛し痒しで、せっかく中国の偉大さを世界にアピールしようとしても、「中国国歌=中国人が難癖をつけるときのテーマ曲」というイメージがつけば、大国の威信は丸潰れです。

いずれにせよ、習近平の神格化がさらに続けば、同様のトラブルが世界各地で発生し、中国の滑稽さがますます露呈してくることになるのだと思います。

image by: Chintung Lee / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年2月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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