出社することなく、突然メールやLINEで退職を申し出、さらには未消化の有給をすべて離職日までに使い切って退社しようとする…。そんな勝手な社員に困っている会社は少なくないようです。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で社労士の飯田弘和さんが、そのようなトラブルを未然に防ぐアドバイスを記しています。
御社では、退職の際に退職届の提出を義務付けていますか?
最近は、メールやLineでいきなり退職を申し出る労働者が増えています。しかも、退職日までに未消化の年次有給休暇をすべて使って辞めようとします。ですから、メールやLineで退職の申し出があったその日から、いきなり出勤してこなくなって、有休残日数を消化したら退職という、なんとも都合のイイ労働者が実際に存在します。引き継ぎなど全くしません。会社や同僚の迷惑など気にしません。そして、ただただ、自分が辞めることを正当化する言い訳に終始します。実に見苦しい様です。
しかし、このような行為であっても、実際上はその退職を認めざるを得ないでしょう。
期間の定めのない労働契約で働いている場合、民法上は2週間前までに退職を申し出れば良いことになっています。就業規則で、退職日の1か月前までに申し出るよう定めていれば、そちらが有効となることもあります(民法と就業規則のどちらが有効であるか、裁判では判断が割れています)。
しかし、いくら就業規則で定めていても、2ヶ月も3ヶ月も前に申し出なければならないような定めは無効となります。
期間の定めのある働き方の場合、やむを得ない事由があるとき以外は、契約期間の途中での退職は認められません。といっても、従業員の首に縄をつけて会社まで連れてくるようなことはできず、結局、働き続けさせることはできません。
対抗手段としては、裁判等で損害賠償請求を行うくらいしかありませんが、実際にその従業員が急に退職したことによる損害を確定して請求することはかなり難しい。そのような裁判を受けてくれる弁護士さんを探すのも困難です。
ここは考え方を変えて、自ら辞めてくれたことに対して、ラッキーだと考えてください。そのような従業員が会社に残れば、必ず何か問題を起こします。トラブルメーカーとなる可能性があります。将来起こる無用のトラブルを未然に防げたと考えてください。
ただ、このような従業員に対しても、必ず、書面で退職届を提出させてください。問題社員は、退職後も問題・トラブルを持ち込みます。自ら辞めると言っておきながら、「解雇された」などと言い出す労働者もいます。もちろん、金銭目当てです。そのようなトラブルを防ぐためにも、必ず、退職届を書面で提出させることを忘れないでください。
ちなみに、退職時に残っている有休について、取得を申請してきた場合には、認めなければ労基法違反となります。この場合、使用者の時季変更権は使えません。このような事態に備えて、常日頃から有休取得を促し、退職時にまとめて取られないようにすべきでしょう。退職時に30日、40日とまとめて取得されれば、会社にとってはかなりの負担となります。そのようなリスクを分散するためにも、普段から有給を取れるようにしていくことが大切です。
以上を踏まえて、改めてお聞きします。
「御社では、退職の際に退職届の提出を義務付けていますか?」
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