日本のために首脳会談を決裂させたトランプが目論む「皮算用」

 

米朝首脳会議

ハノイの米朝首脳会談は、コーエン氏の議会証言と同時になり、米国の全テレビ局の中継が、コーエン議会証言になってしまい、トランプ大統領が望んだ首脳会談に注目が行かなかった。その上、コーエン氏の証言で少なくとも選挙資金の不正利用が濃厚となってしまった。

それかどうかは知らないが、北朝鮮が希望した寧辺(ニョンビョン)の核施設を完全解体するという部分的非核化に対して、韓国も望む開城の工場団地再開などの一部の経済制裁解除を行う方向で、米国担当者は、北朝鮮担当者に話をしていたが、首脳会談で北朝鮮は、トランプ大統領が弱気であると見て、実質すべての経済制裁解除に引き上げた。北朝鮮には、寧辺の他に秘密の核濃縮施設があり、少なくともその解体をトランプ大統領は要求したが、金正恩委員長は拒否した。このため、トランプ大統領は署名せずに合意を先送りした。

米トランプ大統領は、完全な非核化の道筋の提出がない限り経済制裁解除もないと金正恩委員長に明確な形で言ったようだ。この条件を持ち出したのは、安倍首相とトランプ大統領の電話会議で、安倍首相が強く主張したからのようである。

このため、ボルトン補佐官は、米国担当者ベースの合意内容で韓国と調整するはずが、急遽、韓国訪問を中止した。何かあると思ったが、最終局面で、日本の安倍首相との電話会談でトランプ大統領が意見を変え、電話会談に出席していたボルトン補佐官もトランプ大統領の意見が変わったと知ったので、急遽、韓国行きを止めたのである。ボルトン補佐官は、当初首脳会談に出席予定ではなかったが、韓国との調整にために出席になった。

米朝首脳会談の記者会見でもトランプ大統領は、アジアの同盟国との関係から合意文書に署名しなかったと発言している。このため、トランプ大統領は、日本に見返りを要求してくる。

そして、NY株価は、合意見送りでも下げずに上昇している。米朝首脳会談を材料視もしていないようである。ノーベル平和賞狙いの首脳会議をしても、何も得るものがなかったようだ。

トランプ大統領は、この合意見送りで中国に対しても簡単には合意しない信号を送り、中国も身構えている。新華社の記事では、重大な局面を向かえるかもしれないと評論している。ライトハイザー通商代表が中国との交渉で厳しいので、トランプ大統領はもう少し緩くしろと注文したようであるが、最後はライトハイザー代表の意見を聞き入れる可能性も出ている。

トランプ大統領は、株価安定には、FRBの利上げ見送りと資産縮小停止でよくて、米中通商協議で少しぐらいもめても大丈夫と見たようである。FRBの緩和方向の姿勢が重要と思っている。

合意見送りで一番影響が大きいのが韓国で、開城の工場団地再開により賃金の安い北朝鮮労働者を使えるので、コスト的に中国より断然優位になると見ていたが、それができなくなってしまった。経済の悪化を乗り越える切り札と見ていたので、文大統領には大きな誤算になっている。

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け