マネジメントの父と呼ばれるドラッカー。彼の理論に関して数々の入門書が出版されていますが、その真理を理解できる人と理解できない人、経営者には二種類の人がいます。無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』の著者・浅井良一さんは、ドラッカーと松下幸之助の言葉から学ぶ「経営者がやるべきこと」について解説しています。
不思議の「活動システム」
ドラッカーは「人こそ最大の資産である」と言い「組織の違いは人の働きだけである」と言っているのですが、この意味するところの「真理」を理解できるかどうかは非常に重要なことがらで、それを覚る経営者こそが企業に大きな成果をもたらしています。それ故に明察でもって、それを獲得していただければと思う次第です。
物事を素直に見ることのできる人ならば知るように人は「善でも悪でもなく」「自分自身に最も関心を持ち」「夢を見る」なので、そのために、人を導くため「普遍の方策」が取られなければなりません。経営者は、
- 「ミッション(使命)=大義」を掲げて
- 「行動規範」であるべき行動指針を示して
- ミッションを実現するための「あるべき目的・目標(ビジョン)」を示して
- 「自己研鑽の機会」を提供して
- 「『仕事』の環境を整えて支援」し
- 「公正な評価基準」でもって平等に「評価し」「競わせ」
- その“成果”に対して適時に公正に「物心両面の報酬を提供する」
ここで「ミッション(使命)=大義」について少し詳しく説明を加えます。仕事は本来的に「顧客を幸せにする」ことを目的にします。経営者がまず心しておかなければならないのはこのことで、顧客を幸せにできなくなったなら、もはやそれは仕事ではなくなります。
もちろんすべて人のすべての欲求に応えることはできようはずはなく
- 私たちがつくる効用を最も喜んでくれる顧客は誰か
- 私たちが最もよくできることは何か
- 喜んでもらうために何をしなければならないか
を常に考えて改善、革新を行わなければなりません。そうしなければ、私たちは「幸福」を得ることはできません。
事業の2つの大義、一つは「顧客を幸せにすること」、もう一つは「顧客の幸せを通して『私たちが物心両面において幸せに』なること」です(私たちが「何をするのか」「何をすべきか」の概念が「ミッション」です)。
お金さえあれば「人以外の経営資源」を誰もが獲得することができます。しかし「人」は、明確な意思のもとにまた明確な「活動システム」のなかで育てて活用しなければ能力を発揮することはありません。
優良な中堅企業では「平凡な人」を「非凡な人」に育て上げて、その非凡な人を適所に配置して究極まで活用して成果を実現させています。それに対して大多数の企業は「最大の資産」である人への理解・認識がないがために、どれだけ錆びつかせ使い勝手の悪い「道具」にしてしまい「ロス」と「不条理」を発生させているか分かりません。
また「最も賢明な経営者」である「松下幸之助さん」の言葉を引用します。
すべての人を自分より偉いと思って仕事をすれば、必ずうまくいくし、とてつもなく大きな仕事ができるものだ。
部下に大いに働いてもらうコツの一つは、部下が働こうとするのを、邪魔しないようにするということだ。
そこでの経営者のあり様を考えますと、人から生まれる“知”と“熱”こそが企業に成果をもたらせて「存続と成長」を可能にせしめる「構成元素」なので、経営者に求められるのは「高い視点」からの“知”と“熱”でもって成果が実現されるように従業員が持つ“知”と“熱”が豊かに巻き起こり結実されるように“孵卵器”つまり「活動システム」をつくることです。
その「活動システム」の直接の目的は「顧客、社会の幸福」であって、それと同時にそのことに貢献する「従業員」が“働く”ことを通して「幸福」が実現できるようにつくり込んで行くことです。人は「社会が幸福になる有意義な仕事」においては「自身が参画し、意思決定し自身の意思で実行できる」なら喜んで「責任」を引き受けます。
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