「数十年に一度の豪雨」……表現のインフレが巻き起こす二次災害

 

あとは、折角リアルタイムでの雨雲レーダーなどが、ネットで誰でも見られるようになっているのですから、その「見方をもっと子供達の防災教育として、あるいは成人教育として教えるべきだという問題があります。

例えば「線状降雨帯」の問題は、これはインフレ化しそうな造語というよりも、最新の気象学の成果として、恐ろしさが認識された大事な概念だと思います。ですが、この「線状降雨帯」というのは、後から専門家が原因は線状降雨帯でしたなどと解説しても何にもなりません

リアルタイムで見ていて、「これは大変だ。これでは裏山が崩れるのは時間の問題だ」とか「上流がこうなっていたらダムは放流しないと持たない」というような判断が、ある程度住民や行政などがリアルタイムで判断できなくてはいけないし、ある程度の教育をすればできるのではないかと思われます。

折角レーダーの情報があるので、そこで危険を感じるだけの訓練というか、気象リテラシーのようなものについて全体の底上げをする、それが犠牲者を減らすための重要なポイントではないかと思うのです。後から竜巻でしたとか、線状降雨帯でしたなどと専門家が解説しても失われた生命は戻ってはきません。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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