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「定年」のない企業が、経営者と社員にちっとも優しくない理由

終身雇用制度が崩壊し先の見えにくい現代、収入は確保しておきたいですが、企業の雇用の受け皿としての定年制度はきちんと整備されているのでしょうか。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では、定年制度は高齢者の雇用継続確保の義務が先に制定されているためバラエティーに富んだ選択肢を企業側も設定できない状態にあると指摘。さらに「雇用制度をから見直すべき時期に来ている」との見方を示しています。

御社の就業規則には、定年の定めがありますか?

定年制とは、一定の年齢に達した後に労働契約を終了する制度です。就業規則に定年制の定めがなければ、会社から労働契約を終了させる方法が「解雇しかないことになります。「解雇」は、従業員との間でトラブルに発展しやすいので、できれば避けたいものですね。

もし今、就業規則がない、あるいは就業規則に定年の定めがない場合には、就業規則に定年の定めをしておいたが良いと思います。

今は、70歳、80歳になっても元気な方がたくさんいます。定年制のない会社からのご相談の中には、「ご高齢になった従業員に辞めてもらいたいのだがどうしたらいいか?」というようなものもあります。

本人は働き続けることを希望しているのだが、実際には、仕事の効率が下がりミスも多い。パソコン等も使いこなせず、任せられる仕事が限られている。実際には会社のお荷物になっているのだが、今までの貢献を考えるとなかなか解雇などはできない

このような事態を避けるためにも、たとえ小さな会社であっても、定年を定め、定年後は有期労働契約での雇用にした方が良いのではないでしょうか?

ただ、60歳未満の定年制は禁止されています。もし、60歳未満の定年の定めをした場合、60歳定年を定めたものとみなされます。また、高年齢者雇用安定法によって、定年後も65歳までの継続雇用が義務付けられています。

ここでいう定年」とは、期間の定めのない労働契約(無期雇用労働者に対して適用されるものです。有期雇用労働者については、「定年」ではなく、年齢を上限とした雇止めということになります。

定年制とは別に、定年前に地位を変動させる制度もあります。この方法によって、賃金の支払い額を低く抑えたり、新陳代謝による社内の活性化が期待できます。

いくつか紹介していきます。

● 役職定年制

管理職(役職)に就いている人に対して、ある年齢でその役職を辞めてもらう制度です。これは、役職から外れることで、地位や賃金の低下を行う制度です。

● 役職任期制

役職定年制と似た制度ですが、はじめから役職自体に任期を設け、任期終了後に再任させるか否か、あらためて判断する制度です。

● 出向

ある程度の高年齢労働者に対して、グループ企業への出向や取引先への転籍を行う制度です。この場合、「出向」については、「高度の必要性」はいりません。ただし、就業規則への出向の定め」があることが必要です。

また、「転籍」については、就業規則への記載だけでなく、本人の「同意」も必要です。

● 選択定年制

高年齢者を対象とした、早期退職者優遇制度です。一定の高年齢労働者に対して、定年前に退職した場合に割増退職金を支払うことで、早期退職を促すものです。

実質的には終身雇用制度が崩壊しているにも関わらず、高齢者の雇用継続確保が義務付けられ、一方で、「解雇」や「賃金引き下げ」については厳しい制限が掛かっている。制度的な矛盾や問題を多く抱えているのに、小手先の改正で対応しようとしているので、ますます問題が複雑になっていっている。

そろそろ、日本の雇用制度を根本から考え直さないと、日本そのものが沈んでしまうのではないか…そんな懸念を抱いています。

以上を踏まえて、あらためてお聞きします。

「御社の就業規則には、定年の定めがありますか?」

image by: Shutterstock.com

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就業規則とは、入社から退社までの「ルールブック」であり、労使トラブルを未然に防ぐ「ワクチン」であり、効率的な事業運営や人材活用を行うための「マニュアル」でもあり、会社と従業員を固く結びつける「運命の赤い糸」でもあります。就業規則の条文一つ一つが、会社を大きく発展させることに寄与し、更には、働く人たちの幸せにも直結します。ぜひ、この場を通じて御社の就業規則をチェックしていただき、問題が生じそうな箇所は見直していただきたいと思います。現役社会保険労務士である私が、そのお手伝いをいたします。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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