「今年はどんな年?」への正答は、その年が過ぎなければもちろん分かる由もありませんが、2019年の世界情勢において、大きな流れを予想する一案もあるようです。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは今回、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、ここ10年の米中関係を軸とした世界情勢をまとめ、今年の鍵は「米中覇権戦争の新展開」との見方を示した上で、最適な日本の役割について考察しています。
2019年に起こること
2019年は、どんな年になるのでしょうか?そんなことは、わかりません。しかし、「大きな流れ」はある程度わかります。
米中関係を軸にまわる世界
これまでの流れを振り返ってみましょう。
- 08年、リーマンショックから世界的危機が起こり、アメリカ一極世界が崩壊
- 09年、米中二極時代スタート。しかしその関係は、「昇る中国、沈むアメリカ」
- 10年、尖閣中国漁船衝突事件。アメリカ弱体化で、中国が本性を現す
- 11年、東日本大震災
- 12年、尖閣国有化。中国が、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線戦略」を提案。全国民必読、完全証拠はこちら
● 反日統一共同戦線を呼びかける中国 - 13年、中国、日本孤立化に成功。総理の靖国参拝をきっかけに、世界的日本バッシングが起こる
- 14年、クリミア併合でロシアが孤立。これで、安倍政権は、救われた
- 15年、AIIB事件。アメリカの同盟国群が、ことごとく裏切り、中国主導AIIBに参加
- 16年、反中のトランプが大統領選で勝利
- 17年、トランプ就任するも、北朝鮮問題で反中にはなれず
- 18年、米中覇権戦争勃発
こんな感じになります。流れをみると、08年以降、米中二極時代がはじまった。その関係は、「昇る中国、沈むアメリカ」。実際、世界は08年以降、「米中を軸に」まわっていたのです。
しかし、オバマは1期目、「100年に一度の大不況」を克服するのに忙しかった。2期目は余裕がでてきた。ですが、「敵視する相手」は、
- 2013年、「右翼」安倍政権や、シリアアサド政権
- 2014年、クリミアを併合したプーチン・ロシアやIS
と中国以外の国にむいていた。2015年、AIIB事件で、オバマはついに目覚めます。ようやく、「アメリカの真の大敵は中国だ!」と悟った。そして、この年、オバマは反撃に出た。中国はみるみる追いつめられ、15年、16年、この国の経済は、ひどく悪かったのです(高橋洋一先生は、15年は-3%程度だったとおっしゃっています)。
2016年、反中のトランプが大統領になった。それで、「ついに米中覇権戦争がはじまるか!?」と思われた。しかし彼が大統領に就任した2017年、「米中覇権戦争」は起こりませんでした。理由は、北朝鮮が大暴れした年だったからです。
2018年、ついに米中戦争がはじまりました。ただの貿易戦争ではなく、覇権をかけた戦いです。
米中覇権戦争の形態
というわけで、「2019年に何が起こるか?」というのは、「米中覇権戦争で何が起こるか?」と同じ意味である。で、何が起こるの?「米中覇権戦争」とはいいますが、両国とも、相手を壊滅させるだけの核兵器を保有している。それで「戦闘」にはなりにくい。結局、
- 相手国を「悪魔化」させるための「情報戦」
- 相手国を「孤立化」させるための「外交戦」
- 相手国経済を破滅させるための「経済戦」
がビシバシと行われることになるでしょう。情報戦では、アメリカが圧倒的に有利です。なんといっても中国は、人権完全無視の一党独裁国家。チベットの民を大虐殺し、今もウイグル人100万人を強制収容している。アメリカは、「事実を大さわぎする」だけで、中国を「悪魔化」できます。
外交戦。これは、実に悩ましい。トランプさんは、かなり外交が下手です。それで、本来アメリカの「強い味方」であるはずの欧州が「反トランプ」で、中国、ロシアに接近するという情けない結果になっている。
経済戦争。これは、もうはじまっていますね。
日本の受ける恩恵と損失
米中覇権戦争時代、日本はどうなのでしょうか?「よいニュース」と「悪いニュース」があります。よいニュースは、「安全保障面」。こちらをみてください。
中国は、
- ロシア、韓国に「反日統一共同戦線をつくろう!」と提案した
- 中国は、「日本には、尖閣だけでなく、【沖縄】の領有権もない!!!」と宣言している
- 中国は、【アメリカ】も「反日統一共同戦線に入れるべき!」と主張している
そして、実際日本を破滅させるためのアクションをつづけてきた。ここでは詳述しませんが、超ディーテールを知りたい方は、こちらをご一読ください。
●『中国に勝つ日本の大戦略』北野幸伯 著/扶桑社
ところが、「反日で共闘するはず」のアメリカは、今や中国を「最大の敵」と定めた。これは、「安保面」で見れば、日本にとって「メデタイこと」に違いありません。わかりやすく書きます。
- 以前=中国は、アメリカと組んで日本をつぶそうとしてきた
- 今=アメリカは、中国をつぶそうとしている
アメリカは、「日本に沖縄の領有権はない!」と宣言している超反日国家中国を征伐しようとしている。どう考えても、日本の国益です。
しかし、「大きな副作用」も覚悟しなければなりません。米中覇権戦争の主戦場は、「経済戦争」である。アメリカは、中国経済を破壊しようとしている。実際に、中国経済が破壊されれば、当然日本経済も打撃を受けます。こんなご時世、日本では、消費税率が8%から10%に引き上げられようとしている。是非やめていただきたい
米中覇権戦争の副作用で、景気については悲観的にならざるを得ません。皆さん、去年から何度も警告していますが、今年も用心を怠らず、危機に備えましょう。
日本のリスク
さて、中国は12年、「日本を破滅させる」と決意し、熱心に取り組んできた。ところが、今はアメリカが「中国を叩きつぶす!」と決意している。中国は、あらゆる手段を使って、「アメリカ懐柔」を試みることでしょう。
一方で、アメリカ以外の国々にも接近し、「アメリカ孤立化」をはかるに違いありません。実際、強気すぎるトランプのおかげで、中ロ、中欧関係は良好なのです。
そして、中国のターゲットになるのが、「平和ボケ」「お人好し」「善良すぎる」日本です。日本には、「主体的な意志」が欠如している。相手が「嫌いだ!」というと、「まあまあ、仲良くしましょう!」となだめる。相手が「好きだ!」といえば、「私も好きです!」と応じる。
アメリカに追いつめられた中国が、ちゃっかり日本に接近してきた。日本の政治家は、「背景」「裏で起こっていること」を知らないので、大歓迎してしまう。別に、中国との関係をわざわざ悪化させる必要はありませんが、常に、「同盟国アメリカの方が中国より大事」ということを、「アメリカがわかるように」しておく必要がある。
日本はかつて、愚かにもナチスドイツを同盟国に選び、破滅しました。今回も、「米中戦争勃発と同時に中国に接近する」という、非常に愚かな動きをしています。日本の政治家は、なにも考えず、ただ「中国が関係改善を望んできたから」と思っていることでしょう。しかし、アメリカから見たら、「バリバリ狡猾な動き」にみえることを理解しておく必要があります。
安倍総理、2次大戦時の教訓を活かし、同じ過ちを繰り返さないよう、お願いします。
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