長年支払ってきた「国民年金」は、一体何年で元が取れるのか?

 

まあ、今回は元が取れるまでにどのくらいの年数が必要なのかを算出してみましたが、あくまで公的年金は長生きというリスク(危険性という意味ではなくて不確実性を意味します)に対して備えてる保険なので損得の話は適切ではありません。それに公的年金は、若い人でも家族が亡くなれば支払われる遺族年金や、自分が重い病気や怪我を負った時に支払われる障害年金という人生の重大なリスク(危険という意味ではなく不確実性を意味する)にも対応している。

遺族年金は自分が亡くなった場合に遺族補償を行う。例えば、国民年金加入中に30代で亡くなったとします。20歳以降(20歳前に厚生年金とか共済に加入してた人はその間も含めて)の強制加入期間の3分の2以上を亡くなる日の属する月の前々月までに保険料を納めてるか免除期間でないといけませんが(亡くなる前々月までの直近1年間に滞納が無いのも認められる)、その時に30代の配偶者と18歳年度末未満の子が2人いたとします。そうすると、遺族基礎年金779,300円(定額)+子の加算金224,300円(定額)×2人=1,227,900円(月額102,325円)が配偶者に保障される。遺族基礎年金は子供が全て18歳年度末を迎えると消滅しますが、遺族厚生年金は再婚などが無ければ終身保障

老齢基礎年金であれば、20歳から60歳までの40年間完璧に納めないと満額の779,300円は貰えないですが、亡くなった人が国民年金に強制加入して保険料を納めたり免除にしてたから、配偶者が30代の若さでも満額の老齢基礎年金と同じ額が貰えるわけですね。なお、配偶者が存在しないのであれば、未成年の子供が年金を受給する場合も普通にある。

あと、障害年金であれば例えば国民年金加入中の20代で重い病気で長い間労働が困難になり、先ほどの遺族年金の時のように保険料3分の2等を満たしていたとします。で、障害等級が2級となって、国民年金から障害基礎年金が支給される事になれば2級であれば年額779,300円(1級は1.25倍の974,125円)が障害が続いている間は保障される(病気や怪我が治る見込みがない場合は終身支払われる人もいる)。また、20歳前から障害がある方は今まで国民年金加入して保険料を納めた事が無くても、例えば障害等級1級に該当すれば20歳以降は障害基礎年金1級の974,125円が保障される

これらの年金を見てみると、老齢の年金の時のような損得勘定は余計にどうでもいいものになってきますよね。いくら保険料を支払ってきたかという事ではなくて、リスクに備えて保険を掛けてきたから保障される

日本の公的年金においては老齢の年金は終身支払われる事、遺族年金や障害年金などの人生においての重大なリスクに備えられてる事、そして社会の経済変動(物価変動や賃金変動)に対応している。それらの事を考えれば公的年金は非常にお得な保険ではないでしょうか。とてもじゃないけど民間保険ではここまではできない。

年金はよく批判や非難の的になりますし、そういうのが積極的な話題になりやすいですが、年金のおかげで救われた人たちも非常に多かったという事も読者様にはご理解いただきたいなと思います^^。

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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