TVのワイドショーが築地や相撲問題ばかり取り上げた残念な理由

 

…答えは、プロデューサーがガッキーこと主役の新垣結衣さんのことを大好きだったからなんです。ただそれだけの理由です。

他のTBSのガッキーのドラマも、そのプロデューサーが制作しているのですが、彼はガッキーが可愛くなるようなドラマをいつも制作します。ヒットするのは当然なのです。なぜならかわいく撮れるまで何テイクも撮影します。おもしろくなるまで脚本を練りますし、演出を頑張りますし、宣伝も、広報活動も、照明スタッフも美術スタッフもまさにいろんなスタッフを巻き込んで、真剣に頑張るのです。

先に述べたヒットの要因というのは、それは分析としては事後的には正しいとしても、結果に対するすべてが後付けなだけです。なぜなら、そんな要因を加味して分析したドラマを作ったとしても、ヒットするのはなかなか無いからなのです。実際は、そんないちプロデューサーの熱い想いが、数々の施策を実現させ、いろんな人が頑張り、そしてその熱い思いが、やがて渦となって、ヒットを生むのです。

期首に放送する特番の『オールスター感謝祭』にガッキーが番宣で出演した際、そのプロデューサーがサブ(副調整室:放送の際に、音声や映像を調整するための操作室)にやってきて「ガッキーの映る量が少ないよ」とディレクターに文句を言い、挙げ句の果てに「はい、4カメ、ガッキー写して、今可愛い」と勝手にディレクションしだしたことがあります。それくらい彼はガッキーのことが好きなのです。 この想いのおかげで“逃げ恥”は大成功したのです。「ガッキーを出すと視聴率が上がるから、ガッキーを出す」そういうことではなく、「ガッキーが好きだから」→「ガッキーの魅力を伝えたいから」→「だからガッキーに素晴らしいドラマに出演してらおう」そういう気持ちこそが他のスタッフのやる気をも、引っ張るんです。結局は、その作品がよくも悪くもなるも、その作り手の気概とやる気にかかっているのです。

人の命を左右する仕事をしている人を私はとても尊敬します。弁護士でも医者でも、警察官でも自衛隊員でも、報道もそうです。私にはそんな度胸がないので、人の命に係わる現場でコミットする気概がないのかもしれません。 …なので人の命に関わらずに、何かをおもしろく伝えるエンタテインメントがしたい。それが長年のライフワークになっています。

『金スマ』という番組で、ある末期癌の女性アナウンサーを取材したことがあって、その女性が亡くなる二日前にインタビューをしました。きれいにメイクをしてもらった状態で、「これから先、こういうことをしたい」ということを話していただきました。 だけどその後、様態が急変してしまい、苦しみながら亡くなられたのです。でも私たちは亡くなる直前の苦しんでいる映像は流しませんでした。そして亡くなる二日前の、美しい笑顔のインタビュー映像を“最期の映像”として流しました。「やらせだ!」と言われる行為かもしれないですが、真実よりも美しく終わらせたかったのです。

エンタメには、その人の尊厳を奪ってまで醜いものを放送する権利はないと思います。これが報道とエンタメとの違いなんだと私は考えています。

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