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安倍政権が行った、中国よりも日本が優位に立つための「裏工作」

日中関係にようやく改善の兆しが見えてきたようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが日中関係の歴史を遡り、これまでに起きた出来事と変化をまとめつつ、友好関係を築くための「絶対公式」を紹介しています。

日中友好の【絶対公式】

日中関係が、改善されてきました。

李首相「中日関係、晴天が現れ始めた」 安倍首相と会談

朝日新聞DIGITL 5/9(水)19:24配信

 

安倍晋三首相と中国の李克強(リーコーチアン)首相は9日午後、東京・元赤坂の迎賓館で会談した。李首相は会談の冒頭で、尖閣諸島をめぐる対立などを念頭に「中日関係がここ数年、波風を経験し、悪い道を歩んできた」と指摘。続けて「今まさに波風が過ぎ去って晴天が現れ始めた」と述べた。

 

李首相は、今年が日中平和友好条約締結40周年にあたることに触れ、「両国関係を正常な軌道に戻すことは、両国の利益になるだけでなく、国際社会からの期待にも応えるものだ」として、関係改善の加速に意欲を示した。

「波風が過ぎ去って晴天が現れ始めた」

「両国関係を正常な軌道に戻すことは、両国の利益になるだけでなく、国際社会からの期待にも応えるものだ」

これ、『中国に勝つ日本に大戦略』の著者(私)的には、どうなのでしょうか? 私は、「まことに喜ばしい」と思います。

結局、日中問題の本質は、「尖閣問題」「沖縄問題」(後述)です。日中関係が良好なら、中国が尖閣に侵攻する可能性は減るでしょう。

しかし、中国は、「戦争は詭道なり」(孫子)の国。この国は、戦争中にウソをつくこと奨励している。しかも、「戦争は、血を流す政治である」「政治は、血を流さない戦争である」ですから、実をいうと「いつも戦争中」という意識なわけです。で、戦争中は、「ウソをつくことが奨励される」。「いつも戦争中」なので「いつもウソをつくことが奨励される」。

これ、「いくら何でもいいすぎでは?」と思いますか? そんな人は、米国防総省顧問、米諜報員ピルズベリーさんが書いた『China2049』をご一読ください。

というわけで、中国に関しては、ナイーブに信頼してはいけないのです中国との関係に関する「絶対公式」は、【中国に、「対等な関係」という概念は存在しない】です。このことを、死ぬまで忘れないようにしなければならない。

日中関係の変転

日中関係の変化を少し復習しておきましょう。

08年、リーマンショックが起こり、アメリカが沈みました。一方、中国は、その後も9~10%の成長を維持し、「一人勝ち」状態になった。

09年、日本では、「反米親中」の鳩山政権が誕生しました。政権最大の実力者小沢さんは、大訪中団を引き連れて北京を訪問。「私は、人民解放軍の野戦軍司令官である!!!!!!!」と宣言し、全日本国民を卒倒させました。しかし、幸い小鳩政権は長つづきしなかった。そして、必然的に日中関係は悪化していきます。

2010年、尖閣中国漁船衝突事件。中国が絶対的に悪いにも関わらず「レアアース禁輸」など厳しい制裁を科してきた。いや~、驚きました。2012年、野田政権、尖閣を国有化。これで、日中関係は、「戦後最悪」になりました。事実として、民主党政権は、日米、日中関係をボロボロにした。そして、日ロ関係、日韓関係も最悪だったのです。

2012年11月、中国は、ロシアと韓国に、【反日統一共同戦線戦略】を提案しました。その骨子は、

ここまで、「北野は陰謀論者」と思われた方。いますぐ、こちらの絶対証拠をご一読ください。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

そして、2013年12月~14年1、2月にかけて、安倍政権最大の危機が訪れます。そう、安倍総理が靖国参拝したことで、「世界的バッシング」が起こった。私は、誰でも靖国参拝するのは、良いことだと思います。しかし、事実を書きます。

靖国参拝を非難したのは、中国、韓国だけではありません。アメリカ、イギリス、ドイツ、EU、ロシア、オーストラリア、シンガポール、台湾などなど。それこそ、「世界中がといっても過言ではないほど、ひどいバッシングだったのです。なぜ? わかりますね。「反日統一共同戦線戦略」の結果です。安倍総理は世界的に孤立しました。

しかし、14年3月、ロシアの「クリミア併合」で救われます。オバマさんは、安倍総理を嫌っていましたが、「対ロシア制裁網」をつくる必要がでてきた。それで、彼は総理と和解することにしたのです。

