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東京ディズニーRに暗雲。上海ディズニーとのシェア争い激化か?

先日発表された東京ディズニーシーの拡張計画。報道によると、2022年度中の開業を目標に約2割拡張するとのことですが、その費用は2500億円とも言われています。そこまでの金額を投資して行うこの計画、いったい東京ディズニーリゾートに「混雑緩和」以外のどんな恩恵をもたらすのでしょうか。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で詳細に分析・考察しています。

東京ディズニーRがパーク拡張。上海ディズニーとの間で中国人の争奪戦激化か

東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドは6月14日、混雑緩和をひとつの目的とした東京ディズニーシー(TDS)の拡張計画を発表しました。東京ディズニーランド(TDL)とTDSに隣接する駐車場を転用し、約10万平方メートルをテーマパークなどの用地に充て、約2割拡張するといいます。

TDRは近年、混雑などが原因で顧客満足度の低下が指摘されています。また、近年は入園者数が年間約3,000万人で頭打ちが続いています。そうしたなか、パークを拡張することで混雑の緩和と入園者数の増加を実現したい考えです。

こうしたことから、近年はTDRに対する評価に頭打ち感が漂っています。ただ、そういった中でも訪日外国人の入園者数は増加が続いており、外国人の評価は年々高まっています。

TDRの訪日外国人入園者数は、17年度は5年前の4倍となる295万人で増加傾向を示しています。全入園者数に占める割合は9.8%にもなります。また、17年度の訪日外国人の総数は2,977万人(日本政府観光局調べ)のため、TDRが取り込んでいる割合は9.9%にも上り、TDRを目的に日本を訪れる外国人が少なくないことがわかります。今回発表されたパークの拡張策は、今後も増加が見込まれる訪日外国人を取り込む狙いもあります。

TDRを構成するTDLとTDSは世界のテーマパークの中でも屈指の集客力を誇ります。テーマエンターテインメント協会(TEA)と市場調査会社のAECOMの調査によると、17年のTDLの入園者数は1,660万人で、世界のテーマパークの入園者数ランキングで1位の「マジック・キングダム」(2,045万人/米国・オーランド)と2位の「ディズニーランド」(1,830万人/米国・アナハイム)に次ぐ3位にランクインし、4位の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(1,493.5万人/大阪)に続いてTDS(1,350万人)が5位にランクインしています。

世界でも有数のテーマパークといえるTDR。とはいえ、今後もその地位が安泰であるとは必ずしも言い切れません。特に上海ディズニーランドが大きな脅威になる可能性があります。

上海ディズニー、その圧倒的な強み

上海ディズニーは中国の上海市に16年6月に開業しました。アジアでは東京、香港に次ぐ3カ所目のディズニーランドとなります。広さは3.9平方キロメートルとTDRの約2倍にもなります。前出の調査によると、17年の入園者数は1,100万人でランキングは8位です。上海ディズニーは好評を博しており、早くも混雑が指摘されていますが、周辺には拡張や第2パークを建設できるだけの土地が豊富にあり混雑を緩和した上で入園者数を伸ばすことが十分可能なため将来性もあります。

上海ディズニーは強みとして、世界一となる13億人超の人口を抱える中国にあるということが挙げられます。当然、商圏の人口が多い方が集客が容易です。中国には05年9月に開業した香港ディズニーランド(17年入園者数620万人)がありますが、広さが1.26平方キロメートルと上海ディズニーの3分の1ほどしかなく集客力が限定的で、また、両パークは地理的に大きく離れており、香港ディズニーが上海ディズニーに与える影響は限定的です。両パークは棲み分けができているといえるでしょう。

また、上海ディズニーはパークがある上海市が2,400万人超の人口を抱えていることも強みとなっています。これはオーストラリアの人口に匹敵し、日本でいえば、都道府県単位の人口で1番多い東京都(1,300万人超)と2番目の神奈川県(900万人超)を合わせた人口よりも多い規模となります。また、上海市に隣接する地域を含め車で数時間内で行ける場所となると、その人口は2億人を超えます

一方で中国人はTDRにとっても重要な顧客となります。TDRを運営するオリエンタルランドは訪日外国人の入園者の国籍情報を開示していませんが、おそらく中国人は訪日外国人の入園者の中では最大顧客であると考えられます。日本政府観光局発表の17年の訪日外国人に占める中国籍(香港含む)の割合は3分の1と最大であり、TDRもそれと同様であると推測できます。そのため、中国人をTDRと上海ディズニーで取り合うケースが今後増える可能性があります。

上海ディズニーを「追い風」にする方法

一方で上海ディズニーはTDRの脅威にはならず、むしろ追い風になると考えることもできます。

観光庁発表の訪日外国人消費動向調査によると、17年の中国人訪日旅行者(香港除く)の平均泊数は10.9と長期にわたっていることから、TDRを訪れる中国人がTDRだけを楽しんで帰国しているとは考えにくく、多くが日本観光の一環としてTDRを訪れるという旅行をしていると考えられます。

そうであれば、多くの中国人はTDRと上海ディズニーを両天秤にかけているとは考えにくく、日本観光を楽しむ層と中国国内のテーマパークを楽しむ層は明確に分かれていると考えることができます。それは、上海ディズニー開業年である16年度のTDRの訪日外国人入園者数が前年度から大きく増え、先述したとおり17年度も16年度から増加していることから、上海ディズニーの開業がTDRに与えた影響は限定的だったと解釈できることからもそのことを推測することができます。

逆に、上海ディズニーの評判が中国人の間で高まることでディズニー自体の認知度と評判が高まり、それによりTDRを訪れたいと思う中国人が増えることが期待されます。TDRは上海ディズニーにはない海をテーマにしたTDSがあるため、それを武器にすることもできるでしょう。

そうなると、上海ディズニーがTDRの脅威になるのか、それとも追い風になるのかは、TDRの魅力次第といえそうです。TDRの魅力が高まれば上海ディズニーは追い風となり、魅力が低下すれば脅威になるといえます。そのため、今回発表されたTDRの拡張策がその試金石のひとつとなりそうです。

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image by: shutterstock

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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