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【書評】妻に追い出された時くらいには使える自衛隊ライフハック

近年、想定外の被害をもたらす自然災害に頻繁に襲われる日本列島。そんな国に住む我々は、常に被災した際に取るべき正しい行動について頭に入れておく必要があります。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんがレビューしているのは、危機管理のプロフェッショナルである自衛隊が解説する、災害時に役立つノウハウを集めたもの。果たしてどのようなテクニックが紹介されているのでしょうか。

偏屈BOOK案内:『自衛隊防災BOOK』

自衛隊防災BOOK
自衛隊/防衛省 協力・マガジンハウス

マンションの自主的・防災委員をもう何年もやっている。輪番制の理事を1年やった人は、次の年は防災委員をやることになったのは数年前だ。わたしはそのずっと前から、勝手にひとり専任となり「震災対応マニュアル」を作り続けてきた。一昨年からは「震災・火災・水災対応マニュアル」と大冊になった。

今年は内容の半分ぐらいを新情報と入れ替えた。編集するのはわたし一人で、制作は管理会社の担当にお任せだ。たぶん社内のデザイナーがやっているのだろう。カラーコピーで24ページという、けっこう見ばえのいい冊子だ。今回、参考にしたのは『自衛隊防災BOOK』だ。自衛隊、防衛省、博報堂が協力している。楽しく読んだが、マンションの防災にはほとんど関係がなかった。

マンションは建物が丈夫だから、かなりの震度の地震でも耐えられる、と希望的観測をしていて、とにかく避難所行きは前提になく、長期間をマンションの自室で堪え忍ぶつもりのお気楽な住民が多い。だが現実には、水や食料の備蓄もしていないようだ。水がない、あっても流せない「トイレ問題について深刻に考えていない人が多い。上の階に行くほど地獄を見ることになるというのに。

この本は、危機管理のプロ・自衛隊が災害や日常生活に役立つ100のノウハウを解説する。災害に備えて自衛官が日頃から心がけていること、地震発生時にまず最初にすべきこと、身近なものを使ってピンチを切り抜ける方法、海・山・川で遭難したときに助かる方法、災害時・日常生活に役立つライフハック(いかに作業を簡便かつ効率良く行うかを主眼としたテクニック群)などをまとめている。

シャツを、ズボンを、ペットボトルを浮き輪代わりにする方法とか、海で沖に流された際の対処法とか、上空から見つけてもらいやすくする方法とか、たぶん今後一生出会わない事態のことを熱心に読んだ。危機管理のプロが教える、と銘打ったわりにはショボいというか、小さな雑学っぽい内容が多い。ライフハックが中心で、わざわざ「自衛官が~」というほどでもないような気がする。

わたしがコレは役に立つかも、と思ったのが「ブルーシートと新聞紙を寝袋にする方法」だ。ブルーシートを納豆の藁容器のような形にし、両端をまとめてガムテープで巻き付ける。その中に新聞紙を敷き詰めれば即席の寝袋になる。中に入り顔だけ出して使う。妻から家を追い出されたときに使えるテクニックだが、実用化したくはない。

開きにくい壜のフタを開ける方法とか、缶切りなしで缶詰を開ける方法とか、はさみの切れ味を良くする方法とか、迷彩服着てやるには低レベルな物件が少なくない。本当に役立つと思ったのは、「ストップウォッチなしで正確な時間を計る方法数字の前に100をつけるとよい。101、102、103……110までだな。確かに秒間隔がズレにくい。これは面白い。しかし、そんなテクニックを使うときがあるのか。

ホンモノの自衛官が出演しているのに、内容は「ちょっとしたアイデア」みたいなものが多いし、防災に特化したわけでもないし、中途半端でしまらない本だ。「本書を読んで防災意識を高めてみませんか?」なんて言われてもなあ。そもそも、ライフハックがコンセプトでは、まともな防災本ができるわけないだろう。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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