「ギブ・アンド・テイク」というフレーズは日本語の中にすっかり溶け混んでいる横文字の元祖ですが、実は使い方次第で、2つの正反対の意味になることをご存知でしょうか。今回、現役弁護士の谷原誠さんは自身の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』で、仕事した分だけの見返りを得る「一回完結型」と、リターンが倍増していく「長期戦略型」の違いを解説し、仕事を軌道に乗せる方法を紹介しています。
ギブ・アンド・テイク
こんにちは。弁護士の谷原誠です。ビジネスや日常生活で「ギブ・アンド・テイク」という言葉をよく聞きます。文字通り、こちらから何かを与え、相手から得るということです。
ほしいものをひたすら求めるだけでは、得ることはできず、次第にだれからも相手にされなくなります。相手にメリットを与えるからこそ得られるのだという意味で、この言葉は真実でしょう。しかしこのギブ・アンド・テイクの考え方には落とし穴があるようにも感じます。
ギブ・アンド・テイクと聞いて多くの人が考えるのが「駆け引き」的な意味。相手から何が得られるかを予測し、それに応じたものを与えるといったことです。1回的な交渉などは典型ですが、駆け引きにおいては、こちらにとってなるべく小さな価値のものを与え、相手から大きなものを引き出すことを考えることもあります。
問題は、そのような駆け引きでは、与えるものが次第に小さくなってしまうこと。すると必然的に得られるものも小さくなり、そのうち何も得られなくなります。相手との駆け引きが一度きりで終わりならよいのですが、これは未来につながる考え方とは言えません。
私は、駆け引きのためのギブ・アンド・テイクと、成功のためのギブ・アンド・テイクでは、考え方が全く違うのだと思っています。成功のためのギブ・アンド・テイクのポイントは、相手からもらったもの以上のものを返し続けること。短期的には得をしないかもしれませんが、相手も大きなリターンがあることを期待して、さらにこちらに与えてくれます。
成功のためのギブ・アンド・テイクの重要性は、事業を行っていると実感します。得られるのが確実な分だけを与えようとしていると、現状維持すらできなくなります。いただく報酬以上の顧客満足を与えて、はじめて仕事が続いていくのです。
経営者だけではなく、サラリーマンも同様です。サラリーマンは労働力を提供して給料をもらっており、これもギブ・アンド・テイクの関係。駆け引き的に考えると、損をしないためには、給料分だけ働くのが正解です。もっといえば、なるべくサボって給料を得たほうが、得をするともいえます。
しかし当然、それでは評価されませんし、将来的に給料は上がらず、成功は遠くなってしまうでしょう。会社に給料以上のベネフィットを与えるからこそ、会社から価値が認められ、給料も上がっていきます。
ギブ・アンド・テイクはビジネスの基本中の基本の考え方ですが、その本質が理解できているか否かによって、長期的にテイクできるものが変わってくるのではないか、と思います。1回の駆け引きのギブ・アンド・テイクなのか、長期的なギブ・アンド・テイクなのか、見極めることが重要です。
今回は、ここまでです。
image by: Shutterstock.com