中国に振り上げた拳を日本に下ろす。日米貿易摩擦は再来するのか

 

激化する対中貿易戦争のみならず、友好国にすら次々と経済制裁という名の「脅迫」をかけ、国際社会から孤立しつつあるようにも思われるアメリカ。メルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、トランプ大統領が今後取り得る行動を様々な要素を勘考しつつ予測するとともに、日米貿易摩擦再来の可能性等についても記しています。

日米貿易摩擦の再来か

日米通商協議が始まったが、米国は日米FTAを主張し日本はTPPを主張するという事前の予測通りの展開になった。トランプ政権の今後を予測して、日本の今後を検討しよう。

日米通商協議(FFR)

8月9日から10日の2日間、ワシントンで日米通商協議が行われた。茂木経済財政政策担当大臣とライトハイザー通商代表(USTR)の会談で、事前の予想通り、米国は日米FTAの締結、日本はTPPへの参加を要請した。

しかし、結論が出ずに9月に持ち越しとなった。これは総裁選挙後に内閣改造があり、その後、新体制に日本がなることを見据え、かつ、総裁選挙に影響しないように事務方が調整した結果でしょうね。

9月以降、日米FTA交渉が始まると見た方が良い。その焦点は自動車と農産物である。自動車は米国への輸入量と同等の米国車を買う条件が付き、それ以上の自動車輸入には20%の関税を掛けると来る。もう1つが、農畜産物への関税撤廃か豪州並みの関税を米国は要求して来る。

対して、日本は米国産原油やLNGの輸入量を増やして、対米貿易を均衡化することと、米国への1,000億円のインフラ投資で、自動車への関税を回避する方向であるが、上手くいくのかわからない。

問題なのが、自動車でしょうね。しかし、米中貿易戦争で米国車は中国で売れなくなり、一方、日本車は中国の関税が低くなり、安く売れるために、中国での販売が好調になる。

それと、米国で売れる自動車は、コストが高くても米国で作るしかないし、日本での生産台数を確保しないなら、米国工場で作り日本への輸出も考えることである。米国車が日本では売れないので、日本企業の米国生産車を日本で売るしかない。そして、日米輸出台数を合わせることだ。

畜産品も米豪を競争させた方が安く買える。しかし、ここでも、中国から締め出される米国産は安くなるし、一方、豪州産は中国での販売が好調になり、日本市場より中国市場を優先させる。

普通に考えると、米国の味方の日本まで敵にするとは思えないが、トランプ大統領の行動形式は、すべての国を攻撃してくるので、予測不能で恐ろしい。日本も身構える必要がある。

しかし、日米通商交渉後の日米FTAの交渉は数年がかりになり、その間に米国内や世界の情勢は大きく変化してくる。

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