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中国の尻馬に乗れ。忘れ去られた中央アジアが世界の要衝となる日

10年前は「大風呂敷」とみなされていた中国の一帯一路構想ですが、「ここにきて着々と実をあげ始めてきている」とするのはジャーナリストの嶌信彦さん。嶌さんは自身の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』で、一帯一路において重要な土地となる中央アジアが、ドバイからハブの座を奪う可能性について言及しています。

ハブの座目指す中央アジア

中国の“一帯一路”構想がだんだん熱を帯びてきた。構想が打ち上げられた時は、中国式の“大風呂敷”とみられ、その実現に耳を貸す国は少なかった。日本も当初は、中国を利するだけとみて反応は鈍かった。しかし、構想から10年経ったいま、一帯一路は着々と実をあげ始めてきた。すると日本も面白い構想で日本が協力できるところがあるなら乗ってもよい、と姿勢を変化させている。

シルクロード経済圏構想(一帯一路)で進んでいるのは、西アフリカからインド洋を経て東南アジアのミャンマーなどに結ぶ“海のシルクロード”だ。途中のパキスタン、バングラデシュなどに中国資金で港湾を整備し、西アフリカに中国資本と労働力が投下され鉱産物などを産出。これをインド洋を経てミャンマーなどに陸揚げし、そこから鉄道で中国へ運ぶという計画だ。既に中国資本が西アフリカに入り、西南アジアの港湾建設も始まっているという。

最近注目を浴びてきたのは、陸のシルクロード建設だ。まずは中央アジアのカザフスタン経由で中国とロシア、ヨーロッパ、中東各国につながる道路や鉄道の建設である。特に現在は北部の中国と国境を接するカザフスタンの東端の都市・ホルゴスに経済特区「国際国境協力センターICBC)」を設置した。ここでは商品に関税がかからず中国側とカザフ側を自由に往来して取引ができるようになった。既にショッピングセンターやホテルが立ち並び、取引をする人達でにぎわっているという。

このホルゴスから西に道路が建設され、オランダと結ぶ計画で着々と工事が進んでいる。中国とヨーロッパへの輸送は船だと40日間かかるが、鉄道やトラックなどの陸送なら20日間で済む。

このほか、ウズベキスタンなどを通る旧シルクロードの鉄道、道路建設も計画されており、これらが完成すれば“陸のシルクロード”は、中国とイラン、トルコなど中東への輸送路も格段に便利となる。

中央アジアは古代からシルクロードの拠点として知られ、15~16世紀までは中国とヨーロッパの文物を運ぶ中継地だった。その後、船や飛行機が利用されるようになって、かつてのシルクロードは利用されることが少なくなっていた。それが中国の“一帯一路“構想で再び脚光を浴びてきたのだ。

20世紀の東西を結ぶハブ空港は、アラブ首長国連邦のドバイ国際空港だったが、一帯一路構想が本格的に動きだすと、アジア、中東、欧州、ロシアなどと地政学的にも近い中央アジアが今後10~20年のうちにハブの座を奪うことになるのではなかろうか。21世紀は物流拠点をもつ国が中心地になりそうだ。

(財界 2018年8月7日号 第476回)

image by: Shutterstock.com

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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