その間…となるのが炭素数8のカプリル酸と10のカプリン酸などで構成される中鎖脂肪酸の代表格として、ココナッツオイルなんかがあります。確かに夏場は液体、冬場はネッチリ固まっている印象がありますね。
このように分子の長さや二重結合の有無で油の柔らかさが決まるのですが、これだけで体に良いとか悪い…しかも食べるのと塗るのでは真逆だったりするのが油のおもしろいところ。
さて、油についてだいたい軽く話をした上で、「美容に良い悪い油ってなんなのか」という話に入るわけです。
健康に良いと言われている油にオリーブオイルがありますね。オレイン酸が多く含まれており、オレイン酸は、代謝しやすく、熱になりやすい油であり、さらに抗酸化作用などもあって「健康に良い油」の成分として代表的に紹介されています。ただ、別にオレイン酸が健康にいいから…といってオリーブオイルだけにする必要もなく、菜種油にもひまわり油にも米油にも含まれていますし、そもそも必須脂肪酸でもないので、異常に強調してオリーブオイルが健康に良いという話にもっていくのは無理があります。
また、オリーブオイルの中でもひときわ味の良い、エクストラバージンオリーブオイルは飲んでよし、塗ってよし…みたいな話をたまに美容系サイトで見かけますが、飲んで良いものは塗っても良い…とは一概に言えません。
特にエクストラバージンは精製されていないので、不純成分(食べる分には良い)が太陽光などを浴びてどんな物質になるのか検討もつかないですし、基本的に二重結合が多い脂肪酸ほど紫外線で分解変成することで、よからぬものになってアレルギーの原因物質などになる可能性のほうが高いといえます。化粧落としなら、それこそ精製された化粧品グレードの流動パラフィンに勝るものなしです。
そもそも肌を植物油で保湿するというのはあまり良いことではありません。皮膚の常在菌が植物油をそれほどうまく利用できるかというとかなり疑問です。肌の正常な保湿というのは、皮脂の正常な分泌に、それをちゃんと利用して、常在菌が快適な適度な保湿ができるように肌自体が常在菌とあわせて作るものです。
なので自分の化粧水の説明では、乳液(油入りの化粧水)は不要としているのは、そのせいです。乳液をつけないと乾燥してしまうような肌は、バランスが崩れているので、皮膚科で薬をもらってくるか、食生活などを改善するべきなのです。
最後にトランス脂肪酸です。不飽和脂肪酸を人為的に飽和脂肪酸にすると、二重結合の部分からねじれが発生して、自然には非常に少ない(存在しないわけではない)形の油になります。人工的なモノなので、プラスチックオイルとか腐敗しないとかいろいろな都市伝説がありますが、そもそも油は常温保存でそうそう腐るものではないので、トランス脂肪酸だから腐らないというのは語弊があります。
とはいえ、あまり大量に摂取することは、健康的に良くないというのは多くの実験で確認されており、それに関しては疑問を挟む余地はありません。ただ、トランス脂肪酸を絶対悪にして、絶対排除みたいな流れ自体はただのスケープゴートとしての利用でしかありません。
トランス脂肪酸はその安価かつ安定した性質から、夏場のチョコレート菓子の安定性を高めたり、冷凍焼けを防ぎ冷凍食品の味を劇的によくするなどの貢献もしています。また、一般的な食事では、そもそもトランス脂肪酸が危険な量に達することのほうが難しいくらいなのでそれほど懸念するような話でもないと自分は思います。