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2020年が分岐点。日本が本気で導入しないとヤバい「経営資源」

世界初のAIによる商用自動運転タクシー営業の実証実験が始まった東京。すでにAIをビジネスに導入している企業は多くありますが、人気コンサルタントの吉田繁治さんは自身の無料メルマガ『ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』で、さらに進化していくデジタルテクノロジーを早急に取り入れるべきとし、その理由を詳述しています。

経済問題の根底は、世界の負債の増加である

東京で、世界初のAIによる商用自動運転タクシーの営業の実証実験が始まりました。21世紀、何事においても「世界初」が少なくなった日本にとって、喜ばしいことです。

1998年の資産バブル崩壊後の銀行危機が日本の成長を下に引っ張ってきました。経済の成長とは、ITとアプリを含む設備投資の増加ですが、資産と株の下落により過剰な負債になった企業が、設備投資を減らしたからです。

過剰な負債は利払いと返済のできない不良債権になって、その結果が銀行の危機、つまり信用創造の危機になっていたからです。日銀から資金支援を受けても、銀行は貸付金の増加を果たせなくなった。

企業も、売上に対して過大になっていた借入金を減らした。その結果、企業の設備投資が減ってきたのです。それが、日本経済を成長させなかった。いろいろな「世界初」が日本から消えました。

2020年の東京オリンピックでは、選手の交通機関として、AI自動車が全面的に採用されるスケジュールです。2020年代になれば、われわれが買う車にも、深層学習のAIが搭載され、障害物の認識と回避ができるようになっていくでしょう。

自動運転には5つの段階が設定されています。

2020年にはレべル3の条件つき自動運転が実用化します。テスラは、2020年にレベル5の完全自動運転を実現としていますが、どうでしょうか。アウディは、2020年から21年には完全自動運転の実用化を目標にしています。BMWも2021年です。

2020年代の初めに、各社の高級車から完全自動運転の車が登場するでしょう。当方の車も、買い替えの時期です。「3年、待つか…」悩んでいます。AI自動車の実用は「時間の問題」です。農業の自動化も始まります。

その前に、西日が強く当たるパーキングスペースの改造が必要です。ネットで調べると250万円くらいです。今は、冷房が効くまでの約30秒、80度以上かと思えるサウナになる。抵抗値を上げる熱が弱点である電子回路には、これはよくない。高性能なPCほど冷却が命です。確率は稀でも、一瞬の誤動作やフリーズが起こったら事故です。

将棋や囲碁のパターン(棋譜)の深層学習(ディープ・ラーンニング)から始まったAIによる画像診断が始まっている診療を含むあらゆる分野で、認識ができる深層学習型AIの実用化が進んでいます。

診断のAIは、トッププロを負かした囲碁のAI(アルファGO)を2017年に作った英国のディープ・マインド社資本はグーグルが開発しています。画像認識は、棋譜の深層学習と同じ性質のものです。半年での進歩が、目まぐるしく速い。学習も自動化する深層学習の進歩の速度は、速いからです。

将棋や囲碁を事例に言えば、3か月間で、人類の経験は及ばない数百億~数千憶回の自己対戦から自動学習しています。人間がプログラムを作っていた間は、ソフトの進歩は遅かった。自動化された深層学習で、比較できないくらい速くなったのです。

AI自動車(自走車)では、認識と判断の速度が問題です。1秒かかる障害の認識ではぶつかってしまう。

この深層学習の進化は、あらゆる分野で同時進行中です。深層学習のプログラムは、目には見えないので、多くの人が知らない。AI自動車が登場する時期には、工作の自動ロボットを含んで、全分野でのAI化が、高速になります。3年は、過ぎてしまえば「あっという間」です。トランプの当選からも、2年が過ぎています。

AIの活用は日本の人口減を無効にするでしょう。雇用が不足している配送(物流)も倉庫も、自動化に向かっています。AIが雇用を奪う、仕事を奪うという懸念が言われますが、当方はその面ではなく、経済成長、つまり1人当たり労働の、所得の増加になる面を重く見ています。

日本のような人口減の社会では、労働者数も減るからです。AIは、産業革命を果たします。世界に先駆けて、生産年齢人口が年率0.6%で減って行き、増えることがない日本は、AIの利用でも先行すべきです。

アプリとAIの深層学習はデジタルです。デジタルは完全な複製ができるので、利用数が増えるとどんどん安くなって行き、最後は、ほぼゼロになります。ハードコストのみになって行くのです。

ハードでは、爪の先の大きさで、1テラバイト(1兆バイトの情報量)のメモリも、登場しています(3万円台:バッファロー)。しばらくすれば、1万円以下になるでしょう。こうしたことこそが「真に驚異的なこと」でしょう。1テラバイトのハードディスクは、30年前は数億円でした。兆バイトは信じられなかった時代です。IBMの小型機A/S400を使っていたので記憶しています。

5万4,000店に増え、売上が11兆6,975億円(2017年)になっているコンビニでは、共同で、メモリの変化形であるICタグ(RFID:起動電流つきメモリ)の実証実験が始まっています。ICタグは、WiFiのように、電波で、商品の、同時多数の、自動認識を可能にします。

