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自分の中の「赤ちゃん」を褒めるセルフ・コンパッションって何?

自分に自信を持つことが何より大切、などとよく言われますが、果たしてそれは本当なのでしょうか。今回の無料メルマガ『セクシー心理学! ★ 相手の心を7秒でつかむ心理術』では著者で現役精神科医のゆうきゆう先生が、「自信のデメリット」を記すとともに、自信よりも重要という「セルフ・コンパッション」について解説しています。

「自信」には恐るべきデメリットがある!

よく「自信を持つにはどうすればいいですか?」「私は自信がなくて困っています」というご相談をいただきます。そんな方に、今回の話をお贈りします。

まずそもそも、「自信って何か? ということについて考えたいと思います。自信とは、読んで字のごとく「自分を信じること」。辞書などでは「自分の能力や価値などを信じること」など説明されています。ではここで「信じるとは何でしょうか。それこそ「神を信じる」などの言葉もあるように、「本当にそうなのか分からないが、とにかく固くそうであると考えること」となります。

たとえば「ネコはニャーと鳴くと信じてる!」とか「ウナギはヌルヌルしてると信じてる!」なんて言うことはないですよね。もしそう言う人がいたら「いや信じるまでもなく、事実じゃん! 何言ってんの!?」と思うはずです。他にも「バストは柔らかいって信じてる!」とか言う人がいたら、「あぁ、触れたことがなくて想像で言ってるな」と分かるはずです。また「あなたは裏切らないって信じてる!」と言えば、「裏切るか裏切らないか分からないけど、たぶん裏切らないと思う。ていうか裏切らないでね?」という無言の強制です。

何にせよ「信じる」というのは「本当にそうか分からないけど、そうだと強く考えます!」という意味。すなわち「自信」については、「自分ができる人間か分からないけどできる人間だと考える」ことです。

これ、一見素晴らしいことですね。

実際に心理学では「ピグマリオン効果」というものがあります。ピグマリオンという王様が、美しい女性の石像を、激烈に愛していたら(この時点でヤバいのですが)、その石像が本当に人間になってしまったという、史上最古の人形フェチみたいなエピソードから来ています。ここから、たとえばある人を天才だと信じていればその人は実際に天才に育つという心理効果です。

これは自分自身についても言えるので、自信を持って「俺はすごい!」「私はできる!」と思っていれば、実際に本人も強い存在になっていく可能性があるわけです。そういう意味で、自信はとても重要なのです。しかし、自信には落とし穴もあるのです。

自信をキズつけられたくない

「自信」の一番のデメリットは、自信をキズつけることを恐れて、チャレンジしづらくなるということ。

たとえば「自分は素晴らしい存在だ!」と思っている人が、異性に告白するのをためらうことがあります。それは「フラれたら自信がゆらぐ」から。または「自分は勉強ができる!」と思っている人が、新たな資格試験にチャレンジするのを控えたりもします。同じく「落ちたら自信を失う」から。

また他にも、自信が強すぎることで、周囲の人に「あいつは偉そうだ」「自信がない人の気持ちが分からない」なんて思われてしまうことがあります。自信というのは確かに素晴らしいものなのですが、このようにネガティブな点もあるのです。

自信はアバウトすぎてしまう

また「自信」という言葉が一人歩きしすぎているのも問題。世の中では「自信を持ちなさい!」「自信は大切だ!」という風潮があります。

それによって「自信を持ってない自分はダメだ…!」「どうやったら自信を持てるだろう…! 自信が持てたら、もっと色々な行動ができるのに…!」なんて思ってしまい、「自信がないゆえに何もできない」なんていう人もいます。

それこそ「自信が持てたら、あの人をデートに誘えるのに!」なんて思っている人がいたらどうでしょうか。すなわちそれは「神さまがいると信じられたら、あの人をデートに誘えるのに!」みたいなもので、あまりにも漠然としています。「自信がある」には明確な基準がないので、それを理由に行動しないなんて考えたら、いつまでも何もできません。それこそ「見えないドアに行く手をはばまれているようなものです。

「やっと自信が持てた!」なんて考えたときが100歳の老人だったら、何だかあまり意味がないような気がします。

大半の自信は「条件つき」

実際に、自信は大半が「条件つき」です。たとえば「自分は自信があります!」という人がいたとします。この人に「どうして自信があるんですか?」と聞いたら、「これだけお金を稼いでるから」「仕事でうまく行っているから」「こんな素敵な人と付き合っているから」なんて風に「理由が出てくるものです。

しかしこれ、逆に考えれば、人生でうまく行かないことがあったり、恋人と別れたりすれば「自信を失う」結果になってしまいます。これはあまりに弱々しい状態です。

自信実は地震と近い存在です。地震一つで壊れてしまうビルと変わりありません。結局、「自信」より、もっと大切で重要なものがあるのです。

重要なのは、自信ではなく…!?