2015年3月、今度はAIIB事件が起こります。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国などなど親米国家群が、アメリカの制止を無視し、中国のAIIBに参加することを決めた。これは、中国の影響力の強さと、アメリカの没落を象徴する大事件。しかし、日本はAIIBに参加しなかった

同年4月、安倍総理は、アメリカで「希望の同盟演説」をします。そして、「アメリカは、世界の希望です!」と宣言した。これで、日米関係は大いに改善された。以後、日本とアメリカの関係は、非常に良好なのです。「アメリカを反日統一共同戦線に引き入れる」という中国の戦略は挫折しました。

2015年12月、いわゆる「日韓慰安婦合意」。これで、日韓関係は、まあまあ良好になりました。文さんは、「見直し」を要求していますが、それでも朴さんの「告げ口外交時代」と比べればマシです。

2016年12月、プーチン訪日。これで、日ロ関係は、劇的に改善された。重要なのは、欧米とロシアの関係が最悪であるにも関わらず、日ロ関係は良い。これは、安倍総理が、「自立外交」をしている証拠です。

日米、日ロ、日韓関係が良好。これで、「中国、ロシア、韓国プラスアメリカで、反日統一共同戦線をつくる!」という中国の戦略は、いったん挫折したのです。

小鳩日中友好、安倍日中友好の違い

ここで「絶対公式」を思いだしてください。

【 中国に、「対等な関係」という概念は存在しない 】

ここ10年で、日中関係がよかった時期が二回あります。1回目は、小鳩政権時代。(09年9月~10年6月)2回目は、現在です。

1回目。この時、鳩山さんは、「トラストミーで日米関係を最悪にした。日米関係を破壊し、そして、中国に擦り寄った。既述のように小沢さんは、「私は人民解放軍の野戦軍司令官だ!!!!!!!」と全世界に宣言。これは、「日本は中国の属国になりますよ!」という宣言に聞こえました。

この時、明らかに日中関係は、

です。ところが、2010年小鳩政権が崩壊。次の菅さんは、「TPPで第3の開国をする決意をした!」などといい、アメリカに擦り寄りはじめた。それで、中国は、「属国が生意気に!」と激怒し、尖閣中国漁船衝突事件の異常な対応になった。

何がいいたいかというと、「中国を喜ばせるために、日米関係を破壊しよう」というのは、とても愚かなのです。属国になる超特急切符です。

09年の日本と同じ過ちをしている国があります。ドゥテルテさんのフィリピンです。彼は、アメリカとの関係を破壊し、中国との関係を改善させようとした。そしたら、属国になってしまいました。今、ドゥテルテさんは、「フィリピンを中国の省にしてもいい」などと、自虐ジョークをいうほど、悲惨な状態にあります」。

「フィリピンを中国の省の一つに」、ドゥテルテ比大統領がジョーク―米華字メディア

では、安倍総理の場合はどうでしょうか? 安倍総理は、まず日米関係を改善させた。次に日韓関係をマシにした。その次に日ロ関係を良くした

今中国から日本を見ると、そのバックにアメリカが見える。尖閣有事の際には、「きっとアメリカが出てくる」と思える。尖閣有事の際、ロシアが中国に味方してくれるか、確信がもてない。韓国は、フラフラしていて、まったくアテにならない。それで中国も、「日本と仲よくしよう」となった。

安倍総理は、小沢さんみたく「私は、人民解放軍の野戦軍司令官です!」などと、いらんお世辞をいう必要がない。もちろん、尖閣問題で譲歩する必要などまったくない。日本は、優位にたっているので何も譲歩せずに中国と友好関係を築ける。このことを、私たちは、決して忘れてはなりません。

日中友好の公式

まとめます。

中国は、「日本には尖閣だけでなく沖縄の領有権もない!」と宣言している。しかも、米ロ韓を巻き込んで「反日統一共同戦線」をつくろうとしている。だから日本は、日米関係日ロ関係日韓関係を良好に保つことで、「反日統一共同戦線無力化】させなければならない。

日中の友好は、良好な、日米関係、日ロ関係、日韓関係の【土台の上に】築かれる。これを小鳩政権やフィリピンのように、「日米関係を壊して、中国と仲良くしよう」と考えれば、即座に中国の属国に転落する。そう、反日統一共同戦線の観点からいえば、日本の優先順位は、常に

であるべきなのです。将来まで見据えた「大戦略レベル」の話をすれば、優先順位は、

であるべきです。この優先順位を決して忘れるべきではありません。日本は、お人好しなので、油断するとすぐ属国的立場に転落します。

それと、森林や水資源のある場所を中国に売ったり、中国人3K労働者を洪水のように入れるのはやめてください。ロシア極東は、中国の人海戦術で、中国に「実効支配」されそうな勢いです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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