吉野家のチャレンジに私たちは何を学ぶべきか?
まず、黒吉野家に関しては、やすい、早い、うまい、に加えて、「顧客体験価値」を提供する方針である点だ。美味しく、安くても、居心地が良くなかったりすると、「いってみよう」というモチベーションが起きない。特に女性顧客に関して、その課題を抱えているが故に、今回は、黒吉野家という新業態でチャレンジしよう、ということだ。
私たち中小企業においても、価格やスペックだけで勝負をするだけでは、値引き合戦になってしまう。顧客が自社商品を体験する際に、何を感じるか、が顧客体験価値なのだが、この顧客体験価値を自社製品に「付加」することで、イメージを好転させることができ、ひいては、値段の安さという勝負から抜け出ることができるのだ。ここが、見習いたい点だ。
すかいらーくとの提携に関して、アライアンスを組むまでには、多くの障壁があったのだと思う。何故かと言うと、グループ企業内からは、「どうして自社の中でやり合わないのか」とか、「吉野家はライバルではないか」と、ある意味で反論を中心とする議論が出るに決まっているからである。
このような固定観念に囚われなく、過去の成功体験に固執することのない考え方を発案し、そして実施した点が素晴らしい。意思決定が複雑な大企業ではなかなかできることではないし、創業社長、ワンマン社長の中小企業でも、同じことが言える。
また、もう一つ素晴らしい点は、消耗戦をやっていてもしょうがないという、吉野家ホールディングスの河村社長の言葉だ。デフレ下ではうまくいっていた低価格戦略も、今、この複雑な経済状況の中では、なかなかうまくいかないことが多い。
そんな中で、顧客が欲しいものと、企業が売りたいものが、「ずれている」ことが大前提であると私は思っているが、「うちの会社が良いものだ」ということだけを強調していても、顧客の求める価値に応える事はなかなか難しい。
このケースで言うと、顧客に牛丼を売るというのではなく、顧客は、牛丼食べたいかもしれないし、ガストの日替わりランチを食べたいのかもしれない。また、そのようにメニューだけで選ぶのではなく、ちょっとゆっくりしたいとか、安くランチをあげたいけれど、コーヒーが付いているほうがいいとか、喉が渇いたからドリンクバーがある店がいい、などといったように、多種多様な要求を顧客はするはずである。
このような、ある意味顧客のわがままにも対応できる施策といるのが今回のチャレンジの素晴らしい点だ。
いずれにしても、このタッグを実現させていく、推進力と発想力に関しては、柔軟な考え方を持つ経営者人が、強力なリーダーシップを持って実践推進したのであろうことが、推測できる。
正しいと思うことは、周囲が何と言おうと、理論武装をした上で、推進する。この姿勢が、私たちが見習うべき点だろう。
image by: 吉野家 - Home | Facebook