尖閣周辺で続く中国の領海侵犯。海保の規模と予算は適正なのか?

 

中国メディアが「第2海軍」と呼ぶ海警局は、もともと国務院に所属していましたが、2018年7月、共産党中央軍事委員会の統制を受けることになりました。

そこで、「海警局は組織面だけでなく、公船の大型化と武器の充実も顕著で、『海軍との一体化』が進む」「海警局は退役した海軍艦艇などから大型砲を除去して再利用しているとされる」といったセンセーショナルな報道が出ることになります。

しかし、「武器の充実」は顕著ではなく、むしろ抑制的でさえあります。海軍艦艇を再利用した巡視船は6隻にとどまっています。

着々と増強される中国海警局の公船に対して、海上保安庁の巡視船艇は435隻です。海保によると、2012年に海保は1000トン以上の巡視船を51隻、中国側は40隻を保有していましたが、現在では中国が倍以上と逆転し、2019年は日本67隻、中国145隻になる見通しとのことです。

しかし、さらに増強が計画されている一方、中国の公船は東シナ海だけに投入されるのではありません。南シナ海など広大な海域に展開するためのものです。それを考えると、比較においても違った評価が出てくるはずです。

あたかも、全ての公船が日本に向けられるかのおどろおどろしい議論は、木を見て森を見ずの議論に陥りがちで、そこから生まれる泥縄式の海保増強論は、かえって地道な海洋権益保全の政策を歪めかねません。海保の定員を大幅に増やし、育成しなければ、いくら船と武器を増強しても、望むべき機能を発揮できません。

日本の領海と排他的経済水域を含めると世界第6位です。安倍首相には、中国より広い海域を抱えている海洋国家として、海洋権益の屋台骨である海上保安庁の適正規模を国民に問いかけることを始めて欲しい。そして、すみやかに予算的には現在の3倍、規模的にも現在の2倍を実現してもらいたいものです。(小川和久)

image by: Igor Grochev, shutterstock.com

小川和久この著者の記事一覧

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 NEWSを疑え! 』

【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 尖閣周辺で続く中国の領海侵犯。海保の規模と予算は適正なのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け