加工肉は「確実な発がん物質」の衝撃。医師が「加工肉税」を提唱

 

これらの食品に税をかけたらどうなるのかという試算では、経済的に適切な税率を用いました。これは、国民所得によって異なり、日本などの高所得国での税率は高くなります。平均でみると加工肉には25パーセントの税率が望ましいとされました。低所得国での税率は数パーセントでよいとされましたが、高所得国では100パーセント以上の税率がよいとされました。一方、赤肉への平均税率は4パーセントであり、低所得国での税率は1パーセント以下とされ、高所得国では20パーセント以上の税率がよいとされました。

では、その税効果はどう試算されるのでしょうか?これらの税制により、加工肉の消費は平均で16パーセント低下しますが、加工肉消費抑制の結果として、消費者が赤肉摂取に流れるために、赤肉の消費は課税にもかかわらずほぼ横ばい状態になると思われています。

加工肉税の健康への効果

さて、課税によって、加工肉のこのような消費低下は世界の人々の健康にどのような影響を与えるのでしようか。オックスフォード大の試算では、死亡者が9パーセント程度減るだろうと予測しています。実数では22万2千人です。主として、がんや動脈硬化による死亡が減るのです。そして医療費は平均で14パーセント減るだろうと予測しています。実数では410億米ドルです。このような恩恵は、低所得国より、日本のような高所得国で大きくなるだろうと試算されています。

日本人の死亡原因の1位はがん、2位は心臓病です。がんや動脈硬化症による死亡者が約10パーセントも減ることはとても大きな効果です。ところで、日本では来年から消費税が10パーセントに引き上げられることになっています。これに対していろいろな意見があると思います。税制は国民の健康も考慮すべきという観点からは、もっと工夫があってもよかったのではと感じます。

私が財務大臣であったなら(笑)、消費税増税は最後の手段とします。もともと消費税増税の理由は社会保障費中でも医療費の増大です。なので、健康増進につながる増税が理にかなうのです。まず、優先して行うべきは、タバコ増税、酒税増税、そして砂糖税の導入です。メキシコなどの国では砂糖税の効果が確認されています。

それでも医療費を賄うことができないということであれば、野菜と果物、無塩ナッツ、魚介類などの健康増進につながる食品には課税しませんが、世界に先駆けて、加工肉赤肉の課税を行います。今回政府は、外食を除く食料品は増税対象外としましたが、砂糖・加工肉・赤肉を含む食品には課税する、などのようなクールな健康メッセージを国民に伝えて欲しかったですね。

文献:Springmann, M. et al. Health-motivated taxes on red and processed meat: A modelling study on optimal tax levels and associated health impacts. PloS one 13 (11), e0204139, 2018

image by: Sergey Ryzhov, shutterstock.com

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