あの日銀ですら危機感を抱く、アベノミクス「統計偽装」の大暴走

 

こうした政権トップらの動きのなかで、活動を中止したのが厚労省の「毎月勤労統計の改善に関する検討会」だ。

2015年6月3日の第1回会合で、姉崎・統計情報部長は検討会設置のいきさつをこう語っていた。

アベノミクスの成果ということで、賃金の動きが注目され、毎月勤労統計調査でとっている賃金、特に実質賃金の動きが注目を浴びている。毎月勤労統計調査は2、3年置きに調査対象事業所の入れ替えをするが、旧サンプルと新サンプルの間でズレが生じるため、いろいろな御意見を各方面からいただいている。改善できるところは改善していくということで考えている。

この統計は、500人以上の事業所について全数調査をし、それ以下の事業所は23年ごとに総入れ替えをするルールでこの70年間行われてきた。

しかし、総入れ替えをすると、廃業・倒産寸前の企業も入ってくるため、賃金の数値が下がるのがこれまでの傾向だった。脱落せずに残ってきた企業で構成される旧サンプルのほうが高いことが多い。

この検討会では、従来の総入れ替え方式でよいのか、それとも毎年少しずつ入れ替えるローテーションサンプリングが望ましいのかが、議論の中心になった。

検討会は2015年6月3日から同年9月16日まで6回にわたり開催された。なぜか、4、5、6回分の議事録は公開されていないが、9月16日の6回目に中間的整理案がまとめられている。

その概略はこうだ。「サンプルを一定期間固定することに伴うバイアスは、ある程度存在するとしても、賃金分析の判断に影響を与えているとまでは考えにくい。部分入れ替え方式に移行してもギャップの補正が必要になるのであれば、採用する合理性は低い」。つまり、ローテーションサンプリング部分入れ替え方式の採用には慎重な姿勢だった。

ところが、検討会の議論は、先述したように同年10月16日の麻生発言で白紙に戻されたらしく、その後、会合が途絶えてしまった。

新たに設置されたのが「統計の精度向上及び推計方法改善ワーキンググループ」だ。翌2016年9月30日に総務省で第1回会合が開かれた。

そのさい、総務省統計委員会は「平成27年10月、経済財政諮問会議において、麻生議員がGDP推計のもととなる基礎統計(毎月勤労統計を含む)の充実に努める必要性を指摘」などと記された文書を配布した。麻生大臣の発言を受けて統計の見直しの必要性に迫られた状況がうかがえる内容だ。

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