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あと2年。中国が直面する、習近平へ批判大噴出の「悲惨な未来」

中国国内で習近平国家主席に対する批判が拡大、「米中関係を壊したのは習近平だ」という様な論調まで沸き起こっています。なぜここまで習氏は攻撃されているのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、批判理由は「永らくトップの座に居座り続けている習近平」に対しての不満であり、今後中国国家は成熟期の混乱に入るので沈静下も難しいだろうとの持論を展開しています。

習近平の悲劇(避けて通ることができない…)

ローウィー国際政策研究所、シニアフェローリチャード・マクレガーさんの動画を見ていました。

習氏の栄光は既に頂点過ぎた可能性:ローウィー研究所マクレガー氏

この中でリチャードさん、こんなことをいっています。

人々が習主席に対し反対意見を言い始めています。

習主席の栄光は頂点に達したのかもしれません。

つまり頂点を大幅に過ぎ人々は批判する問題を探しています。

そして、興味深いことに、習近平が米中関係を破壊したと批判しているというのです。どう考えても、貿易戦争をはじめたのはトランプですが、中国人は、そのことで習を非難している。

最近、「習近平批判が増えている」という話、RPEでも何度かしました。例えば

「習近平は知能が低い」。中国が閲覧不可にした大学教授の論文
2020年、なぜ中国の習近平は「神」になったことを後悔するのか?

こういう動きを見て、大昔からの読者さんは、「予想通りの展開になってきたぞ」と思われることでしょう。

習近平は、何を間違えたのでしょうか? 国家主席の任期を撤廃して、「終身国家主席」への道を開いたこと??? それも「愚かな決断」ではありますが…。悲劇の原因は、別のところにあります。実をいうと、習の悲劇は、「不可避的なもの」なのです。なぜ???

避けられない国家ライフサイクル

13年前、34歳だった私は、一冊目の本を出版しました。『ボロボロになった覇権国家』といいます。この本のメインテーマは、「アメリカ発の危機が起こってこの国は没落しますよ」でした。予想通り08年、アメリカ発「100年に一度の大不況」が起こり、アメリカは没落しました(「アメリカ一極時代」が終わり、「米中二極時代」が到来した)。

中国については、どうでしょうか? p127にこう書いています。

中国は、2008年・2010年の危機を乗り越え初めは安くてよい製品を供給する「世界の工場」として、その後は1億3,000万人の富裕層を抱える巨大市場として、2020年ぐらいまで成長を続けるでしょう。

05年時点で、

とあります。「成長は2020年まで」については、まだわかりませんが、それでも、予想通り成長は鈍化しつづけています。

なぜ、13年前に現状を予想できたのか? 「国家ライフサイクル理論」によってです。簡単な理論で、「国にもライフサイクルがある」。ざっくりわけると、前の体制からの

これで、13年前、「中国は、まだ成長期の前期だから、08年~10年に起こる危機を短期間で乗り切るだろう」と予想できた。

もう少し、中国の「国家ライフサイクル」を見てみましょう。中国は1949年の建国から1978年末まで「移行期」「混乱期」でした。賢いトウ小平が改革を宣言したのは、78年末。だいたい1980年から成長期に突入した。日本は朝鮮戦争のおかげで1950年から成長期に入った。つまり、中国は日本から30年遅れているのです。

どうですか? ピッタリ30年遅れでしょう。もしそうであるのなら、

となるはずです。まあ、習近平は、「日本のバブル崩壊」と「ソ連崩壊」を詳しく研究させているそうなので、多少時期はずれるかもしれません。しかし、「国家のライフサイクル人間の生老病死同様、「不可避なプロセス」なのです。中国がこれから「また二けた成長を始めました」とかありえません。

習近平の悲劇

習近平の根本問題はなんでしょうか? そう、彼が国家主席になった時期」です。彼が国家主席になったのは2013年3月。しかし、共産党中央委員会総書記、中央軍事委員会主席には、2012年11月になり、この時から実権を握っていました。

ライフサイクルで見ると、彼が国家主席になったのは成長期後期です。日本でいえば、1980年代にあたる。賃金水準は上がり、経済成長率は鈍化し、他国に企業がドンドン逃げていく。これは、「成長期後期」の典型的パターンであり、習にはどうすることもできない。

彼が国家主席になった2013年の記事を見てみましょう。産経新聞2013年8月9日付。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が8日発表した「世界貿易投資報告」によると、今年上期(1~6月)の日本企業の対外直接投資額は、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが前年同期比55.4%増の102億ドル(約9,800億円)で過去最高を記録、対中国向けの2倍超に膨らんだ。

昨秋以降の日中関係の悪化や人件費の高騰を背景に、中国向け直接投資は31.1%減の49億ドルまで落ち込み、生産拠点の「脱中国」が鮮明になった。
(同上)

「昨秋以降の日中関係の悪化」とは、いうまでもなく「尖閣国有化による関係悪化」のことです。

ジェトロの現地調査では、ASEANのうち、上期の日本による対外直接投資が1位だったインドネシアは、自動車メーカーの新工場建設や拡張ラッシュに伴い、部品や素材メーカーの進出が加速している。

 

上期投資額で2位のベトナムは、チャイナ・プラス・ワンの有力候補で、現地の日系事務機器メーカーの生産台数が中国を上回ったという。

(同上)

これが、5年前に起こっていたことです。まさに、「国家ライフサイクルどおり」といえるでしょう。

これから中国は、「成長期から成熟期の移行にともなう混乱」にむかっていきます。日本の「バブル崩壊に匹敵する危機が訪れるのでしょうか? それとも、もっと大きく、「体制崩壊」まで進む?

私は、「体制崩壊」まで進む可能性もあると見ています。中国共産党には、まず「中国全土を統一した」という正統性がありました。その後は、「中国共産党のおかげで、経済成長する」という正統性を確保した。しかし、経済成長が止まる2020年以降、共産党には、「独裁を正当化する理由が何もなくなります

繰り返しますが、習近平は、日本のバブル崩壊と、ソ連崩壊を熱心に研究させています。それで時期はずれるかもしれません。しかし、「国家ライフサイクル」は変更不可能なのです。

image by: shutterstock

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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