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中国2億人視聴のTVから拡散した「観光立国ニッポン」の悪い冗談

安倍政権が「観光立国推進」を宣言して5年余り。その間、外国人旅行者数及び消費額も大きく増加し、安倍首相はその成果を「自画自賛」していますが、まだまだ改善すべき点が多いと指摘するのは、軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さん。小川さんは自身が主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、台風21号により大混乱となった関西国際空港や北海道胆振東部地震での外国人観光客に対する「不手際」等を例に挙げ、真の意味での観光先進国となるために必要な点について論じています。

笛吹けど踊らず? 観光立国

観光立国なのだそうです。

安倍晋三首相は次のようにぶち上げています。

私が、世界の人たちをひきつける観光立国を推進すると宣言してから5年半、政府一丸、官民を挙げて取り組んだ結果、外国人旅行者は3.5倍、消費額は4倍に拡大し、2020年に外国人旅行者数は4,000万人という大きな目標の達成がいよいよ視野に入ってまいりました。

 

外国人旅行者の滞在先も全国に広がり、この5年で地方での宿泊者は4倍に増加いたしました。(中略)これは地方にとっては大きなチャンスであろうと思います。

 

観光を地方創生の起爆剤として、観光先進国を目指してまいります。そのためにも、まず、平成30年7月豪雨などによる訪日数への影響を一刻も早く回復する必要があります。(後略)

(8月31日、観光戦略実行推進会議)

自民党総裁選の遊説では、「外国人観光客が落としているお金は4兆円」ともアピールしています。

観光立国、観光先進国、大いに歓迎です。

しかし、そのためには世界の観光客が安心して心から楽しんでもらうための備えが必要です。

現実はどうでしょう。9月には台風21号と北海道大地震が立て続けに起きましたが、外国人観光客にも心細い思いをさせ、不便を味わわせるなど、観光客が二の足を踏むような状態が放置されていはしないでしょうか。

一例は、関西国際空港や北海道で携帯電話が使えなくなったケースです。母国に無事を知らせたい外国人にとって、こんなに苛立たしいことはありません。

これについては、携帯電話各社が備えている可搬型基地局と充電設備を迅速に投入すればすれば解決できたのですが、それが行われませんでした。

外国人用の観光案内のホームページが日本語だけだったのは、本当に悪い冗談です。これは香港のフェニックステレビを通じて世界に発信されました。日本政府は、このフェニックステレビが中国本土だけで2億人の視聴者を持ち、そこから拡散されていくニュースがたちまち世界に拡がることを知らないようです。

駅の放送や電光掲示板が日本語だけだった問題については、中国共産党の機関誌『人民日報』の系列の『環球時報』のサイトが指摘しています。

6月の大阪北部地震の際、大阪にいた中国人旅行者の声を紹介。「駅の放送や電光掲示板のニュースは日本語ばかりだったので、何が起きたのか分からず、不安だった」と語ったとし、「2019年の主要20カ国・地域(G20)首脳会議、20年の東京五輪・パラリンピックを迎えるにあたり、外国語対応が課題だ」と指摘した。
(9月18日付朝日新聞)

こんなことは、それぞれの組織が心がければ今日にでも取り組みを改善できる話ですが、その兆しが見えているのかどうか。いくら安倍さんが「観光立国」と言っても、「笛吹けど踊らず」ではどうしようもありません。

また、どうしてそんな問題が起きたのか、疑問をぶつけ改善に向けて動かすようなマスコミ報道が少ないのも、不思議な感じです。

このような問題について、国を挙げて改善を進めてこそ、それが本当の「お・も・て・な・し」であり、観光立国と言えるのだと思います。(小川和久)

image by: 7maru / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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