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習近平は最も危険な敵。ソロスですら見限った中国のお先真っ暗

ウォーレン・バフェットやジム・ロジャーズと並び世界三大投資家と称されるジョージ・ソロス。彼はまた国際政治に深く関わっていることでも知られています。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、これまで中国を支持していたソロスが反中に転じた理由と、日本が最も避けるべき行動について記しています。

ソロスは、中国打倒を決意した

皆さん、ジョージ・ソロスのことをご存知でしょう。世界的に有名な投資家(バフェット、ジム・ロジャーズと並んで、「世界3大投資家」と呼ばれることがある)。その一方で、「国際政治に深く絡んでいる」ことでも知られています。彼は、「オープンソサエティ財団」(開かれた社会財団)の創設者。この財団は、世界に民主主義とか自由を普及している。いいことに思えますが、独裁国の支配層は、「革命を後押しする団体」として、この財団とソロスを恐れている。

ここまでで、「北野さんてやっぱり陰謀論者????」モードになっている新規読者さんも多いでしょう。一つ証拠をお見せしましょう。もう忘れていると思いますが、03年にジョージア旧グルジアで革命が起こった。この時、追放された大統領のシェワルナゼさんはなんといっていたか?03年12月1日の時事通信をごらんください。

グルジア政変の陰にソロス氏?=シェワルナゼ前大統領が主張

 

【モスクワ1日時事】グルジアのシェワルナゼ前大統領は、11月30日放映のロシア公共テレビの討論番組に参加し、グルジアの政変が米国の著名な投資家、ジョージ・ソロス氏によって仕組まれたと名指しで非難した。ソロス氏は、旧ソ連諸国各地に民主化支援の財団を設置、シェワルナゼ前政権に対しても批判を繰り返していた。

ソロスさんは、こんなことをしているのですね。そして、この方は、「予言者」としても知られています。過去の発言を振り返ってみると、ホントにすごい。たとえば、04年にアメリカの没落を予言しています。どういう話?

彼は、ブッシュのイラク戦争に大反対だったのです。彼は、イラク戦争がはじまった翌04年、『ブッシュへの宣戦布告』という本を出版しています。この本の中で、ソロスは、「アメリカの没落」を明確に予測していました。

先制軍事行動を唱えるブッシュ・ドクトリンを私は有害だと思っている。

アメリカの単独覇権というブッシュの夢は、達成不可能であるばかりか、アメリカがその伝統として唱えてきた理念と矛盾するものである。

アメリカは今日の世界で、他のどの国家も、またどの国家連合も、当分は対抗できそうもない支配的な地位を占めている。アメリカがその地位を失うとすれば、それは唯一、自らの誤りによってだろう。ところが、アメリカは今まさに、そうした誤りを犯しているのである。

どうですか、これ?「アメリカがその地位を失うとすれば、それは唯一、自らの誤りによってだろう」「アメリカは今まさに、そうした誤りを犯している」。つまりソロスは、「イラク戦争は誤りでそれによってアメリカは自らの地位=覇権国家の地位を失う」といっている。これは、まさに起こったことですね。では、なぜアメリカは、大きな間違いを犯してしまったのでしょうか?

それは、この国が、「確実なものが存在する」という間違った考えと強い使命感を持つ過激派グループに牛耳られているためだ。
(同上)

ソロスは、なんとブッシュ政権のことを、「過激派グループ」と呼んでいます。

親中だったソロス

この方、予言は当たりますが、「自由、民主主主義の原理にとても忠実」というわけではありません。ソロスさん、なんと独裁国家中国を支持していたのです。

彼は、06年に出版された本『世界秩序の崩壊~「自分さえよければ社会」への警鐘』の中で、アメリカと中国についての考えを明らかにしています。

ところが、ここに、皮肉にも愚かな事態が起きた。近隣の大国・中国が基本的に多極主義を受け入れ始めた矢先、アメリカ合衆国が正反対な方向へと動き、国際的な諸制度への疑念を強め、最近の国家安全保障面での難題に対して大幅に一極主義的な治療策を遂行したのである。日本は、この両国の板挟みになった。かたや最大のパトロンかつ保護国ながら、昨今益々世界の多くの国々との折り合いが悪くなってきたアメリカ。かたやその経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある中国。

ソロスによると06年当時のアメリカは、「昨今益々世界の多くの国々との折り合いが悪くなってきた」国である。一方、中国については、「経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある」国。06年時点のソロスの、「米中観」は明確です。つまり、彼は、「アメリカ=悪」「中国=善」と考えていた。

