高城剛が明かす、ファーウェイ問題とゴーン逮捕を結ぶ「点と線」

 

どうしてアメリカ政府は、テスラにこういう因縁を吹っ掛けたのかというと、自国の自動車産業が疲弊し、海外工場での生産を事実上やめさせているなかで、テスラが他国で最新鋭の工場を作ることは好ましいことではないし、電気自動車や自動運転テクノロジーの流出を防ぎたいというのもあります。当然ながら、この背景にはアメリカと中国の貿易戦争に見せかけた次世代の覇権争いがあるのは間違いありません。

米中貿易戦争は完全な覇権争いです。中国は今「中国製造2025」という産業育成戦略を推し進めていますが、これは2049年までに中国が世界一の製造大国になることを目標にしたもので、その第一ステージを2025年に置いて、そこでまずはアメリカや日本といった世界中の主な先進国と肩を並べようとしています。その一環で品川駅周辺企業の日本の技術者もずいぶん引き抜かれて、ファーウェイなどの中国企業に流れていました。

アメリカとしては、そんな中国の勢いを今のうちに止めておかないと、自動車産業だけじゃなく航空宇宙産業や情報産業においても、将来的には中国に負けてしまう。そこで表向きは「関税を掛ける」ということで、まずは対抗しているわけです。

……と、ここでカルロス・ゴーンの話に戻るんですが、彼を捕まえた東京地検特捜部、この組織のすべてではありませんが、アメリカ政府の意向を汲む人も少なくありません。アメリカの意向に沿わない政治家や実業家を次々逮捕するのは、そのためです。

当たり前ですが、あれほどの大物を捕まえるのに、日本政府もアメリカ政府も事前に知らないわけはない。ですから、日本もアメリカも捕まえることを了承していた……もっと穿った見方をすれば、ゴーンを捕まえることをアメリカが促したと考えてもおかしくありません。つまりは、日産の技術がフランスに流れ、さらにフランスから中国へと流れてしまうことを食い止め、アメリカの保護政策である自動車産業をこれ以上窮地に追い込まないようにしたいという、イーロン・マスク同様のアメリカ政府の思惑があったんじゃないかと、少し広いアングルでも考えたおいた方がいいでしょう。なぜなら、このようなことが、今後も続く可能性があるからです。事実上の米中戦争ですからね。

本文内

一方のファーウェイですが、この会社ってもともとは人民解放軍の通信部隊が作った会社なんです。で、逮捕されたCFOっていうのは、元人民解放軍だった創始者のお嬢さん。次期総裁と言われていた人物ですから、今のうちに芽をつぶしておこうっていう狙いは、間違いなくあったと思いますよ。以前、日本のシャープの液晶技術が独走していた時、シャープのエクゼクティブがアメリカに入国すると、逮捕される可能性があったため、渡米することができませんでした。その時、僕も仕事をしていたので、横で見ていましたが、そうして、シャープは少しづつアメリカ市場を追いやられ、窮地に立ちます。

日本政府は速攻「ファーウェイは使わない」って言いだしました……さすがアメリカの意向に誰も逆らいませんね(笑)。シャープさえ、守れませんでしたからね。でも欧州のいくつかの国では「問題ないから使う」と明言している国もあり、このあたりは明暗ハッキリ分かれました。たぶん欧州では徹底的に調べたうえで「問題ない」って言ってると思いますから、ハードウエアとしては、たぶん問題ないんですよ。でも、アメリカは「謎のチップが見つかった」とか色々言ってますが、詳細は言わないわけです。

なにしろ、違法に情報を収集しているのは、アメリカだけですから、これはスノーデンの一件で明らかになりました。「違法に情報を収集する利権」。これこそ、アメリカの力の源なんです。

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