4月1日施行の改正入管法で日本にも外国人労働者が大量流入することになりましたが、改正案枠組みのみ先行という「制度脆弱性」に直面しているようです。AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さんは今回の無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』で、豪州の外国人労働者の健康診断フローと比較しただけでも我が国の改正入管法は問題点が目立つと指摘しています。
外国人材受け入れ – 国民だけが知らない今そこにある危機
全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。
4月1日、ついに改正入管法が施行され、外国人労働者の大量受け入れが始まります。
今回、改正入管法は驚くほど速く可決されました。法律で枠組みだけ決めて、詳細は担当省庁(省令)で決める、というやり方でした。
素朴な疑問です。
詳細を担当の役所に任せると言っても、国会を離れてしまったら、誰がチェックするのでしょうか?
その機能を果たすのが、自民党内の部会なのです。
たとえば、法務部会です。国会議員の部会長がいて、興味のある議員が集まり、官僚の報告を聞いて質問します。実は日本では、まともに機能しない国会に代わって、この部会が実質的な法案審査機能を果たしているのです。
それで、たくさんある部会は機能しているのでしょうか?
国会議員は本当に忙しいので、部会も出席できたりできなかったり…。遅れて来て早く退出したり…。人気のある部会もあれば閑散としている部会もある…。
早々に国会を離れた改正入管法も、自民党の部会や合同会議に戻されて、詳細について法務省の官僚が主に報告し、議員が質問していたと聞いています。
実は、私が気にしてずっと追及していた問題があります。
日本へ労働目的で入国する場合の条件は以下のとおりです。
- 18歳以上であること
- 健康状態が良好であること
- 保証金の徴収等をされていないこと
- 送出し国で遵守すべき手続きが定められている場合は、その手続きを経ていること
- 特定技能1号:必要な技能水準及び日本語能力水準
(注)技能実習2号を良好に修了している者は試験を免除 - 特定技能2号:必要な技能水準
素朴な疑問が浮かびます。
「健康状態が良好であること」
これ、どうやって担保するのでしょうか?
たとえば移民国家オーストラリアの場合、事前の健康診断が義務付けられており、病院も指定されています。検査項目ももちろん指定されています。
これ、常識です。
今回の外国人労働者受け入れに際して、健康診断が義務なのかどうか?3月下旬の時点で、議員に質問しても、法務省に質問してもはっきりしませんでした。
ひとつはっきりしたのは、病院を指定していない、ということです。検査項目については、一応雛形を作りました。しかし、病院を指定せずにどうやって正しく健康診断が行われる保証があるのでしょうか?
考えてみて下さい。
なんらかの感染症を持っている人が入国してパンデミックが発生したらどうなるか?
ましてオリンピックの最中に!
また、外国人労働者が入国して住民票を入れると、国民健康保険証がもらえます。入国早々に発病したり、高額医療が必要になるケースもあり得ます。
だから、オーストラリアでは指定病院による事前の健康診断が義務付けられているのです。
実は、この点に気が付いて法務省に質問してくれた議員が複数いました。しかし、最後まで詰めることなく、散発的な質問で終わってしまっています。
これほど重大な問題なら、部会長がフォローアップすべきなのですが、部会長自身がことの重大さを理解していなかったのでしょうか。
また、本来ならば、法務副大臣が責任を持って法務省に回答させるべきですし、法務省の対処が不十分なら改善させるべきです。そのために大臣や副大臣がいるはずですが、部会に出席していないことが多いと聞いています。
その一方で、「発展途上国でそんなことを突っ込むと都合が悪いんだよ」などと平気で言う議員もいます。
そもそも健康診断を実施できない国からは労働者を入れるべきではありません。
こんな基本的でかつ重大な穴も埋められないまま、なし崩し的に進む外国人労働者受け入れ。これが日本という国の脆弱さなのです。
このリスクに気付いているのは、このメルマガの読者だけかもしれません。
※追記
もうひとつ。N1と呼ばれるレベルの日本語能力を有し、日本の大学を卒業して日本で就職した場合は、雇用関係が続く限りは家族帯同で無期限で滞在できる、つまり、永住できることがわかりました。
その結果、海外では「日本に移住するなら留学が手っ取り早い」という話が広まっているそうです。ちなみにオーストラリアでは労働許可には必ず期限があります。このように甘いのは日本だけです。
山岡鉄秀 Twitter:https://twitter.com/jcn92977110
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