この評価は、2010年時点でも変わっていません。彼は2010年11月16日の『フォーリン・ポリシー』で、

アメリカから中国への、パワーと影響力の本当に驚くべき、急速な遷移があり、それはちょうど第二次世界大戦後の英国の衰退とアメリカへの覇権の移行に喩えられる。

今日、中国は活発な経済のみならず、実際に、アメリカよりもより機能的な政府を持っている」という議論を呼ぶであろう。

と語りました。つまり、彼は当時、「イギリスからアメリカに覇権が移ったように、今は、アメリカから中国に覇権が移動している」と考えていた。さらに、中国はアメリカよりも機能的な政府を持っている」と。

本当に驚きです。というのは、ソロスは、「オープン・ソサイエティ」、つまり「開かれた社会」をつくりたいのでしょう?だから、彼の財団は、世界各地で独裁国の民主化勢力を支援している。ところが、共産党の一党独裁国家、基本的人権の存在しない、「開かれていない社会である中国だけは完全に例外扱い。それどころか、大絶賛している。

ソロス、中国打倒を決意する

2010年時点、ソロスは、「中国をアメリカの次の覇権国家にしてしまおう」と考えていた。しかし、その考えは徐々に変わっていきました。理由は、2012年に誕生した習近平政権が独裁化をすすめている。それで、中国はソロスをはじめとする国際金融資本のいうことを聞かなくなったのでしょう。

2016年1月、彼は中国に関する爆弾発言で、世界を仰天させました。

ソロス氏:中国のハードランディングは不可避、株投資は時期尚早(2)

Bloomberg 2016年1月22日(金)9時54分配信

 

(ブルームバーグ):著名投資家ジョージ・ソロス氏は21日、中国経済がハードランディングに直面しており、こうした状況は世界的なデフレ圧力の一因になるだろうと述べた。同氏はまた、中国情勢を考慮して、自分は米株の下落を見込んだ取引をしていると説明した。ソロス氏はスイス・ダボスでのブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「ハードランディングは事実上不可避だ」と指摘。「私は予想しているのではなく、実際に目にしている」と語った。

以前にも書いたことがあります。アメリカの対中国観は2015年3月のAIIB事件で決定的に変わりました。「中国こそが、アメリカ最大の脅威だ!」と認識されるようになった。これはソロスも同じで、以後反中の姿勢がはっきりしてきた。それと共に、中国の経済成長は、著しく鈍化するようになった。

ところが、2017年ソロスは、中国に優しくなりました。なぜ?ソロスは、「アメリカ・ファーストのトランプが大嫌いなのです。それで、「習近平の方が、トランプよりマシ」と思った。そのせいか、中国経済、2017年には回復しました。

しかし、今、ソロスは「中国打倒」を決意したようです。BUSSINESS INSIDER JAPAN 1月28日を見てみましょう。

世界経済フォーラムの年次会合(ダボス会議)で、ビリオネアの投資家、ジョージ・ソロス氏がスピーチを行った。1月24日の夜(現地時間)に行われたこのスピーチは、ソロス氏が中国に対して間違いなく批判的であることを示した。

 

「今夜、わたしはこの時間を、開かれた社会の存続を脅かすこれまでにない危険について、世界に警告するために使いたいと思う」

中国=「開かれた社会の存続を脅かすこれまでにない危険」だそうです。9年前まで、「中国がアメリカにかわる覇権国家になるよね~~」と絶賛していた人が、えらいかわりようです。

こう切り出したソロス氏は、言葉を続けた。

 

「抑圧的な政府の手によって機械学習や人工知能といった統制の手段がもたらし得る、開かれた社会が直面する致命的な危険に注意を呼び掛けたい。絶大な権力を維持するため、習近平が一党支配する中国にわたしは注目し続ける」

 

ソロス氏の反中国の議論の中心は、個人情報を一元管理するデータベース「社会信用システム」のコンセプトだ。
(同上)

ソロスが恐れているのは、AIなどの最新技術が中国で独裁強化のために使われることである。わかります。ロシアでもしばしば、「中国の監視システム、管理システムはすごい!」とテレビで報じられています。

「わたしが言いたいのは、抑圧的な政権とITの独占企業が組み合わさることで、こうした政権に開かれた社会をしのぐアドバンテージを与えることになるということだ」

 

ソロス氏は言う。

 

