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韓国でアサヒ「スーパードライ」が爆売れ、純利益が前年の5.3倍に

2018年1~3月期の連結決算で、純利益が前年同期比の5.3倍となったアサヒグループHD。国内のビール出荷量が減少する中、なぜ同社は業績を伸ばすことができたのでしょうか。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、アサヒグループHD好調の理由を分析しています。

アサヒグループHD、純利益が5.3倍に。買収で国際事業が躍進

アサヒグループホールディングスの業績が好調です。5月8日に発表した2018年1~3月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高が前年同期比16.6%増の4,420億円、純利益が5.3倍の147億円でした。

ビール類の販売数量が減少したことなどにより酒類の売上高が4.3%減の1,803億円となるなど国内市場で苦戦しているものの、海外市場を担う国際事業の売上高が82.2%増の1,590億円となり、また、同事業の本業の儲けを示す事業利益が5.5倍になるなど大幅な増収増益だったことが寄与し、全体の収益を押し上げました。

国際事業に関しては、ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)から東欧5カ国のビール事業を買収し、昨年4月から連結対象に加わったことが増収増益の要因となりました。

アサヒは17年度の連結決算において売上高でキリンホールディングスを抜き去りました。キリン(国際会計基準)の売上高は前年比0.5%増の1兆8,637億円と微増だった一方、アサヒは22.1%増の2兆848億円と大幅な増収となり、アサヒがキリンを2,200億円上回っています。アサヒは先述した東欧5カ国のビール事業の買収効果が大きく寄与しました。

アサヒは近年、海外での販売が好調です。たとえば、韓国では傘下のアサヒビールの主力製品「スーパードライ」が人気となっており、順調にシェアを拡大しています。11年に韓国の輸入ビール市場で販売量がシェア28.3%となり、年間で初めて首位に立ちました。それ以降、16年まで6年連続でトップシェアを獲得しているといいます。

韓国市場では、04年に韓国ロッテグループと輸入酒類販売会社のロッテアサヒ酒類を設立し、同社を通じて市場開拓を進めてきました。15年に同社に対する出資比率を引き上げ、連結子会社化し、販売を強化しています。

アサヒは韓国に工場を持たず、韓国向けのスーパードライのほとんどは日本の博多工場福岡市博多区で製造しています。同工場の無料の見学会には多くの韓国人が参加するといい、それほど韓国ではスーパードライが人気となっているのです。

韓国で人気があるアサヒビール。ただ、韓国のビール市場は決して大きくありません。とはいえ、世界的な飲料・酒類メーカーと競争していくためには、主戦場の中国や北米、欧州で本格的に戦う前に日本の周辺国で国際競争力を高めておく必要があるため、そういう意味において韓国はアサヒビールにとって重要な市場といえるでしょう。

韓国では順調ですが、一方、中国では苦戦を強いられています

中国は世界最大のビール市場です。ホップのサプライヤー、BARTH-HAAS GROUPが毎年発行するレポート「BARTH REPORT」によると、中国では16年に4,600万キロリットルのビールが生産されており、その規模は2位アメリカ(2,214キロリットル)の倍以上、7位日本(552キロリットル)の8倍以上にもなります。巨大な需要を取り込むため、中国では世界各国のビールメーカーがしのぎを削っている状況です。

アサヒは1994年に中国のビール会社3社へ資本参加し、各社と技術供与、ライセンス契約を締結し、中国への本格進出を開始しました。97年から、中国で古くからある大手ビールメーカーの青島ビールとの提携を本格化し、中国に合弁会社を設立、同年にビール工場の建設に着手しました。以降、スーパードライと青島ビールの主力ビール「青島ビール」の製造を行なっていきます。

アサヒは他の企業同様、中国市場で様々な施策を講じてシェア拡大を進めています。ただ、同社の中国事業は順調とはいえません。17年度の売上高はわずか173億円で国際事業に占める割合は3%にも満たない状況です。

中国のビール業界はかつて数百社が乱立する状態でしたが、M&A(合併・買収)により華潤創業といった上位企業が大きなシェアを握る寡占市場になっており、シェア下位のアサヒは存在感を発揮できずにいます。

3月には、思うような提携効果が得られなかったことから、約2割を出資していた青島ビールの株式をすべて売却したと発表しています。経営権を握っていなかったため、戦略的な販売ができず、結果として主力製品のスーパードライが販売不振に陥ってしまいました。中国では様々なアルコール飲料が普及し、競争が激化していったことも販売不振に拍車をかけています。

中国のビール業界では寡占化進む一方、需要の減退から同国でのビール生産量が減少していることもアサヒには逆風となっています。前出の「BARTH REPORT」よると、高度成長とともに増加していた中国でのビール生産量は、景気低迷や政府の倹約令などの影響で13年をピークに縮小しています。アサヒにとって中国はより難しい市場になっているといえるでしょう。

最大市場の中国では苦戦する一方、欧州では足場固めに成功しています。先述した東欧5カ国のビール事業の買収のほか、16年にアンハイザー・ブッシュ・インベブに買収された英SABミラー傘下のイタリアの「ペローニ」やオランダの「グロールシュ」、英クラフトビール「ミーンタイム」など西欧ビール4社を買収しました。

一連のM&Aにより、17年度の欧州事業の売上高は3,736億円となっています。16年度の264億円からは一気に増加しました。オセアニア事業(1,732億円)や東南アジア事業(554億円)を抜き去り、国際事業に占める割合が6割にも上る要の事業となっています。

アサヒは競合のキリンやサントリーと比べ海外市場では出遅れていましたが、今後は巻き返しを図りたい考えです。これからもM&Aがカギとなりそうです。

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佐藤昌司のブログ「商売ショーバイ」

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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