大問題と言われながらも、一向に改善する余地のない日本の学歴偏重主義。なぜ何年経ってもこの古い体質が続いているのでしょうか? 米国で起業した世界的エンジニアの中島聡さんは自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』にて、読者からの質問に答える形で、日本がいつまでも学歴を重視しすぎる深刻な原因と、そこに起因する「国際競争力不足」を解消する方法を提案しています。
※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年5月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
学歴偏重社会ニッポンは、これから変わっていくべきか? 変わることはできるのか?
読者からの質問です。
日本の社会では、大学入試を中心に動いている部分が大きいと感じてます。就職・転職などでは専門性や能力より大学名が重視され、教育システムも大学入試に受かることだけを目標にしていると感じます。
ソフトウェア業界の専門性の低さ、雇用の流動性の低さから来るゼネコン体質などにも影響を与えていると感じます。
この辺りについて、海外と日本との違い、なぜ違うか、日本でも変えていくことが可能か、についてのお考えを伺えればと思います。
今の日本の問題は、戦後の高度成長期から80年代のバブルに向けて作られた様々なシステムが、時代遅れなのにも関わらず、根強く残っていることにあると思います。
私は日本が80年代のバブルの時期に大学・大学院を卒業しましたが、その頃はまだ終身雇用・年功序列が前提で、大学は入学時に優秀な学生を選り分けるためのフィルターでしかなく、企業は一流大学の学生であれば、大学での成績など全く関係なく採用し、必要な職業訓練は就職してからしてもらえる、そんな時代でした。
しかし、その後、コンピュータ、インターネット、モバイルデバイスなどによって、世界は大きく変わりました。シリコンバレーを中心に、あらゆる産業をソフトウェアが飲み込むという大変革が起こり、数多くのベンチャー企業が生まれ、その中で、Microsoft、Apple、Amazon、Google、Facebookなどの企業が、旧来型の企業を追い抜いて成長して来ました。
日本は、この大きな変化に全くついて行くことが出来ていません。未だに高度成長期を支えてきた大企業が社会全体に大きな影響力を持っているし、就職先としての人気です。政府も、その手の大企業を護送船団方式で守るという、時代遅れの政策しか取れません。ベンチャー企業は、以前よりは立ち上げやすくなったとは言え、資金面でも人材面でも、米国と比べると格段に難しいのが現状です。
この「なぜ日本が変化に対応できないのか」という疑問は長年私の中にありますが、その大きな原因になっているのが、日本の官僚システムだと私は見ています。
米国では、政治家が法案を作るし、政権が変わるたびに官僚のトップクラスがすべて入れ替わるし、政治家が思い切った政策の変更をすることが可能です。
それに対して、日本では、法案を作るのは政治家ではなく官僚だし、政権が変わっても官僚は入れ替わらないため、政策の継続性がとても高いのです。さらに悪いのは、官僚組織をピラミット型に保つためには天下り先が不可欠で、その天下り先が変化への抵抗勢力となってしまう点です。
私が以前から指摘している「ゼネコンスタイルのソフトウェア作り」がいつまでたってもなくならない一番の理由は、日本のIT産業がIBMと戦っていた頃の「公共投資を使ったIT産業の育成」という時代遅れの政策が未だに続いており、そこで甘い汁を吸い続けているゼネコン企業にまっとうな進化圧がかからない点にあると私は思います。
つまり、ますますソフトウェアが重要になっていくこの世の中で、日本企業の国際競争力を上げるには、霞ヶ関とITゼネコンの癒着・依存体制を破壊し、正しい形の進化圧をソフトウェア産業にかけて企業の新陳代謝を高めるしかないと私は考えています。
もちろん、霞ヶ関の官僚自身は決してそんな政策は提言して来ないので、政治家がリーダーシップを持って痛みを伴う改革をしなければならないので、そこが一番難しいかも知れません。
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【中島聡氏イベント情報】
5月13日(日)13:00~
青山学院大学 青山キャンパス「シンギュラリティ研究所講演会」に中島聡さんが登壇します。詳しくはこちら
講演タイトル『シンギュラリティと自動運転社会』講師:中島聡氏
受講料:7,000円 受講料+懇親会:10,000円
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2018年4月分
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