今は人が行っている在庫管理、生鮮の鮮度管理、発注、レジのアプリ(プログラム)と組み合わせると、商品作業が自動化します。店舗のAIに相当するものです。店舗の商品作業は、売れて減った棚陳列の補充だけになる(人件費の約40%)。店舗労働の生産性を2倍には高めます。(注)売上生産性=売上÷労働人時

2025年には、2,000億枚のICタグが使われ1枚は1円に下がる予定です。今は、5円から10円と高い。100円から200円が単価の食品には、コスト率が高すぎ、まだ使えません。

中心単価が1,000円から2,000円のユニクロ、ZARA、H&M(いずれも、世界生産のファスト・ファッション)では、遠隔の在庫管理に使われています。本部からは地球の裏側にある店舗の在庫と生産の、リアルタイム管理を自動化できるからです。

CSのTV放送では、世界中のスポーツや事件の実況中継が、動画機能をもつスマホ一台でもできるようになっています。Youtubeにも、短時間でアップロードされます。既存の、メディアとそのメディアのジャーナリズムが衰微しているのはこのためです。ジャーナリズムの本義は実況+解説だからです。

世界で、ICタグの需要が増えて3円以下に下がる時期から、電子マネーの普及率上昇とあいまって、店舗の自動化も進むでしょう。時期は、AI自動車と軌を一にする2021年でしょう。2年や3年はすぐに来ます。2018年は、ICタグの利用開発を開始すべき時期になっています。人がそれに慣れるには、時間がかかるからです。

日本の店舗での、電子マネーの利用は世界に遅れています。クレジット・カードを含むキャッシュレス化の比率では韓国89%、中国60%、カナダ55%、英国55%、オーストラリア51%、スウェーデン49%、米国46%、フランス39%、インド38%ですが、日本は18%であり、ドイツも15%と低い(「キャッシュレスの現状と今後の取組」2015年:経産省調査)。

電子マネーは、レジでの清算を自動化させます。スマホや電子マネーがチャージされたカードをかざすだけで決済が終わるからです。

店舗は、商品をスキャンし、代金を受け取るレジで人件費の35%くらいを使っています。他にも、AIで自動化できる商品管理・在庫管理は人件費の20%でしょう。そのコストは、今の店舗売価になっています。

(注)わが国のスーパーの値入率は、18%から27%です。「値入率=値入額÷(仕入れ代金+値入額)」です。コンビニは、店舗段階の値入率が15%くらいです。

タクシー料金では、ドライバーの人件費率は70%です。1,000円の料金で約700円、管理費・車両費・燃料費・保険が300円です。商品の輸配送では、約50%がドライバーの人件費です。ネット販売の宅配の費用は一件当たりの平均が約400円(段ボール1個)ですが、200円は、AI配送で代替できる人件費と見ていい。

あれよあれよと、AI革命の時代になりました。あらゆる既存産業は、人手を多く使っている労働部分で、AIの導入へ向かわないと、コストの競争優位を失っていくでしょう。2020年はそういった時期への分岐点です。会計も、クラウド会計になって行きます。

屋台の店舗でも、電子マネーの利用比率を高めた中国は、これを知っていますが、2000年代の、内需ゼロ成長の日本では、「うかうかしている会社が多い。隣にできた店舗に、コストの競争優位を失ったあと、やおら追いかけても遅いのです。

デジタルテクノロジーの導入では他より早いことが必要です。アマゾンの仮想店の開発は、1995年でした。それから23年。どこでも仮想店が作れますが、どこも、アマゾンに追いつくことができない。

1社総取りになる傾向が強いデジタル技術では先行するものに追いつくことが容易にはできないからです。プログラムは複写のコストが、ほぼゼロです。物的な店舗を作るには、その都度、一定のコストがかかります。仮想店で、商品種類(売り場面積)を増やしても、追加のコストはほとんどかからない。そのため、販売額の増加とともに、値入率を下げて行くことができるからです。

ソフトコストが年々、目に見えて安くなるデジタル技術は、そういった「一人勝ちをさせる性質をもっています。最初は、コスト高です。そのコストは、年々、大きく下がって行きます。

インターネットのWiFiも、現在の2Gから、5Gに高速化する時代です。5Gはデータの送受信コストの、劇的な低減(1/100)をもたらします。送受信の高速化は、データ当たりのコストの低減と同じことです。

成長経営のコツは、「これから安くなるものを豊富に使い高くなるもの人件費の使用を減らしていくこと」です。AIとデジタル技術は、これから安くなるものの典型です。今後はAIとデジタル技術を、経営資源にしなければならない。

image by: Shutterstock.com

吉田繁治『ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』

『ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』

著者/吉田繁治

読むと目からウロコが落ちると評判の経営戦略。面白く読むうちに高度な原理がスッとわかります。■経営戦略、小売・流通、情報技術戦略、金融・経済、ロジスティクス、EC、SCM、CRM■などの良質な情報の提供。

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