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キャデラックがフォードに勝った「イノベーション」の意外な中身

日本語で「革新」という意味の「イノベーション」は、大それた言葉に聞こえがちですが、無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』の著者・浅井良一さんはイノベーションについて「どの業界でもどの事象にでも起こる」と断言。関係ないと思っている中小企業の方々にも考えてもらいたいと話しています。

「イノベーション」とは発明なのか

アラスカのイヌイットに、あるセールスマンが冷蔵庫を売りつけました。その冷蔵庫はある用途で重宝して使われることになったのですが、それはなんと「食品の凍結防止用」としてだったのです。ドラッカーは、これも立派な「イノベーション(革新)」だと言うのです。

通常「イノベーション(革新)」というと、ノーベル医学・生理学賞を受賞した「免疫治療薬」などを思い浮かべますが、実は経済に関わることすべてにおいて行われることであり、発明はその1つにすぎません。

ところで、中小企業の経営者の多くの方に「イノベーション」をと言うと「うちみたいな会社には、そんなことは関係ないし、興味がない」と言われます。一方で、それなりの経営者の方に「御社は『イノベーション』をどのように考えられますか」と問うと、一瞬何を言っているんだという顔をされてから、それから人格者であるのでそれなりの応答をしてくれます。片や「そんなことに興味がない」と言われ、片や「そんな初歩的なことを、何故言い出すのか」と訝られ、ここには大きな断絶があります。

「イノベーション」は、ごく一般的で身近な必須の基本的な活動です。少し特殊なのですが例をあげると、プラスチックパイプがあり、その端と端をつないで「フラフープ」と命名して売り出したところ、これが爆発的に売れて一大ブームを起こしました。この玩具を売り出したのはアメリカの「Wham-O社」と言う会社ですが、この「フラフープ」の特許を取ろうとしたところ、昔からあった玩具に材質を変えただけであるとの審査で取得することはできなかったそうです。

それでも「フラフープ」という名称を登録商標としていたので、子供たちがこの商標以外を買おうとしなかったため利益を独占することができました。これも「イノベーション(革新)」であると言えます。「フラダンス」に因んで「フラフープ」と命名したことは立派な革新的なアイディアであって、これが利益の源泉ともなりました。

ダッコちゃん」という真っ黒な人型のビニール人形があります。1960年代に、タカラトミーが独自に商品開発してツクダが売り出したものなのですが、腕にぶら下げて街行く女性が見られるようになったことよりマスコミの取材対象ともなって空前の大ヒット商品になりました。「フラフープ」はリニューアルですが「ダッコちゃん」は独創です。

ここに2つの玩具をあげたのですが「イノベーション」は、どこの業界にもどんな事象にでも起こるということを分かってもらいたいからです。

話題を変えますが、アメリカにはかって揺るぐことのないビッグ・スリーと称される3つの自動車会社があるのはよく知られていることですが、そのなかの2社で起こった地位の逆転劇の要因を考えます。それはGMとフォードの間で起こったことなのですが、理由は新発明によるものでもなくまた生産方式の画期的な変換でもありませんでした。

はて、それは何が原因だったのでしょうか。ドラッカーを引っぱり出すまでもないのですが、ドラッカーは事業を行うについてまず行わなければならないのは「顧客は誰か」という問いだとしていて、それに答えられてはじめて「われわれの事業は何か、何であるべきか」というを定義ができるとしています。しかる後「顧客はどこにいるか」「顧客は何を買うか」を問うことが重要であるとしているのですが、逆転劇はこの「顧客は何を買うか」を的確に見極めれるかどうかで起こったものです。

マネジメントの基本機能である「マーケティング」は「顧客の欲求からスタートする」ですが、フォードは「時代の変化」と「顧客の欲求の本質」を理解できなかったため、その地位を奪われることになりました。

フォードからその地位を奪ったのは「キャデラック」という高級車なのですが、そのときの経営責任者は「われわれの競争相手はダイヤモンドやミンクのコートだ。顧客の購入するのは、輸送手段でなくステータスだ」と。「革新」が成功できるのは「時代の欲求」が絶えず変化するからです。つまり「イノベーション」は「顧客の欲求」を焦点にするということです。

image by: Shutterstock.com

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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