親・上司・先生・先輩など、目上の人に「無理だよ」「諦めなさい」と言われて、そのままになっていることはありませんか?法的に禁止されているわけでもないのに、あなたを躊躇わせる「禁止事項」を破ってみることで新しい世界が開けるかも?「『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者でNY在住の著者・りばてぃさんが、アメリカのとある女子大生に起こった「奇跡」のエピソードを紹介しています。
アメリカン・ドリームって今でもある?
(1)米国経済での小売業界の重要性
長らくブログ及びこのメルマガで特集していた米国小売業協会(National Retail Federation、以下NRF)のリテールズ・ビッグショー。
小売産業を盛り上げる目的を持つNRF主催のイベントだけあり、小売業界を目指す学生を支援するプログラム(The Student Program at Retail’s Big Show)も多数用意されている。
本体のビッグショーとは別に基調講演やセミナー他、小売業界関係者とのネットワークが作れるキャリアフェアもあり、毎年、数多くの学生がアメリカ各所から集まってくるのだ。
●ご参考:The Student Program at Retail’s Big Show
NRFビッグショーへの入場料は1人あたり30万円ほどと高額のまさに専門家向けのゴリゴリのイベント。
当然、そこに出展する企業は小売業界で今まさに注目の商品やサービスを提供する企業。
ブース内容も気合いが入りまくっている。
基調講演には、世界的に有名な企業の社長や役員、旬で話題の新規企業の創業者なども登壇するので、それだけでも会場は熱気に溢れ、お祭りムードも漂う大規模なイベントとなっている。
多くの小売業界の人々が集まるのだから次世代の小売を担う人材を探せる場にもしようということで、学生向けのプログラムも始まったのだろう。
ちなみに、プレス専門の控え室には、いかに小売業界が雇用を生み出しアメリカ経済に恩恵をもたらしているかをまとめた動画が流され小売業界の重要性をアピールしていた。
実際、NRFが作成した『小売業の影響力』(Retail’s Impact )によると、小売業は関連産業も含めて、合計4,200万人もいるという。
なぜなら、小売業の仕事は実店舗に常駐する販売員だけではない。
ソフトウェア開発やプログラマー、警備員、広告宣伝・マーケティング・PR業や管理職、さらにアートやデザインの仕事などにも小売産業は直接的に関係している。
小売業に直接関係していない運輸業、管理職、医療・ヘルスケア関連サービス業、金融・保険・不動産業、技術職などなども小売産業は支えているため、米国の雇用は、小売業の成功に依存するとも言われているほど。
結果的に、米国全体の雇用の4分の1(23.4%)を支え、米国経済をけん引する最重要産業になっているのだ。
たしかに、小売産業は、私たちの日々のあらゆる生活に直接関係しているので、感覚的にもとても重要な産業であることは理解できる。
●ご参考:『小売業の影響力』(Retail’s Impact )
それだけ重要な小売業界を今後も発展させていくためには、後継者の育成は最重要課題。
というわけで、学生向けの様々な就職支援プログラムの中にはすでに働いている社会人が聞いても勉強になるようなものも多い。
例えば、今年の閉会式のスピーチが、非常に興味深いものだったので、今回はそれを紹介しよう。
(2)いつからインターンを始める?
