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今度は労働者に年5日の年休を確実に取得させる義務。対策法は?

今年の4月から労働者に対して年5日の年休を確実に取得させる義務を負うことになる企業サイド。その多くが導入を検討しているのが「有給休暇の計画的付与制度」というものなのですが、一体どのような制度で、運用に当たりどんな注意が必要なのでしょうか。そんな疑問に現役社労士の飯田弘和さんが、自身の無料メルマガ無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』で詳しく答えています。

御社でも、年休の計画的付与を検討されては如何ですか?

今年の4月から、使用者は、労働者に対して年5日の年休を確実に取得させる義務を負います。この新ルールの施行に伴って、最近、多くの企業が導入を検討しているのが、有給休暇の計画的付与制度です。これは、労使協定によって年休を与える時季に関する定めをしたときは、その定めにより年休を与えることができる制度です。この制度では、労働者の時季指定権や使用者の時季変更権が、共に行使できなくなります。

このような制度ですから、年休のうち5日については労働者が自由に使える時季指定できるように残しておかなければなりません。年休のうち5日を超える部分が、計画的付与の対象とできます。この5日というのは、前年度からの繰り越し分も含めた中で、5日間を自由に使えるように残しておけばよいことになっています。

年休の計画的付与の方法としては、以下の3つがあります。

  1. 事業所全体の休業による一斉付与方式
  2. 班別の交代制付与方式
  3. 年休付与計画表による個別付与方式

それぞれ、労使協定で定める事項は以下のようになります。

  1. については、具体的な年休付与日(一斉休業日)
  2. については、班別の具体的な年休付与日
  3. については、年休付与計画表を作成する時期や手続き等

ここで、年休の計画的付与について、いくつか注意すべき点をお伝えします。

事業所全体の休業による一斉付与の場合、年休がない従業員や少ない従業員の扱いが問題となります。このような従業員に対しては、特別の休暇を与えたり年休日数を増やすなどの配慮が必要です。もし、このような配慮がない場合には、休業手当の支払いが必要になります(平均賃金の60%の支払い)。

また、事業所によっては、いろいろな事情であらかじめ年休付与日を定めることが適当でない従業員もいると思います。そのような従業員については、労使協定を結ぶときに対象労働者から外すことも考える必要があるでしょう。

次に、退職予定者の扱いですが、付与日が退職日より後に計画されている場合には、計画的付与日より前の要は在職中の年休取得を請求してきても会社は拒否できません

なお、計画的付与として時間単位年休を与えることは認められませんので、この点も注意が必要です。

この計画的付与により、従業員が年5日以上の年休を取得した場合には、4月からの新ルールである「年5日の年休の確実な取得をクリアしたことになります。

ちなみに、年休の計画的付与に関する労使協定について、労基署への届け出は必要ありません。しかし、当然ですが従業員への周知は必要になります。

以上を踏まえて、改めてお聞きします。

「御社でも、年休の計画的付与を検討されては如何ですか?」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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