阿曽山大噴火が裁判所で見た、457人もの女性を被害者にした男

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裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』第25回!

法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!

罪名 迷惑防止条例違反

被告人 36歳無職の男性

起訴されたのは、去年の3月12日~6月24日の間、12回に渡り、池袋駅などで氏名不詳の女性12人のスカート内にスマートフォンを差し入れて下着を撮影した件。

よくある盗撮の事件と言えば、それまでなんだけど、12件まとめてですよ。しかも、大手証券会社の社員が路上で女子高生の体を触ったとして実名報道された事件なのに、起訴されたのはまったくの別内容というのも何があったんだと勘ぐりたくなるところ。

検察官も冒頭陳述によると、被告人は大学を卒業後に証券会社に就職し、実名報道された事件で逮捕される去年の6月28日に仕事を辞めたという。ちなみに、前科前歴はなく、今回がはじめての裁判。

被告人は以前から女性の下着に性的な興味があり、2016年の夏から盗撮をするようになってたという。

やり方は、手提げバッグの中にスマートフォンを入れ、チャックの隙間からレンズが出るように置き、動画モードにしたままで若い女性の多い街に行ってスカートの下に手提げバッグを差し入れるというもの。撮影した動画は自慰行為の際に視聴していたらしい。

ニュースになった事件で被告人が逮捕され、警察が被告人宅を家宅捜索したところ、スマホの中に盗撮動画が保存されていたので発覚したというのが事件の流れです。

ビックリしたのが、その動画の数です。どうやら被告人は、盗撮を開始した2016年夏からずーっと消さずに保存していたようで、スカート内の撮影してたのが合計132日。

被害女性は457

聞いたことのない数の多さです。

検察官としては、新しい12件だけを起訴しようとしたということでしょうか。

ちなみにニュースになった事件の方は、被害者と示談して起訴されなかったようです。

そして、被告人質問。

まずは、弁護人から。

弁護人

「犯行当時、どんな生活してましたか?」

被告人

「会社員として働いていたので、朝出勤して、夜、一人暮らしの部屋に帰ってくるという生活でした」

人定質問で無職と答えていたので、半年前の逮捕時はちゃんと働いていたというアピールでしょうかね。

弁護人

「家族や彼女に事件は伝えていますか?」

被告人

「報道されたので言ってます」

弁護人

「今、連絡は取れていますか?」

被告人

「母だけです。他は絶縁状態です」

彼女にも愛想つかされたようです。というか、初犯なのに家族とか情状証人が出てこないのはなぜかなぁと思ってたけど、そういう理由があったんですね。

弁護人

「病院行ってカウンセリング受けようと考えていますか?

被告人

「はい。仕事みつけて収入を得てからになりますが」

と、通院して治療すると約束していました。

次は、検察官からの質問。

検察官

「あなたのスマホに保存されていた動画は、1日1回で撮影終わっている日もあれば、1日に4回やってる日もありますよね!」

よく考えると、457人分の盗撮動画を見なきゃいけないってのも変な仕事だよなぁ。

検察官

「1日に何度もやるってのはどういう気持ちだったんですか?」

被告人

「ターゲットを探しながら歩いてて、撮影できそうな方がいらっしゃったらやるという感じだったので、気持ちと言われても……」

検察官

「それは抵抗なく続けられたと?」

被告人

「今まで見つかってなかったので」

2年間一度もバレてなかったから罪悪感を感じてなかったみたいです。

検察官

「さっき、家族とは絶縁状態であると。どんな状況なんです?」

被告人

「妹とは連絡つかずで、兄弟とは連絡取れなくなってます。一応、兄は母親と同居してるので間接的には……」

性犯罪だから妹は拒絶、兄とも母を介さないと話ができないほど。実名報道で大きく世間に報じられたというのもあるんだろうけど。

検察官

「では、母親とどんな話をしました?」

被告人

「仕事辞めてどう生きていくの?とか、私が死んだら兄弟と連絡取れなくて、相続どうするの?とか」

検察官

「は? あなたの今後について話してないの?」

被告人

「あ、カウンセリングとかの話は......」

検察官

「具体的にお兄さんが何をする、妹さんが何をするとかは?」

被告人

「見捨てられた状態なので......」

検察官

「じゃあ法廷にも来てない?」

被告人

「よく見てないですけど、裁判所まで一緒に来てはいないです」

と、言って、被告人は後ろを振り返るも親族はいない様子。

家族の助けが期待できないとなると、いち早くカウンセリングを受けてもらわないと困るわけです。犯罪に直結する性的興味の持ち主ですからね。

すると、

検察官

「仕事決まったら病院に行くと。就職活動はしてるんですか?」

被告人

「してます。面接まで行って、内定をいただきました」

事件を承知の上で内定を出してくれたそうな。

家族に見捨てられても、拾ってくれるところはあるんですよ。

何度だって立ち直れると思ったら───

被告人

「でも、辞退しました」

今、仕事選んでいる場合ではないのでは…。

最後は裁判官から、

裁判官

「調書見ると、盗撮をやりはじめたのが2016年の夏ごろだと。その前からやってみたいとか興味はあったんですか?」

被告人

「ありません」

裁判官

「なぜ、ここ2年でやるようになったんですか?」

被告人

「きっかけとしましては、無音カメラのアプリを知ったのがその頃なので」

裁判官

「簡単にやれそうだと」

被告人

「はい」

本来の用途は別のところにあるんだろうけど、盗撮を助長するようなアプリは規制できないもんかね。

スマホの機能として、真上を受けたときは撮影できないとか。普通の生活で真上を撮る機会なんてないでしょ。

この後、検察官が懲役10月を求刑して閉廷。そして、約2週間後の1月21日に判決が言い渡されました。

結果は、懲役10ヶ月執行猶予3年でした。

初犯ですから、執行猶予付きになりますわね。

もし、この裁判がフィクションだったとして。私は被告人の言葉に対して───

担当の検察官なら、こんな動画を見るために司法試験の勉強したわけじゃないのにって思うだろうな。

ま、1月9日と21日に実際に行われた裁判なのだが

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