「独裁政権にとって、統制の手段は有用なツールだ。だが、こうした手段は致命的な脅威を突き付ける」
(同上)

独裁政権がITの独占企業(たとえばGAFA)と協力することで、「開かれた社会」(=自由民主主義社会より強くなってしまう可能性がある。そして、ソロスは、「決定的発言」をします。

「中国は、世界で唯一の独裁政権ではない。だが間違いなく、最も経済的に豊かで、最も強く、機械学習や人工知能が最も発展した国だ。これが開かれた社会というコンセプトを信じる人々にとって、習近平を最も危険な敵にしている」
(同上)

習近平は最も危険な敵」だそうです。

私たちが忘れてはいけないこと。それは、ソロスさんは、「ただの個人ではない」ということ。彼は、「国際金融資本全体の考えを代弁している。つまり、国際金融資本が、「習近平はもっとも危険な敵と認定した。

ソロス、大戦略を語る

では、ソロスは、「アメリカはどう動くべきだと考えているのでしょうか?

アメリカのトランプ大統領が中国との貿易戦争の乗り出したとき、ソロス氏は満足していた。手遅れになる前に中国には戦いを挑まれる必要があり、トランプ大統領は正しい方向に一歩進んだと受け止めたからだ。しかし、ソロス氏は大統領のその後の行動に失望したという。もっと強硬な姿勢を取るべきだったのに、自身の政治的な欲望がトランプ大統領を譲歩により応じやすくしたと同氏は述べた。
(同上)

意外ですね。私たちは、「トランプさんかなり過激」と思っていますが、ソロスさんは、「まだまだ生ぬるい!!!もっとガンガン叩け!」と主張している。

では、アメリカは、どう動くべきなのでしょうか?

では、アメリカはどう強硬手段を取り、習国家主席が進めるこの閉ざされた社会のひどい計画の実現を阻止できるのだろうか?ソロス氏は自身のアイデアを示した。
(同上)

ソロスさんは、「大戦略」を語ります。

まず第一に、ソロス氏は目下の貿易戦争を対中国のみにしぼるべきだと言う。今はいろいろな国を公平にターゲットとしているように見えるが、ソロス氏は、トランプ大統領は他の国については全て忘れるべきだと主張する。
(同上)

中国のみにしぼれ!

嗚呼、戦略的言葉。

昔からの読者さんは、「RPEと同じことをいっているな」と気づかれたことでしょう。RPEでは、「トランプさんは戦略的な人物ではない」と書きつづけてきました。なぜ?彼は、中国と覇権戦争を開始した。その一方で、味方である欧州を「NATO問題」などでいじめた。結果、欧州は、ロシア、中国側に接近している。

イラン合意から離脱したことで、イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシア、イランを一体化させてしまった。ロシアとは「ロシアゲート」で和解できず、最重要の同盟国日本とも「貿易戦争開始」をネタに脅迫する。とにかく彼が動くたび敵が増えていく

本来なら、アメリカは全世界を味方につけ、中国を叩きつぶさなければならない。ソロスさんも、同じように、トランプさんの戦略のなさを嘆いています

第二に、知的財産の盗用などで最近非難を浴びている中国企業のZTEやファーウェイには、アメリカは断固とした対応を取るべきだとソロス氏は言う。同氏はアメリカ政府に、これらの企業を厳しく取り締まってほしいと考えている。
(同上)

これって、安保の話ではありますが。その一方で、「中国をハイテク市場から追放してしまえ」それで「中国経済を破壊してしまえ」ということですね。

ソロス発言からわかること

ソロスは、「アメリカ一極主義者」のブッシュ(子)が嫌いでした。そして、「アメリカファースト」のトランプも嫌いだった。彼は、「多極主義者グローバリスト中国支持者」だった。習近平が国家主席になる前、国際金融資本と中国支配層の関係は良好だった。

しかし、習近平は、国際金融資本のいうことを聞かなくなってきた。2018年、トランプが大嫌いだったソロスも、「中国を打倒せよ!」と主張します。このことは、アメリカでは、トランプのような「民族主義者」も、ソロスのような「グローバリスト」も、「一つになって中国と戦おう!という機運になっていることを示しています。

こんな情勢下で日本政府は、「中国との関係改善をしっかりやっていく」などといっている。「80年前、日本はナチスドイツの同盟国になって負けました。今、日本は中国共産党に接近してまた負けました」とならないよう、安倍総理には覚醒していただく必要があります。間違った道に進んで、日本を滅ぼさないでください。お願いします。

image by: Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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