中ロ関係の真実
日本には、いろいろな「勘違い」があります。その一つが、「中国とロシアは、とても仲が悪い」というもの。確かに、両国には、問題もあります。一番大きいのは、ロシアが中国を警戒していることでしょう。なぜ?
ロシアに近い中国東北3省の人口は、日本に匹敵する1億2,000万人。一方、ロシア極東の人口は、700万人。それで、中国からどんどんロシア極東に人が入ってきて、「実効支配されてしまうのではないか?」という恐怖がロシア側にある。
しかし、一方で、ロシア最大の敵は、29カ国からなる「巨大反ロシア軍事ブロック」を率いるアメリカです。そう、中国とロシアは、「反アメリカ」で一体化しているのです。
これ、今にはじまったことではありません。03年、プーチンは、当時の石油最大手ユコスのホドルコフスキー社長を逮捕させた。その理由の一つは、彼が米エクソン・モービルに、ユコスを売ろうとしていたこと。プーチンは、ロシアの石油がアメリカに支配されるのを阻止した。すると、旧ソ連諸国で、続々と革命が起こるようになった。
- 03年、グルジア
- 04年、ウクライナ
- 05年、キルギス
そして、「親米反ロシア政権」が誕生していった。「このままでは、ロシアでも革命が起きる! 対抗しなければ!」と危機感をもったプーチンは05年、中国と事実上の同盟関係を築くことを決意します。この辺の経緯を、私は07年『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義』という本に書きました。
そう、中ロの事実上の同盟は、すでに13年つづいているのです。そして、その関係は、14年のクリミア併合以降、ますます強固になりました。というのも、日本、アメリカ、欧州は、ロシアに制裁を科している。中国は、制裁はもちろんしないし、一言の批判もしなかった。そう、ロシア政府高官の中では、
- 中国 >>> 日本
なのです。日本は、この辺のところをしっかり認識しておく必要があります。
では、ロシアは、なぜ日本とも仲良くするのでしょうか? これは、もちろん、安倍総理が「経済協力」の話をするからです。
さらに、中ロの格差がますます開いてきている。中国のGDPは、約12兆ドル。ロシアのGDPは、約1兆5,000億ドル。その差は、実に8倍! このままだと、ロシアは、中国に吸収されてしまいますね。
中ロは、一体化してアメリカに対抗する。しかし、中国との関係でバランスをとるために、日本の存在も必要なのです。
image by: 首相官邸