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志を忘れたエコノミックアニマル日本は、自ら中国の下請けになる

かつて日本人は貪欲な「エコノミックアニマル」と世界中で揶揄されていましたが、近年、この言葉自体をあまり耳にしなくなりました。我々はエコノミックアニマルから「脱却」したのでしょうか。AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さんは無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』の中で、中国の下請けを選択するかのような日本企業の姿勢などを挙げ、「落ちぶれたエコノミックアニマルだ」と厳しく批判しています。

日本人はやっぱりエコノミックアニマルなのか?

全世界のアメ通読者の皆様、山岡です。

エコノミックアニマルという言葉を覚えている方はいらっしゃいますでしょうか?若い世代だと知らない人もいるかも?

昭和40年(なんと、私が生まれた年)に、アジア‐アフリカ会議でパキスタンのブット外相が日本人の経済一本やりの姿勢を評して「日本人はエコノミックアニマルのようだ」と言ったのが始まりらしいです。もちろん、侮蔑表現ですね。

昭和40年代から50年代といえば、まさに戦後の経済復興期。戦争に敗れた日本人が、必死に働いて奇跡の経済成長を成し遂げた時代ですね。

今振り返れば、朝鮮戦争による特需で息を吹き返した日本が、戦後敗戦レジームの中で、「もう経済だけのことを考えて生きよう!」と決意してひた走った時代でした。

その結果「経済のことしか考えないエコノミックアニマル」と揶揄されながらも、とにかく元気は良かった。こんな資源もない小さな島国がアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国に上り詰めたのですから、驚くべきことです。

しかし、80年代終盤のバブルがはじけると、失われた20年、いや、30年に突入。今回は触れませんが、これって時を同じくして起こった世界的大変革に日本がついて行けなかったことが真の要因です。私はグローバル企業にいたので、日本の地位がどんどん下がるのを直に感じていました。

いずれにしても、すっかり影が薄くなった日本が「エコノミックアニマル」と呼ばれることはなくなりました。

でも、それって日本がもはや「エコノミックアニマル」ではなくなった、という意味でしょうか?

私自身、「エコノミックアニマル」なんて言葉は長らく忘れていました。でも、最近、急にこの言葉が脳裏に浮かぶ出来事がありました。

すでに番組(TSJ)で、私は先般の日中首脳会談は大失敗だったという考えを述べましたし、現在発売中の『月刊Will』1月特大号では福島香織さんとの対談で同様の趣旨を解説しています。

日本政府が中国政府と合意したスワップ再開について、外務省と日銀は「日本企業支援のため」と説明していますね。

なんで今、5年間不在だったスワップを再開して日本企業を支援する必要があるのでしょうか?

それは、日本企業が今から「中国企業と一緒になって一帯一路で金儲けしたい。でも、不安だから政府がバックアップしてね」ということですね。

一帯一路が世界中でとん挫しているから、日本がテイクオーバーしてやろう、というのではなくて、中国企業の下請けになって金を稼ごうと。決済は元だから、万が一元が底をついたら日銀から供給してもらうというわけです。

日銀は元の調達のために、中国の通貨当局に円を差し出しますから、実質的には米ドルを供給するのと同じです。最高3兆4,000億円といえば、やっと停止することになった40年間にわたる対中ODAに匹敵する金額です。

トランプ政権が「今潰さないとやられる」とダメージ覚悟で中国との貿易戦争を開始し、世界中で一帯一路の帝国主義的性格が明らかになって非難が沸き起こっている最中に日本がこんなことをするから、当然世界を驚かせました。

しかし、中西経団連会長以下500人あまりの経済人が安倍首相に同行して新たな商談を結ぶことに嬉々としていました。中華帝国の再興で日本が一番危ない位置にいることなど、まったく関知していないのが明らかでした。

そして今度は韓国

新日鉄住金に続いて三菱重工敗訴の知らせが流れたとき、経団連は韓国の経済団体である「全経連」とソウルで共同の講演会を開催していました。

講演会後、経団連の中西宏明会長は次のように述べました。

「政治とか文化交流が停滞すると、長い目で見ると経済にとっても良くない

「実際、どういう形でこれ(徴用工裁判)がフィードバックされるのかわからないし、ただ日本側から見ると、ちょっと驚く内容なので、何とか悪影響が出ないようにお願いするしかない

経団連に加盟している企業が高額の賠償金を不当に請求される事態に、いったい何を言っているのか、意味不明です。

「悪影響が出ないようにお願いするしかない」って、誰にお願いするのでしょうか?まるで他人事ですね。

この姿を見て、「歴代経団連会長でEメールを使えるのは中西会長が初めて」というニュースを思い出すと共に、相変わらず、国家観も歴史観も世界情勢の把握も無関係に目先の商売だけを考えているんだなあ、と痛感しました。

つまりは、元気がなくてもエコノミックアニマルだということです。それも随分と落ちぶれたものです。

そのエコノミックアニマルが政権に影響力を行使する結果、日本政府は十分な審議もせずに、外国人労働者の大量受け入れを進めようとしています。入国在留管理庁を発足させても、すでに何万人も行方不明の失踪者がいる現状ではとても追いつかないでしょう。結果として、サイレント・インベージョンを加速させることになります。

安全保障を忘れ世界情勢を理解せず、差し迫った危機を他人事のように傍観し、経済だけに専念すれば良いと考える戦後日本人の姿勢が、まさに日本を消滅の危機に追いやろうとしています。

もうとっくに経済だけで生きて行ける時代ではなくなったというのに。

アメ通読者の皆様は、たとえ今からでも、安全保障について真剣に考え、どうしたらこの国を子孫の代に残せるか、諦めずに模索して行きましょう。

山岡鉄秀:Twitter:https://twitter.com/jcn92977110

image by: Shutterstock.com

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【著者】 アメリカ通信 【発行周期】 週刊、不定期

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