「保育園落ちた日本死ね」という匿名ブログが話題となってから2年以上が経過しましたが、いまだに育児休業の期間は「待機児童問題」等が原因で1年半や2年などに長引くこともあるといいます。企業としてもどうしても育休中の従業員の手を借りなければならない場合もあり、そんな状況から最近は「半育休」という言葉が生まれましたが、いったいどんなものなのでしょうか。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』で詳しく紹介されています。
半育休
働き方改革が加速化しているなかの人材不足、お客様は日々、いろんな工夫をされている。懸命な対策を考えて在宅勤務はどうか、外注としてお願いするのはどうかなど質問や相談をしていただいているが、なかには気づかない間に違法行為になってしまっている例もある。
近年、育児休業は、女性にはほぼ浸透されて来ている。男性の取得率は2.5%ほどと聞いていたが、男性の育休助成金の効果か、わずかだが最近は5%ほどには増えてきたようだ。育児休業の期間が1歳から、1歳半、2歳と長引くなか、どうしても育休中の従業員の手を借りないといけないことも有り得る。
そういった声から生まれたのが、「半育休」という言葉だ。半育休は、2014年の育児休業給付金制度改正によって可能となった。改正前は、1ヵ月に11日以上就業すると育児休業給付金を受け取ることができなかったが、改正後は1ヵ月の就業時間が80時間以下であれば育児休業給付金が支給されるようになった。
通常の育児休業と別に「半育休」という制度ができたわけではなく、勤務先に「半育休」と言う制度をつくれば良いというわけでもない。「半育休」とは、特に法制度の中に出てくるワードというわけでもない。「半育休」とは、いわば、造語であり、法律上の育児休業制度の活用の仕方という方が理解してもらいやすいかもしれない。
新米 「『半育休』っていう言葉があるんですね~」
大塚T 「あぁ、育休中に部分的に働くことね」
所長 「言葉が独り歩きしているようで、どう使う方が微妙だね」
E子 「そうですね。要はもともと制度上可能な『育休中に一部働く』ことを、『半育休』って呼んでるわけですよね」
新米 「でも、たんに1日のうち半分働くことを『半育休』って思ってる人もいるし、法律や雇用保険の育休給付金の仕組みをちゃんと理解して『半育休』といっている人もいるし…。どう言う意味で、『半育休』という言葉を使っているんですか?ってその人に確認する必要がありますよね」
大塚T 「まず、育児休業法上の育児休業を理解していること、そのうえで、育児休業が終わったと思われず、給付金もしっかりもらえるよう、雇用保険上の育児休業給付金制度を理解していること、それに社会保険上はどうなのかも確認しておく必要があるわね」
新米 「そうですよねー。あっちはOKでも、こっちはダメとなるケースもありますもんね。縦割りで決められるから、そこで、横断して把握できる社労士の登場ってわけですね」
所長 「厚生省と労働省が一緒になって、厚生労働省ができたときは、もうちょっといろんなことが横断的に検討されるかと思ったけど、国の考えることはまだまだバラバラだよなー。育児休業中の所得補償が必要…と言われていたら、雇用保険上の給付金制度ができ、社会保険料の免除制度もでき、重複してできたんだ。まー、手厚くなるのは従業員にとっては良いけどね」
大塚T 「まず、育休給付金の受給資格は、原則、育休を開始した日前2年間に被保険者期間が12ヵ月以上必要でしょ。育休開始日の前日から1ヵ月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日あれば1ヵ月とカウントできる」
E子 「育児休業給付の給付額は、登録された『休業開始時賃金日額』の67%、育休開始6ヵ月経過後は50%でしょ。途中で打ち切られたくはないわよねー」
大塚T 「月額15万円程度のお給料の人の給付金なら、最初は月10万円程度、半年経過後は月7,5万円程度月額20万円程度なら、最初は月13,4万円程度、半年経過後は月10万円程度って試算になります」
新米 「もらうかもらわないかってなると、当然ほしいですよね~。育休中に働いても、それを途切れさせることをなくすには、どうすればいいか?ってことですよね」
大塚T 「まず、その働き方が、臨時・一時的であって、就労後も育休が継続することが明らかであれば、職場復帰とはしないし、支給要件を満たせば支給対象にもなる。つまり、1支給単位期間内に、勤務日数が10日、10日を超える場合は、就労している時間が80時間 以下であればOK!」
新米 「在宅勤務やサテライト勤務もカウントすることですよね?」
E子 「もちろんね。在職中の事業所以外で就労した分も含まれるわ」
大塚T 「『半育休』という考え方の生みの親、子どもに関する問題に取り組むNPO法人フローレンスの駒崎弘樹氏は、自身の経験を踏まえ半育休の利点をこう挙げていますね。
- 育児休業給付金に加え、会社から給与が得られる。
- 同僚に対して業務内容の引き継ぎを完璧にする必要がない。
- 育児に充分な時間を割きつつ、育児休業から通常の労働へスムーズに復帰しやすい」
所長 「駒崎さんは、代表だから雇用保険の育休給付金は関係ないとして、3ヵ月半の育児休暇を取得した際、家や会社で執筆や編集などの業務に取り組む、『半育休』という働き方を選び、多くの時間を育児・家事に注いだため、出産後の妻の回復が早かったし、家族に笑顔が増えたなどのメリットを実感したというとおっしゃってるなぁ」
E子 「でも、これって、男性が育休について発言したから珍しがられているけど、女性は当たり前にやってきていることですよね。遅刻、早退してのやりくりの言い方が変わってきただけのような…」
所長 「確かにね。もっとも周囲の目線、時代が変わった、育休や育休中の短時間勤務や欠勤、遅刻・早退がしやすくなった、ってことはあるだろうけどな」
新米 「制度化されたら、遅刻・早退は、短時間勤務という読み替えになるんですものね」
大塚T 「話を戻すと、『月80時間以下』っていうのは、ハローワークが育休給付金の支給申請を判断する際のある月の要件にすぎないってこと。そして、いわゆる『半育休』であるかは、再度完全に育休に戻ることが予定されていること、育休中の就労も臨時であることが必要ってことね」
E子 「だから、『育休中の半休制度とか在宅勤務制度』なんて、制度を作った段階でアウト!ってわけですよね」
所長 「そうそう、そこは要注意だね。社会保険料の免除なんてもっとシビアだからね」
大塚T 「『半育休』を取得するなら、どう取得するかは、人事・総務(育休の担当の方)、同僚などとしっかりすり合わせて検討してほしいですね」
E子 「社労士への相談も忘れずに…やね」
新米 「半育休についてまとめると、こんな感じですか?
・育児休業を取得しながら、通常より短い時間働くこと
・月80時間までの勤務なら育休給付金も給付される
・勤務については、会社からの給与も支払われる
・あくまで臨時的位置づけ。制度をつくってはいけない
・男女ともに利用可能」
大塚T 「はい、よくまとめました!」
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