大罪は構造改革サボり。安倍政権を感情論、印象論抜きで評価する

 

安倍政権、特に第2次については、次のような認識をするのがいいのではないかと思います。

まず1つ目は、極めて国際協調型の政権であり、多角的な外交という点でまずまずの成果を挙げていると言って良いと思います。TPP11にしても、日欧FTAにしても立派です。

2つ目は、アメリカの無理難題や迷走を、世界の同盟国の中で一番上手に「さばいて」いる政権だということです。オバマとの相互献花外交、トランプとの「付かず離れず」外交、どちらも現時点では十分に評価が可能です。F35と地上イージスはもっと値切るべきでしたが。

3つ目は、保守イメージを逆手に取って、日本国内の保守世論を「黙らせる」効果を発揮した政権ということです。元号の前倒し発表、日韓合意(結果はダメになりつつあるにしても)、外国人労働者導入など、左派政権がやれば右派が黙っていないような問題を、黙らせながら実行しているのは、評価に値します。

4つ目は、極めてハト派の経済政策を進めた結果、景気の大破綻を回避できた政権ということです。アベノミクスについて、特に第一の矢については、少なくとも失政ではないと思います。同時に消費税率アップに関する基本的な慎重姿勢も評価せざるを得ません。

5つ目は、これは悪い点ですが、徹底的に構造改革をサボっている政権、むしろ構造改革を先送りにしている政権と言えます。これは大罪ですし、総理ご本人に改革イメージがないということも含めて、最大の問題点だと思います。

6つ目は、何でも取り込んでしまって政策論争を無効にしてしまう。いわば、イオンの巨大モールのような政権ということです。実行可能なゾーンで勝負しているということでしょうが、結果的に対立軸が消滅して、政権選択の機会を有権者から奪っているとも言えるからです。

7つ目は、後継のイメージがしにくいという大問題を抱えた政権だということです。佐藤政権末期は、それでも三角大福という大物政治家が必死になって戦っていましたが、現在は「国を背負う決意」を見せている後継候補がいないわけです。これは大変な問題で、安倍チルドレンはいても、安倍学校にはならなかった訳で、これは歴史的には厳しい点がつきそうです。

8つ目は、歴史に残す「レガシー(遺産)」探しに困っている政権ということです。憲法改正や日ロ平和条約など、大きな成果を「花道に」という意識が強すぎて、下手をすると政権の出口が不恰好になってしまう危険も感じます。

ということで、全体的には4勝4敗で五分というのが現在の安倍政権への評価だと思います。詳しい論評は、また次号以降で続けて参りたいと存じます。

image by:Alexandros Michailidis, shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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