出すものを出せ。北方2島返還を焦る日本を弄ぶ強かなプーチン

 

ただこの条約に千島列島の範囲は明示されず、帰属を巡って長く日ソ交渉が続いていた。米ソ冷戦が始まり、北方領土が軍事的にも重要になったからだ。ただ56年10月に日ソ共同宣言に署名。戦争状態を解消し国交を回復した際には「日ソ平和条約締結後に歯舞色丹を日本に引き渡すと明記。さらにソ連崩壊後の93年の東京宣言で四島名を列挙し返還交渉の対象にすることを合意した。しかし安全保障上の問題や北方領土にロシア人が居ついたこと、漁業権や四島の主権のあり方などで解決のつかぬまま今日に至っている。

日本はかつての経緯から四島一括返還を主張し続けてきたが、最近になってまず色丹歯舞の二島返還を迫る方向に変えたようだ。ただこの二島の面積は四島の約7%でしかない。日本は安倍首相が議長を務める6月のサミット(G20)までに平和条約締結を行いたいとしているが、したたかなロシアが経済協力をすればOKというか。そろそろ成果を出さないと安倍外交にいずれ愛想をつかすだろう。

(財界 2019年2月26日 第489回)

参考情報

2月26日付けのロイターはロシアの国営通信会社ロステレコムが同日、南クリール諸島(北方領土)のうち、択捉、国後、色丹の3島に高速インターネット網を構築したと発表し、ロシアのサハリンから三島の4町村に総延長815キロメートルの光ファイバーケーブルが敷設され、高速インターネットが利用可能となったと報じています。

image by: 首相官邸

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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