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なぜ、あなたのマンションにも知らない外国人がやってくるのか?

6月15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)。民泊禁止のマンションではこれまで様々な対策を行なってきましたが、「ヤミ民泊との本当の戦いはこれから」とするのは、マンション管理士の廣田信子さん。廣田さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の中で、ヤミ民泊取締りのために住民サイドがすべきことについて記しています。

本気のヤミ民泊取締りのために私たちがやるべきこと

こんにちは! 廣田信子です。

昨日は、「民泊の現状と今後の展開」がテーマのマンションコミュニティ研究会の勉強会でした。6月15日の民泊解禁に向け、民泊禁止の規約改正、総会・理事会決議を…というかつてない大号令で、マンションでの民泊対策も一段落した感がありますが、実は、これからが本番です。民泊ウォッチャー飯田勝啓氏の2時間近いお話は聞きごたえがありました。その中で、管理組合にぜひお伝えしたいことを書いておきたいと思います。

規約で禁止しただけではヤミ民泊を防げません。ヤミ民泊対策は、日常管理が重要です。まず、不審者情報を広く住民・管理員・清掃員等から吸い上げることです。「不審者」といっても、挙動不審だったり、迷惑行為をしているというだけではなく、堂々していても、大きなスーツケースを持った旅行者らしき家族が複数人でエレベーターに乗り込むメーターボックスを開けて何かしている手に紙やスマホを持ってその内容を確認しながら部屋を探している、そういうことも大事なのです。

エレベーターで会って、ひょっとしたら民泊では…と思ったら、何号室に入っていくかを確認できれば、たいへん貴重な情報ですよね。1人暮らしのはずの住戸で、毎晩のように複数の人の声が響いているようだったらそれも重要な証拠です。人がたくさんいることは明らかなのに、インターホンを押しても反応がないというのも怪しいですよね。ヤミ民泊の住戸では、絶対にインターホンに出ないように表示され、電源を切られていることもありますから。

こういった寄せてほしい情報について具体的に住民や管理会社に伝え、情報が管理組合に集まりやすいしくみをつくっておくことが重要だと思いました。情報の集積は立派な証拠になります。法律が整備されていたかったこれまでは、証拠は、民事裁判で立証するための確かなものが必要で管理組合の負担が大きかったのですが、6月15日以降は、ヤミ民泊には、旅館業法違反として、保健所に立入検査・質問の権限等が付与されましたのでのらりくらり、「ともだち」「しんせき」といって言い逃れができにくくなります。

保健所の指導に従わないようなら、警察に旅館業法違反として告発され、警察の調査が及ぶことになります。

5月21日の都道府県等への国の通知では、6月15日以降、無許可営業者に対する報告徴収立入検査緊急命令の権限が付与されるので、本権限を十分に活用し、無許可営業者への取り締まりを進めること、それに向けて、今から準備をすること。悪質無許可営業者の情報を積極的に警察に提供し警察による取り締まりを求めること、が明記されています。

国のヤミ民泊取締りはここにきて本気だと思います。思えば、そうでなければ国家とは言えません。法律を作るまでは、民泊推進圧力等があって調整するのがたいへんだったと思いますが、国会で法律が成立し、施行された以上、それを守らせられなかったら、国の威信にも関わります。

ヤミ民泊を一掃しない限り、負担が大きく儲けにくい住宅宿泊事業法による正規民泊が健全に成長することも考えられません。ヤミ民泊は脱税の温床でもあります。受付を開始した3月15日以降の事業届出件数のあまりの少なさで、たいへんな危機感を持っているはずです。

そして、あまり大きくニュースにはなっていませんが、民泊という監視体制が弱い密室で、殺人覚醒剤製造覚醒剤受け渡し空き巣の拠点暴行盗撮等様々な事件が起こっています。ヤミ民泊を放置して、さらに大きな事件が起きたら…もしテロリストのアジトになったら…東京オリンピックを前に、危機感を持っているのは当たり前だと思います。

行政機関が本気で取り締まることをまずは信じて、私たちは私たちができることをやっていくことだと思います。そのへんは飯田さんの思いと私の思いは同じです。

一番重要なのは情報です。前述のような目撃情報、ちょっとしたトラブル情報を日時を明確にして集約することです。防犯カメラの映像ももちろん証拠です。たとえ住戸の出入りまで写っていなくても、同じ階に、毎日のようにスーツケースを持った外国人入っていくようなら、立派な状況証拠です。

ただし、防犯カメラの映像は、プライバシーの保護のため、その確認、利用を「防犯カメラ運用細則」でかなり厳しく制限していることが多いと思います。その場合は、映像を確認、利用できる範囲に、

管理規約等に違反し、共同の利益に反する場合、又はその疑いがある場合

を追加しておいた方がいいとのことです。

そして、もう一つ重要な情報提供があります。保健所は登記簿から区分所有者は調べますが、賃借人や外部区分所有者に管理を委託されている管理会社は調べられません。特に所有者が外国人の場合、この情報は絶対に必要です。管理組合がこれらの情報を提供できることは大きいのです。そして、これも「名簿の取扱い細則」等で、外部に情報を提供できる場合を制限していると思いますから、保健所や警察に情報提供できる規定にしておくことが必要になります。

ヤミ民をやめさせるには、段階を踏んだ手続きに一定の時間は必要ですが、措置を行うのに十分な情報がそろっていれば、迅速に対応してもらえることにつながります。ぜひ、この辺も管理組合で検討してください。

今、インターネット上の民泊サイトの物件のほとんどはヤミ民泊です。6月15日にいっせいにこれらの物件がサイトから消えるか…なかなかそうは思えません。すでに、明らかにヤミ民泊の物件の予約カレンダーには、来年までの予約がぎっしり入っているものも少なくないのです。

もしオーナー都合で宿泊をキャンセルすれば、重いペナルティが課せられます。ヤミ民泊事業者の多くは、行政の取り締まりの本気度と、大手民泊サイトの出方を見ながら、ばれないようにゲストと口裏を合わせて違法民泊を続け、いよいよこれ以上は危ない、刑罰を受けると言うタイミングで撤退しようと様子を見ているのかもしれません。すでに、ネット上には、世逃げのように民泊撤退を請け負う会社ができています。明日、立入調査となったら、一夜で民泊の痕跡を消すというのでしょう。

ヤミ民泊オーナーは、今、心穏やかではないはずです。でも…こんな嘘で固めた違法行為で儲けたいと思う企業やオーナーが存在し、せっかくの旅行を、こんな犯罪に加担するような口裏合わせで、安く済ませようという旅行者が後を絶たない…という現実に、なんとも言えない危うさを感じてしまいました。

飯田さんも最後に言っていましたが、空いている家、部屋を旅行者に安く提供し、旅行を楽しんでもらおう…そういった本来の趣旨の民泊は悪いものではないのです。人の迷惑を考えず、違法行為を嘘で乗り切り、とにかく儲けた者が勝ち…という、風潮が悪いのです。

こういう人たちを、次世代のリーダーのように扱うのは、絶対にやめたいと思います。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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