また、この「第三」では、台湾同胞には決して武力を行使しないが、台湾独立分子とそれに干渉する外部勢力に対しては武力放棄しないと書いています。逆に言えば、台湾独立分子とそれを煽る外部勢力に対しては、武力を行使するということなのです。
この「習5条」は、中国と台湾のあいだで共同の市場をつくり、プラットフォームや資源を共有するといった「あめ」をぶら下げる一方で、習近平は「中国人は中国人を攻撃しない」とも述べ、「一つの中国」を認めようとしない蔡英文政権や台湾独立派と一般台湾人の分断を図りました。
昨年11月末に行われた台湾の統一地方選挙で民進党が大敗しましたが、習近平はその結果と、来年行われる総統選挙を見据えて、台湾を揺さぶろうと狙ってきたわけです。
これに対して蔡英文総統は、「一国二制度」を台湾人は絶対に受け入れない、それが「台湾共識」だと述べ、中国が主張する「九二共識」(1992年に台湾の国民党と中国共産党が「一つの中国」で同意したという認識。当時総統だった李登輝、行政院大陸委員会委員だった蔡英文も、その存在を否定)を改めて拒否しました。
こうした台湾と中国のつばぜり合いがあっただけに、マクドナルドのCMも予想外の反響となってしまったのでしょう。台湾マクドナルドが台湾人向けにつくったCMですが、中国政府はネット民をつかっていちゃもんをつけてきたのだと思われます。
しかし、中国がいくら融和的な統一を謳ったところで、台湾を「中国の一部」と考えず、自分を「中国人」と認めない台湾人はすべて攻撃対象なのですから、「融和的統一」などあるはずがありません。
2016年の調査結果ですが、台湾人のうち73%、とくに若者においては85%が「自分は台湾人だ」と認識しており、「自分は中国人だ」と認識する台湾人は11%、「中国人であり台湾人でもある」は10%で、これらを合わせても2割程度しか中国人としての意識がないのです。
● 聯合報の民意調査 73%「私は台湾人」 「現状維持」を望むのは60%超え
そうなると、台湾人の8割は「自分は中国人ではない」と考えていることになり、習近平が「攻撃しない」としている中国人の範疇外ということになります。結局、中国が「平和的統一」を果たした後には、これら8割の台湾人は「非中国人」として粛清される可能性が高いわけです。