閉会式でスピーチをしたのはローレン・バーガーさん(Lauren Berger)。
ローレンさんは、学生向けのインターンシップ情報を掲載するポータルサイト「InternQueen.com」の創業者。
日本ではまだまだインターンシップはメジャーではないので、あまりピンとこないという方も多いと思うが、インターンシップはアメリカでは当たり前。
学生のうちから仕事の実績や経験を積み、就職に活かすのが目的だ。
企業側にとっても雇用する前にその学生について知ることができるので採用の参考になる。
しかも、アメリカではインターンシップは必ず”やらないといけない”ものでもある。
インターンシップをしないと大学の単位を取得できないということも珍しくなく、大学の学年によって申し込みできるインターンシップも違うのである。
学校の必修科目を受けないと申し込めない業種や職種もあるため、大学1年生では申し込みすらできないものも多い。
ちなみに、ここ近年では、大学3~4年になってからインターンを開始するのは遅いくらいになってきていて、1年生からインターンをする人が増加。競争も激しくなってきている。
上述のInternQueen.comの創業者のローレンさんは、彼女がInternQueen.comを立ち上げることになったきっかけにもなった、大学生時代のインターン経験について話をした。
これからインターンを探す学生に向けたものだが、長年、社会人として働く人にとっても非常に勉強になるし、改めて「チャンスを掴む方法」は何なのかを考えさせる内容となっている。
(3)どうやってやるか
ローレンさんが大学に入った2002年の頃は、今と違ってインターンは3~4年生から開始するのが一般的だった。
ローレンさんも他の学生同様に大学生活を楽しんでいた。
勉強の合間はお友達と食事や買い物。パーティーにスポーツ観戦など忙しい日々を送っていた。
そんなある日、ローレンさんのお母さんから電話があったのだ。
「インターンを探しなさい」
ローレンさんはびっくりした。
大学に入ったばかりだし、インターンシップの他にやりたいことはいっぱいある。それに、インターンを始めるには早すぎる、そう思っていたから。
「お母さん、インターンにはまだ早すぎるわ。まだ1年生なのよ」
そう答えると、お母さんは、
「何を言ってるの。みんな1年生からインターンしてるわよ。朝のテレビ番組でやってたんだから」
テレビ番組のニュースに影響を受ける母親。よくある話だ、そうローレンさんは思った。
特にインターンを探しはじめることもなかった。
そんな娘の行動パターンは母親ならある程度わかっていたのだろう。それから電話する度に娘にインターンを始めるように勧め続けた。
何度目かの電話の後、ローレンさんはようやく重い腰を上げて探すことにした。
まずは大学のキャリアセンターだ。
キャリアセンターでインターンをしたいことを伝える。
「将来の夢のお仕事は何ですか?」
キャリアアドバイザーの人に聞かれた。
ローレンさんの将来の夢のお仕事は、US Weekly Magazineという、一般大衆誌で働くこと。
ハリウッド俳優などセレブのゴシップネタなどを多く扱う雑誌だが、そこで働きたかった。
そう告げると、出版社やPR会社でのインターンが適しているとアドバイスされる。
しかし、とっても残念なことに、出版社やPR会社のインターンは大学4年生になってからしか申し込めないと告げられる。
「1年生のあなたは申請資格がありません。4年生になってからまた来てください」
申請すらできない、という回答だった。
せっかくやる気を出したのに拒否されたことに非常にがっかりしたローレンさんは、自宅に戻ってからグーグルで検索をした。
「PR Internship」
パブリック・リレイションシップのインターンを検索したのだ。
大手広告代理店がトップに表示された。公式サイトに、インターンのことは一切何も書かれていなかった。
つまり、募集していないということだ。
そんなことはかまわずとにかく問い合わせてみた。しかも、電話でだ。
大学から教えられるのは、
「会社に絶対に電話してはいけません。ルールですから」
ルール破りと自称するローレンさん。大学からの忠告を気にせずに問い合わせ番号に電話した。
インターンシップを取りまとめる担当者に繋いでもらい、インターンを希望することを伝えたのだった。
「まずは履歴書を送ってください」
担当者はそう言った。
大学1年生の彼女は当然、履歴書は準備していない。
しかも、履歴書に書く職歴は地元のファーストフード店でのアルバイトなど2件ほどしかなかった。
職歴も何もないけど、相手が望む履歴書をとにかく早く送ろう。
電話をかけたその日の夜、ローレンさんは予定が詰まっていて忙しかった。
「みんなもそうだと思うけど、いつも忙しかった。その日の夜もいつも通り、忙しかった。でも、とにかく時間を作って履歴書を作成して送ったのよ」
そう、電話したその日の夜に履歴書を送ったのだった。
すると、翌日、昨日話した担当者から電話がかかってきた。
「ローレン、私は感動したわ」
一体、何に感動したのか?
職歴はほとんど無い。
これといって素晴らしい実績を持っているわけでもない、ごくごく普通の大学1年生だ。
なのになぜこの人は私の履歴書で感動したのだろうか?
「この広告代理店で10年もインターンシップ生のとりまとめをやってるけど、こんなに早く履歴書を送ってきた人は初めてよ!たいがい最初の会話からフォローアップまで4~8週間かかるのが普通なの」
驚いたローレンさんは、このことがきっかけで、面接を受けることができ、念願かなってその広告代理店でインターンをすることになった。
大学からは、4年生にならないと申請すらできないと言われたPRのお仕事だ。
この経験を受けてローレンさんは、
「誰かがダメだと言ってもあなたはできると言いなさい。そして、どうやったらできるのか考えるのよ」
とアドバイスする。
ローレンさんは大学生時代に15件ものインターンを経験しており、その中でも、彼女のもっとも印象に残っているインターンの話をしているのだが、そこに至るまでに奇跡的なことが連発しているので、次週はその話をお届けしよう。(つづく)
image by: Twitter-Lauren Berger(@InternQueen)