お硬い政治ネタを噛み砕く、麻生副総理という政治家の存在意義

 

明治中期には黒岩涙香が健筆をふるう「万朝報(よろずちょうほう)」を中心に、イエロージャーナリズムというセンセーショナリズムとスキャンダリズムを全面に押し出した報道が世間を席捲し、政治家のスキャンダルも取り上げたことから、当時の伊藤博文首相が「朝に万朝報を開けるのが怖かった」との逸話も残されている。

政治家や有名人の女性スキャンダルを筆鋒鋭く追及するところは、新聞よりも一歩踏み込んで報道する週刊文春や週刊新潮に近い存在であったのだろう。それが大いに受けた

当時の新聞に関する政府の規制は厳しかったから、発行停止処分も今より簡単に執行され、万朝報もしばしば処分を受けたが、庶民はそれもまた万朝報のスタイルとして受け入れ、部数が減ることはなかった。

万朝報に記された「物語」としての事件は挿絵の効果も加わり、それが啓蒙的内容であったかは議論する必要があるが、庶民が世の中のことを考え、そして意見する素地を作ったのは間違いない。

マンガ好きの財務相を揶揄するつもりはないが、そのマンガも新聞がつないできた文化的素地の中に位置づけられ、硬くて食えない政治論議も、時にはマンガがからかいの対象として表現されてきたから、メディアでも硬いもの、軟らかいもの、が混在して絶妙なバランスを取ってメディアの存在も価値あるものとなっているのだ。

このバランスの中で麻生財務相が「硬い領域の中にいる軟らかいパロディ的な存在」でいるのは、それはそれで皮肉っぽくて面白い、とも思う。

image by: 首相官邸

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