実はテキサス大学の教育心理学者であるクリスティン・ネフは「自信よりもずっと重要なものは『セルフ・コンパッション』である」と言いました。コンパッションは「思いやり」や「慈しみ」という意味。すなわち「セルフ・コンパッション」とは、「自分への思いやり・慈しみ」です。日本語にするなら「自慈(じじ)」なんて訳が当てはまるかもしれません。語感がジジイっぽくて申し訳ありません。

何にせよ「セルフ・コンパッション」。分かりやすく言うなら、親が子供にたいして抱くような愛でしょう。親は子供がどんな失敗をしても、見捨てたりしません。間違ったことをしたら、もちろん反省を促しますが、だからといって「あなたは何やらせてもダメだ! 間違った存在なんだ!」なんて言うことはありません。または「このコは受験に失敗したから価値がない」「恋人にフラれたからダメ人間だ」なんて思って、一つの失敗のたびに放り出すなんてことはありません。

何をしても、根本的に子供の存在を受け入れています。うまく行かないときは励まし、成功したときは大喜びしてあげたりします。このような気持ちこそが「セルフ・コンパッション」なのです。

よって大切なのは、これを自分自身に抱くこと。これこそが「自信」なんていう、あいまいで弱々しいものより、ずっと強く、気持ちを高めるキーワードになるのです。

親は何をしてもほめる

では具体的にどうすればいいのでしょうか? それこそが「赤ちゃんをほめるように接すること」です。親は赤ちゃんにたいして、何かをするたびに全力でほめます

「うわー! 笑った! すごい!」
「『ママ』って言えたよ! 天才ー!」
「歩いた! 歩いたよー! この子は成長が早いー!」

そんな風に、一つ一つの行為によって大喜びしてほめます。その結果、赤ちゃんはそのテンションを嬉しく感じて「もっとやろう! もっと!」と思えて、どんどん成長していきます。

逆に、

「笑ったけど、笑い方がイマイチだね」
「『ママ』って言ってるけど、『お母さま』って言えないのはダメね」
「歩いたけど、歩き方が美しくない」

こんな風にいちいちケチをつける両親は存在しませんし、これを繰り返していたら、赤ちゃんはそのネガティブなテンションを感じて、どんどん発育が遅くなる可能性もあります。

他にも、歩いて転んでしまったときに、「よしよし! 大丈夫! 大丈夫よー!」と親はすぐに抱きかかえてあげるでしょう。逆に転んだときに「転ぶなんて、このコはどうしようもない…! これから先の人生でも転びを繰り返してどんどん転落していくんだ…!」なんて親もいません。

しかしおそらく、あなたが大人になって、何か失敗したときに、それと近いセリフを自分に言ったりしていることはないでしょうか。おそらく思い当たる人も多いはずです。何をしても、どんな小さなことでも、全力でほめる。また失敗したとしても、そんなの気にせず「大丈夫、大丈夫!」と受け入れてあげる。そんな風に、赤ちゃんに接するように、「あなた自身」に接してあげてください。

「今日は、イヤな上司と笑って話せたの!? えらい! よくやったねー!」
「仕事でレポートうまく書けなかったの? でもシメキリに間に合ったのはす
ごいよ!」
「失敗しちゃったの? 大丈夫、大丈夫! そんなのまったく気にしなくてい
いよー!」

こんな風に、何があっても包み込むこと。これこそが「セルフ・コンパッション」であり、自信よりもずっと素晴らしく重要なことなのです。

あなたは赤ちゃん

よって今から、あなたの中に赤ちゃんを作り出してください。あなたは赤ちゃんです。オギャオギャ言っている赤ちゃんです。その赤ちゃんは、今日生まれたばかりで、右も左も分かりません。それでも「今日は仕事行かなきゃ!」「勉強しないと!」という義務を突然に与えられ、よく分からないながらも、何とかそれを実行します。ご飯も食べ、トイレに行き、着替えもして、ちゃんと行くべき場所に向かいます。

えらい! えらすぎる赤ちゃんです! こんな赤ちゃん、見たことない!

そんな風に考えて、ほめることが自信以上の自慈のために何より大切なのです。

今回のまとめ

さいごに

先ほどの心理学者、クリスティン・ネフは、こうも述べています。

一生にわたって、あなた自身に24時間よりそって、何があっても受け入れてくれる人は、たった一人しかいない。それは、あなた自身だけだ。

あなたのことを受け入れてくれる誰かがいれば、もちろんそれは素晴らしいことです。しかしそんな人がいなくても、気にしなくていいんです。あなたを受け入れるのはあなた自身だけ。今日も頑張ったことを、ほめてあげてくださいね。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 大和まや・ゆうきゆう 【発行周期】 週に1度、宝石が届きます。

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