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まるで地域の嫁姑問題。地元町会とマンション住民の対立解決法

野菜などを近所にお裾分けするのは「他家の様子を探るのも目的」などと言われるように、地方によっては警戒心が強い方が多く住む地域もあります。マンション管理士で無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さんは、マンションの町会加入問題を引き合いに、なぜ地元の人がマンション住民を敬遠するのか、問題解決に向けていかに対応すべきかについて論じています。

解決方法がみつからない問題は横に置いて、できることに集中を!

こんにちは!廣田信子です。地域の町会(自治会、町内会等というものとと同じです)とマンションの関係はなかなか悩み深いものがあります。これだけは、

本当に地域で実態が違って、さらに同じ地域の隣り合っている町会でも違うので、なかなか厄介です。マンションの住民が町会に入らないという行政側の悩みを聞く一方、地元の町会がマンション住民の町会への参加を歓迎していないところもあるのです。

どういうことかというと、入会して会費を払ってくれるのはいいけど運営に口出しはしてほしくない…、申し込みが定員オーバーすると困るバス旅行等は新しい人たちにはあまり参加してほしくない…、といった態度が明らかで、100戸のマンションでも総会での議決権はマンション全体で1票と言われたり、バス旅行の案内がマンションには回ってこないことがある。防災訓練等人手が足りないときだけは参加要請があるが、震災が起こっても避難所にマンション住民はこないでほしいという。これじゃあ、町会に加入している意味がないから、毎年、管理組合で町会加入をやめるべきという話が出る。

でも、行政は、大震災時の情報提供や援助物資はすべて町会経由で行うというし独自の自治会を作ることをよしとしていない。それで、町会を抜けたマンションもあるのですが、不満を抱えながら常に議論になっているマンションもあるのです。で、コミュニティ形成の話になると、まず、この町会問題がネックになってなかなか進まないのです。

理事会の中でも、地域のマンション交流会でも、この町会問題に多くの時間がとられます。いくら話しても、相手があることなので、なかなか解決しない問題です。管理組合は法律で裏付けられている団体で、法律に基づいた適正な運営が求められます。一方、町会は自主的な地縁団体で、地域の神社のお祭りの主宰を中心とした強い結びつきのある町会等はその運営も独特です。古い慣習的なもの年功序列的なものも多く残っています。それに慣れている元々の住民と、マンションが建って新たに入ってきた住民の間には、簡単に超えられない壁があることも想像できます。

地元町会の関係者が何人かマンションに入居している場合は、その人たちが繋ぎになって、むしろ、町会の担い手が増えたとプラスにとらえられることもありますが、それがないと、まとまってど~んと入居した人たちは、自分たちの今までの平和を乱すのではないかと警戒される…それも何となくわかります。後から来た人間なんだから、控えめに、自分たちに従ってくれ…と思うのです。マンションを購入して組合員になった瞬間から、当然に権利を主張できる管理組合の感覚で、町会の運営方針に口出しされたり権利を主張されたら困ると構えるのです。

これって、「地方への移住でもあることのようです。一軒で移住したら、困っているところを近隣が助けてくれる、田舎の人は暖かくていいということばかりが宣伝されがちですが、それぞれの権利に関わる問題になるとよそ者には関係ないという態度で村の話し合いから外されて、ショックを受けるという話も聞きます。そんな村の共同体的感覚が都会の昔からある町会に見られるのも、ある意味当たり前かもしれません。

1マンションで1議決件にしてくれ…と言われて余りにも不公平だと思うのは当然ですが、町会側になってみると、突然できた1つのマンションが100議決権を持っているとなるとそれはかなり怖いことかもしれませんよ。だいたい、町会の総会は、ほぼ役員だけが集まって、その場の拍手で決まる程度のものです。欠席した人の委任状をとるようなこともありません。町会の総会に30人が集まって、その中の1人が100票持っていたら、すべてのことが覆さえてしまいます。それは確かに怖いよね…と、まず相手の気持ちを想像してみます。

 

長年近所に暮らし気心が知れた人たちにとって、何を考えているかわからない人たちの集団は、黒船襲来みたいなものかもしれません。歓迎しないような発言はこの怖さの表れだと思います。ここで、マンション側が運営の改善を求めると、相手は、よけい警戒感を持ちます。気心が知れないうちに強く主張すると、相手は心を閉じてしまうのです。こういう硬直した関係になったときは、結論を急がすに時を待つということも重要なのではないかと思いました。

対立を鮮明にしなければだんだん理解し合えることも増えてきます。古い体質は、いつかは変わっていかざるを得ません。強引に変えようとしなくても時がくれば世代交代です。感情的なしこりを残すようなことをしないで、薄くてもつながりながらうまく流す。いずれ、世代交代せざるを得ないときにマンション住民が、まとまって存在感があるコミュニティになっているように、自分のマンション内のつながりづくりを地道にすることです。

長年やってきたやり方を変えるのは難しいのです。長くやればやるほど、高齢になればなるほど難しいのです。町会の役員は、基本、保守的な方が多いのです。革新的な考えの人は、そもそも長年町会の役員をやっていないのです。新参者に強く言われて、自分たちが努力して守ってきたものが壊されるのはいやだという思いが強いのです。自分の居場所が奪われるようで嫌なんです。それが正しい、間違っていると争っても何も生まれません。そんなときは、目障りにならない程度にそっと新しい種をまきながらあまり深く考えないでいる。時期が来て、一斉に芽吹いたあとの様子をしっかり思い描きながら…。

昭和の価値観を引きずった平成はもうすぐ終わります。いろいろなことが大きく変わろうとしています。解決案がみつからない問題は、堂々巡りしていないで、ちょっと横において、自分たちの努力でできるコミュニティづくりに集中しましょう。人のつながりは一対一の関係の積み重ねです。組織の在り方に関係なく、いくらでも方法がありますから。

と、そんなことを思いました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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