先日掲載の「「ビットコイン暴落」から逃げ遅れた人々が認めない不都合な真実」で、元国税調査官の視点でビットコインをはじめとする仮想通貨の不都合な真実について暴露した、経営コンサルタントでフリーライターの大村大次郎さん。今回も自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、ビットコインや仮想通貨の「本当のリスク」について明かしています。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2018年6月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
仮想通貨ビットコインの本当のリスク
今回もまた仮想通貨のお話です。
これまで3回にわたって、仮想通貨のリスクのお話をしてきましたが、これで一応、最後にしたいと思います。仮想通貨については、いろいろ思うところがあり、4回も書いてしまいました。
仮想通貨については、世間の人は「今一つ、どういうものかわからない」と思っておられるのではないでしょうか? にもかかわらず、価値が上がっていて儲けられるという話なので、飛びついてしまったという方も多いと思われます。
だから、仮想通貨の本質について、もっと情報がさらされるべきだと筆者は思っております。だから、これほど何回も仮想通貨について書かせていただいたわけです。
“仮想通貨”の“仮想”に潜む大きな落とし穴
それで、そもそも仮想通貨は、なぜ“仮想”の通貨なのでしょうか?
「仮想通貨は、ネット上の取引だけに使われる“現物がない通貨”だから、仮想通貨だよ! このボケ!」と、仮想通貨の取引をされている人からのツッコミが聞こえてきそうですね。
でも、なぜ仮想でなければならないのか、みなさんは考えたことはありますか?
ネット上だけで使われる通貨であっても、現物があっても悪くはないはずです。
紙幣のようなものを発行すれば、これが「ビットコインですよ」という感じで、実感できます。
それに、現物の紙幣があれば、ネットでの仮想通貨の取引状況を整えていない業者でも、取引できるわけです。つまり、現物の通貨があったほうが、取引の幅は非常に広がるはずです。
なのに、なぜ仮想通貨は、仮想にこだわり、現物の通貨を発行しないのでしょうか?
実は、この問いの答えに仮想通貨の最大の危険性が潜んでいるのです。
仮想通貨というのは、実は自らが“仮想”にこだわっているのではなく、“仮想”にこだわらざるを得ないのです。
というのも、「現物の通貨」というのは、世界中の国々で、発行について厳密な法律が存在します。というより普通の場合、民間の人が通貨を発行することはできません。
なぜそうなっているか、というと、誰もが勝手に通貨を発行すれば、その国の貨幣形態が混乱し、社会経済が安定しないからです。
実際、現在の通貨制度ができるまでは、いろんな私的機関や民間人が通貨を発行し、その国の経済社会が混乱したケースは多々あるのです。
つまり、その国の経済社会安定のために、「私的な通貨発行」は、原則としてどこの国でも禁止されているのです。
仮想通貨は法律の抜け穴をついたもの
このように、本来は公的機関ではない私的な機関が通貨を発行することは禁じられているのですが、なぜ仮想通貨が発行できているのか?
もうおわかりですね。
世界各国の通貨の法律というのは、“現物の通貨”を発行することを禁じています。しかし、各国の通貨に関する法律は、ネット上の仮想でつくられた通貨までは、想定していないのです。
だから仮想通貨というのは、この通貨に関する法律の抜け穴をついたものだということができるのです。
逆に言えば、仮想通貨は現物の通貨を発行した時点でアウトとなってしまいます。
仮想通貨が現物の通貨を発行できない理由は、それなのです。
しかし、“仮想通貨”だからといって、“私的通貨”の弊害は間違いなく持っているわけです。国がコントロールできない通貨が、大々的に流通することになれば、社会経済は大きく混乱することになります。
となると、各国は、なんらかの形で仮想通貨を規制することになるはずです。禁止に動く国も多々出るはずなのです。
だから仮想通貨というのは、もし発展したとしても、現物の通貨のようには絶対になれない宿命を持っているのです。もし仮想通貨が、現物の通貨のような力を持つようになれば、各国は必ず規制に動き出すからなのです。
つまり、仮想通貨というのは、どう転んでも大きな発展はできないものなのです。
実際に、仮想通貨について、世界各国はあまりいい顔をしていませんよね? すでに規制に乗り出している国は多々あります。
日本が仮想通貨市場をリードしているのは、日本は仮想通貨に対する規制が先進国の中で一番緩かったからなのです。
「崇高な精神」の裏側
ここまで書いても、仮想通貨信奉者の方には、こういうことを言われる方もいると思います。
「仮想通貨は、国家機関がコントロールしない、本当の市民のための通貨なのだ」
「だからこそ価値があるのだ」
と。
仮想通貨信奉者の方が、そういうふうに思われているのは、仮想通貨が「市民のための自由な通貨」という宣伝をしてきたからだと思われます。つまり、仮想通貨の創設者側の宣伝文句を鵜呑みにしているわけです。
「国家機関がコントロールしない、市民のための自由な通貨」
というと、非常に耳障りがいい、なにか世直し革命的な意味に聞こえますよね? でも、冷静に考えてください。
今の仮想通貨が、本当に市民のための自由な通貨かどうか。
実際は、一獲千金を狙った者が群がり乱高下を繰り広げる、通貨とは到底言えないような代物ですよね?
国ではなく、民間人が行えばすべてうまくいくというのは非常に青臭い考えだと筆者は思います。
たとえば、警察や軍隊を、民間の自由に任せたらどういうことになると思いますか?
通貨というのは、警察や軍隊と同じように、国家の信用と強制力があって初めて、正常に作動するものなのです。民間人の自由裁量に任せていれば混乱を招くということは、歴史が何度も何度も証明しているのです。
「国家機関がコントロールしない、市民のための自由な通貨」
などというのは「国を批判すれば偉い」というような青臭い価値観を持っている人の琴線に触れるフレーズだったわけです。そのフレーズにまんまと引っかかった人が、仮想通貨に手を出してしまったわけです。
実際、仮想通貨に手を出している人は「国家機関がコントロールしない、市民のための自由な通貨を発展させよう」という崇高な精神を持っていたわけではなく「これで一儲けしよう」というのが本音でしょう?
儲けようと思う事が悪いとは言いませんが、儲けるためには、それなりに勉強をしなければならないし、うまい話をそのまま鵜呑みにしていては痛い目に合うということなのです。
image by: shutterstock.com
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