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いじめ撲滅に本気で乗り出した文科省と、教育現場の呆れる本音

今までも幾度となく学校や文部科学省、教育委員会の「いじめに対する対応」について疑問を投げかけてきた無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』。今回は文科省で開催された「いじめ防止対策協議会」の内容を紹介するとともに、文科省の姿勢が良い方向へ変わりつつある現状を記しています。

いじめ認知件数と文科省

当団体にも取材がありましたし、マスコミにも大きくとりあげられましたので、ご存知の方も多いことと思いますが、10月25日に文部科学省から、平成29年度2017年4月~2018年3月のいじめ認知件数が公表されました。全国の小中高校等で認知された「いじめ」は41万4,378件で、前年度(32万3,143件)から9万1,235件増加し過去最多でした。

これは、「平成29年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によるもので、小学校が31万7,121件(7万9,865件増)、中学校が8万424件(9,115件増)、高校が1万4,789件(1,915件増)、特別支援学校が340件増の2,044件との結果が出ています。今回の増加には、小学校中でも低学年での認知が進んだことが大きな一因と見られます。

この発表に関連して、10月29日に文部科学省で開催された、「いじめ防止対策協議会」の傍聴に行ってまいりました。今回の議題は「いじめの重大事態に係る調査報告書の分析について」というものでした。

会議の冒頭、文部科学省の担当官から、前述の調査結果について説明がありました。いじめ認知件数が増加したことについては、「いじめの認知はいじめ解決のスタートラインに立つものであり、良い傾向である」と説明がなされ、加えて、認知が進んだ理由としては、「文科省がいじめを積極的に認知する学校を肯定的に評価することを通知した」ことを挙げていました。

この説明を聞いても、いじめに対する文科省としての姿勢が大きく変化していることがうかがえます。もはや、「いじめ認知件数が少ない教育委員会はよくやっている」という評価は過去のものになりつつあります。併せて、「いじめを隠蔽するような学校や教育委員会は論外なのだ」という姿勢が示されたと言えます。

ただ、この変革はまだまだ始まったばかりでもあります。現に今回の調査結果でも、いじめ認知件数は地域によって大きな差がみられました。児童生徒1,000人あたりの認知件数は、宮崎県が108.2人であるのに、最少の佐賀県は8.4人となっています。ちなみにも全国平均では30.9件となっており、前年度23.8件よりはやや増えたという程度です。全国の児童生徒数に宮崎県の認知件数の割合を掛け算すれば、約150万人の子供がいじめの被害にあったことになります。

今回から政令指定都市ごとのいじめ認知件数も公表され、新潟市では1,000人あたり258.3人との数字が出ています。これを全国に当てはめると、350万人を超える子がいじめられたことになります。

「4分の1以上の子供がいじめ被害にあっている驚くべき数字だ」と感じる方も多いことだと思いますが、「実態を反映しないいじめ認知件数では意味がない」と何年も訴え続けてきた私たちとしては、ようやくここまで来たかという気持ちです。新潟市の教育委員会は、よくここまで踏み込んだものだと称賛に値する姿勢だと思います。一方、全国の学校のうち、4分の1の学校が「いじめゼロ」と回答している現実が示すようにこの流れに逆らうような姿勢をまだ保ち続けている学校も少なくありません。

いじめ防止対策協議会を傍聴しての感じですが、委員の皆様も私たちと同意見の方が増えているように感じました。少し前にはこの「いじめ防止対策協議会」においても、「そんなことでは現場の教師が委縮する」、「教師は俺たちを信用できないのかと言っている」などの教師側の立場としての意見もかなり出ていたのですが、教師側、学校側を擁護するような意見はほとんど影を潜め被害者や保護者の立場に立った意見が数多く聞かれました

いじめ認知件数についても、「都道府県だけではなく、教育委員会ごとの認知件数の資料はあるのか。認知件数が少ない教育委員会には視察に行き、いじめを認知する場合の定義など徹底してはどうか」という意見もありましたし、「いじめゼロ」と回答している学校ついて「まだ、4分の1の学校がいじめを認知していないではないか」と批判的意見もありました。

いじめによる自殺者数についても

と、調査の不備が指摘されるなど、私たち保護者も納得できる意見が聞かれました。文科省の担当官からは、

等の回答がなされ、学校からの報告のみが調査の対象になっていることが不備の理由であり、文科省としても問題として認識しているとのニュアンスを含んでおりましたが、委員の中からも、「子供の死因の1位は自殺なんですよ」と子供の自殺についてもう一歩踏み込んだ調査を要求する声が上がっていました。

この日の議題である第三者委員会のいじめ調査報告書についても様々に意見が交わされました。その中でも、

との意見が印象的でした。教育現場にいる方の本音としては、教育委員会が設置した第三者委員会がいじめ等を認めた結果、被害者側から市町村等を相手に裁判を起こされるのは不当だということなのでしょう。しかし、いじめがあって重大事態にまでなってしまった以上、責任を負うべきことは当然です。市町村等が裁判で不利にならないように調査報告書を作成するとしたら、第三者委員会によるいじめの隠蔽にほかなりません。なお、この意見に対しては、他の委員から、「裁判に調査報告書が使われることを意識することは間違いと一蹴されていました

今回、いじめ防止対策協議会の傍聴を中心に述べてまいりましたように、文科省そして教育委員会の姿勢は変わりつつあります。教育委員会から、学校に対して「いじめがあったらごまかさないでちゃんと報告しなさい」という指示が出るようになってきています。それに比例して学校でのいじめ解決が早くなっています。ただ、まだまだ浸透しきれていない学校も多く、いじめに悩んでいる子供たちや保護者がいます。お子さんのことでご心配なことがありましたら、ご遠慮なくご相談ください。

いじめから子供を守ろう ネットワーク
井澤一明 松井妙子

image by: Shutterstock.com

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「いじめ」と学校の「いじめ隠ぺい」から、子供たちを救うための、父母によるネットワークです。いじめの実態やいじめ発見法、いじめ撃退法、学校との交渉法、いじめ相談などを掲載します。

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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