日本企業という枠を超え、今や世界企業にまで成長したファーストリテイリングの展開する服飾ブランドとしての「ユニクロ」。ファストファッションというイメージに止まらず、むしろ高級ブランドが積極的にユニクロとのコラボを熱望するまでになりました。なぜ世界中の有名ブランドは日本のユニクロとコラボレーションしたがるのでしょうか? メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』の著者で元アマゾンジャパン社員という経歴を持つMBAホルダーの理央さんが、そのブランディング戦略と「三方よし」の構図について分かりやすく解説しています。
なぜ有名ブランドはユニクロと協業したいのか?
ここのところ、ユニクロと協業をする企業が話題になっています。
4月15日の日本経済新聞の記事で、「ユニクロと協業好循環」というテーマがありました。以下、記事から一部抜粋してみます。
ユニクロは世界の有名ブランドや、デザイナーとのコラボ商品を相次ぎ打ち出している。
ユニクロは課題のラグジュアリー感を打ち出すため、外部の力を借りる一方、デザイナーにとっても世界で知名度を高めたユニクロと組むことは大きい。
フィンランドの人気ブランド、マリメッコとのコラボ品は、発売前から話題を呼んでいたが、実際の利益も順調。消費者が殺到したとのこと。「日常生活をより豊かにする体を含め、同じ価値観を共有できる長年ユニクロのファンだった」(マリメッコのティーナ アルフフタ カスコ 最高経営責任者)
他ブランドやデザイナーとのコラボは、スエーデンのヘネス&マウリッツ(H&M)が先行していた。マドンナ、ビヨンセ、デビットベッカムと協力した商品を打ち出していた。
かつてはブランド知名度と高級感で劣ったユニクロは、有名ブランドに協業を持ちかけても、門前払いされることが多かった。
アジアでは日本のおしゃれブランドとの評価も広がる。
Facebookのいいねの数は、18年1月時点で、韓国やマレーシアでH&MやZARAを上回った。
富裕層向けの手がける有名デザイナーにとっても、世界の店舗で商品を展開する悪の販売力とブランドは魅力。
さらに、今月に発表されたニュースによると、ファーストリテイリングとして資生堂とタッグを組み、働く女性を応援する共同キャンペーンを行う、ということです。
具体的には、ユニクロのエアリズム購入者に、資生堂のマキアージュのサンプル品を提供。マキアージュ購入者には、エアリズムの交換券を提供する、とのこと。
ユニクロの一連の戦略は?
まず、日経新聞の記事の内容をまとめてみると、ユニクロは以前より機能性追求しかし値段はリーズナブル、というブランドイメージに高級路線を付加したかった。
しかし、当時はユニクロも今ほどの知名度もなく、なかなか有名ブランドはウンと言わなかったが、自社の認知度、イメージ、販売力が強大になるにつれ、ユニクロとのコラボが有名ブランドにとっても魅力的になってきた。特にアジア地域において顕著だということです。
ユニクロの経営戦略は「コストリーダーシップ」戦略。
規模の経済で大量に生産・販売することで、顧客が魅力を感じることができるほど、同品質の他社商品よりも価格を下げる(ちなみに、このコストという意味は、製造原価という意味ではなく、顧客が支払う対価、という顧客視点のコスト)。
私の友人のアパレル関係者は常々「ユニクロの品質であの値段は絶対にできない」と言っているくらい、徹底した高品質低コストを実現させているのです。
一方で、デザインはというと、大量に販売するということは幅広いターゲット層にアピールするということになるので、どうしてもエッヂの効いたデザイン性が高いものを製造・販売することはしてこなかったように見受けられます。
そのぶん、使い回しのきくオーソドックスな商品ライン・アップだったり、機能性重視のデザインだったりということになります。
一方で、ZARAをはじめとするファストファッション系の欧米のブランドは、デザイン中心の差別化戦略です。
ZARAは若年層を中心に幅広い世代で人気のブランドです。私も買ってみましたが、確かに他にはない、なかなか面白いデザインですが、ボタンが外れてしまったりユニクロほどの品質とは言えなさそうです。が、世界的な売上は大きく、今も伸び続けています。
ユニクロは、このZARAの快進撃を見て、ファッション性の高いファストファッションのセグメントはまだ伸びるし、世界の潮流から見てもデザイン性の高い高付加価値、高単価の商品ラインアップを開発する戦略を立てていたのでしょう。
ユニクロの戦略から何を学ぶか?
この一連のユニクロの戦略のポイントは、自社のポジショニングを明確にしていることが挙げられます。
ファストファッションのブランド群の中でも、品質が高い上にコストも下げられるブランドはユニクロだけです。ここに、販売力がついてくると、ブランドのイメージだけではなく、品質という側面の見た目の価値が上がり、独自の立ち位置を確保することに成功し続けています。
そして、強みをさらに強化しつつ、次の戦略の準備も万端でした。確固たる地位を築けた品質という点に、ファッション性を付け加えたい。自社の中で独自開発するよりも、アライアンスを組んで自社の強みに追加する、という戦略をとったわけです。
トヨタが高級路線を目指した時に、レクサスを新しく立ち上げたのとは違う戦略と言えます。
さらに、自社はもちろん買うお客様、そしてデザインを提供する企業にも利益をもたらすという、三方よしのモデルになっている点が特筆すべき点です。
私たちが、このユニクロの事例から学べることは、企業としての戦略を明確にすること。飲食店経営であれば、徹底した品質にこだわるのか、居心地の良い場所を提供するのか、安価に提供できるようにするのか、名物料理を開発するのか、といった具合です。
次は常にブランドを刷新する戦略を用意すること。名物料理が浸透してきたら、その周辺にも需要があるはず。ハンバーグに和風のだしなどを付け加えて高齢者層にもアピールするなど、持続的な努力が必要ですよね。
私も大好きなユニクロ。これからも目が離せません。
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