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日独連携に期待と不安。日本の「サイバー能力」は向上したのか?

2月4日、安倍総理はドイツのメルケル首相と会談し、機密情報の交換を可能にする「情報保護協定」を締結することで大筋合意に到ったと報道されました。これに関し「期待と不安がない交ぜ」と語るのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さんです。かつて国の委託を受け調査したアメリカのサイバーセキュリティ能力との比較で、20年の後れを感じた日本のサイバー能力への懐疑が、その背景にあるようです。

買いかぶられた?日本のサイバー能力

ドイツのメルケル首相が来日し、日独両国の情報保護の取り組みが密接になるようです。

「安倍首相は来日しているドイツのメルケル首相と会談し、両国の間で機密情報の交換を可能にする「情報保護協定」を締結することで大筋合意した。(中略)
 
情報保護協定の締結によって、日本とドイツは軍事機密やテロ情報などの機密情報のやりとりがこれまで以上に容易になる。
 
メルケル首相も、『サイバーセキュリティの協力において役立つ』と成果を強調した」(2月4日付日本テレビNEWS24)

政府はフランスとも同様な協定を結び、米国を中心とする英語圏5カ国(米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)による「ファイブアイズ」の情報活動に伍していく方針のようです。

このニュースを聞いて、期待と不安がない交ぜになった気分を味わっています。期待とは、先進国の中で日本だけが著しく立ち後れていたサイバーセキュリティの分野について、ドイツが同レベルに達したと認めてくれた結果だと受け止めることも可能だからです。

しかし、不安もあります。ドイツが、「日本のような技術大国なら、自分たちと同レベルに達していてもおかしくない」と思い込んで協定を結んだ可能性です。もしそうだとすれば、日本がセキュリティホールになってドイツ、フランスに甚大な被害が及ぶことすら考えられます。

2003年初夏、私は総務省の委託で米国のネットワーク・セキュリティの調査を行い、日本との間に20年もの開きがあることを明らかにしました。技術的には2~3年の後れなのですが、日本はある段階に達するとそこに安住してしまう傾向があり、その間に1年の後れが7年にも相当する「ドッグイヤー」の世界が日進月歩を遂げ、20年の差とみなされるというわけです。

このとき、米国側は核兵器の研究開発の中心であるサンディア研究所(ニューメキシコ州アルバカーキ)で行われている重要インフラ防護の取り組みについても、私の聞き取り調査を認めました。この研究所に入ったのは、日本人では私が初めてとのことでした。

米国側がそこまでサービスしたのは、日本のサイバーセキュリティのレベルが低すぎて、米国を狙う敵は必ず米国とつながっている日本から侵入してくる、つまり日本はセキュリティホールになっているから、早く水準を高めて欲しいというのが理由でした。

それから15年以上を経過して、日本のサイバーセキュリティのレベルが飛躍的に向上したとは思えないところが散見されるのですが、ドイツは、そしてフランスは、それを理解しているかどうか疑問です。米国は、ドイツとフランスの情報を収集するとき、やはり日本から入ろうと考えているかもしれない、などと思ってしまった次第です。

願わくは、ドイツ、フランスとの連携にあって、立ち後れている日本のサイバーセキュリティのレベルが嫌でも向上してほしいものです。それが日本の安全を確かなものにすることにつながる。そう願いたものです。(小川和久)

image by: CYBERTHREAT REAL-TIME MAP

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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