あの日銀ですら危機感を抱く、アベノミクス「統計偽装」の大暴走

 

また、同ワーキンググループの会合で、経済財政諮問会議の事務局である内閣府により正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」なるものが設けられていることが明らかにされた。

総務省が担当してきた統計の議論を、内閣府でもやっていることについて、当然のことながら出席メンバーから次のような意見が出た。

内閣府資料をみると、統計委員会で議論するようなことが議題になっており、二重の構造になっているのではないか。どこが責任を持って議論するかはっきりしない。

首相を議長とする経済財政諮問会議(内閣府)の政治的な権力が中立であるべき統計の分野に介入してきたことを危惧する声だと筆者は受けとめる。

厚労省はこの会合から約1か月後の2016年10月27日、毎月勤労統計調査にローテーションサンプリングを導入する変更を統計委員会に申請し、承認された。

その変更内容は以下の通りだった。

従来、調査対象事業所のうち30人以上の事業所は、2~3年ごとに、新たに無作為抽出した事業所に総入れ替えを実施していたが、平成30年からは毎年1月分調査で一部を入れ替える方式に変更。平成30年と31年の1月分は経過措置で2分の1を入れ替え、平成32年1月分からは、1年ごとに3分の1ずつ入れ替える。

この結果、平成30(2018)年1月からは、2分の1のサンプル入れ替えと、これまで全数調査すべきところをやってこなかった東京都の「復元」、すなわち全数調査に近づける3倍補正を実施したことが重なって、前年比の平均賃金変化率が異常に上昇しはじめた。

総入れ替えした平成19年、21年、24年、27年の1月は新旧比がいずれもマイナスだったが、平成30年に限っては0.8%(2,086円)も上振れした。最も顕著だったのは6月で、3.3%もの伸びを示し信用性を疑う声が専門家の間から上がり始めた。

さすがに日銀もこらえきれない。昨年7月の展望リポートでは毎月勤労統計に関して方法変更の影響を除いた数字を採用し、10月には内閣府の統計担当者にクレームをつけた。昨年11月13日の日経新聞にこう書かれている。

日本の現状を映す統計を巡り、内閣府と日銀が綱引きしている。国内総生産(GDP)など基幹統計の信頼性に日銀が不信を募らせ、独自に算出しようと元データの提供を迫っているのだ。…「基礎データの提供を求めます」。10月11日、政府統計の改善策などを話し合う統計委員会の下部会合で、日銀の関根敏隆調査統計局長は内閣府の統計担当者に迫った。…だが、内閣府は「業務負担が大きい」などと反論。要請に応じて一部データを提供したものの決着はついていない。日銀の不信には一定の根拠がある。例えば厚生労働省が毎月まとめる賃金に関する統計。今年1月に統計手法を変えたところ前年同月比の伸び率が跳ね上がった。

政権の道具と化したかに見える日銀でさえ、基幹統計をないがしろにする安倍政権の暴走に危機感を抱いているのだ。

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