現在「教員」という職が「志願者の減少」という危機にあることは広く知られていますが、「教員になりたがらない」という悪循環はどこからきているのでしょうか。今回の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』では、著者で漫画『ドラゴン桜』の指南役としても知られる親野智可等さんが志願者減の原因を分析するとともに、教育現場の改革を強く訴えています。
日本の教育改革は、なぜ失敗するのか?
報道によると、2019年度(2018年度に実施した)の公立学校教員採用試験の倍率は4.0倍とのことで、6年連続で低下を続けています。特に顕著なのが東京都における小学校教員の倍率で、なんと2.7倍です。これは、もはや危機的状況と言わざるを得ません。倍率が下がると質が担保できなくなるからです。
大学の教育学部を志願する学生も減り続けています。教育学部以外で教職課程を履修していた学生も途中で放棄するケースも増えているようです。
なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか?いろいろな理由がありますが、一番大きいのは教員の仕事があまりにも多忙で、超過重労働によってブラック化しているからです。2017年度に、精神疾患になって休職した教員は5,077人にも上ります。
給料も下がり続けています。
以前は、親が教員である場合、その子どもも教師になることが多かったです。でも、今それも減っています。教員である親を見ていれば、子どもも「これは大変だ。自分はやめておこう」となりますよ。以前は教師である親が、わが子に「先生はいいぞ。やりがいがあって給料も高い。お前も先生になれ」と言っていました。でも、今は「やめとけ」と言います。
では、どうしたらいいのでしょうか?
絶対に必要なのは、教育予算を増やして教員を増やすことです。1人の先生が最大40人まで受け持つ(40人学級)などという状態は、先進国で唯一、日本だけです。ヨーロッパもアメリカも、先進各国はどこもかしこも30人以下です。しかも、複数担任制が常識化しています。1人の教員ではなく2人以上の教員が受け持つのです。
同じ空間に複数の大人がいるので、教員による暴言や体罰も防げます。セクシャルハラスメントや性犯罪も防げます。それぞれの子どものニーズに合わせた対応も可能になります。子どもの学力に応じた指導も、心のケアも、よりきめ細かくできるようになります。いじめの発見率も高まります。学力にしても、いじめの問題にしても、1人の教員が見る人数を減らさないことには、どうしようもありません。
教員を増やすためには、教育関係予算を増やす必要があります。ところが、日本の教育予算がGDPに占める割合は、常にOECD加盟国の中で最低です。
学力低下、いじめ、先生の不祥事など、教育現場における問題が発生すると日本中が大騒ぎします。そして、「学校も先生も、もっとしっかりしろ」ということになります。「教員はもっと力量をあげろ」とか、「もっと児童・生徒とコミュニケーションを取るべき」とか、「関係部署がもっと連携しなければ」とか、いろいろ出てきます。でも、全てが精神論です。だから、一向に教育改革が進まないのです。
どんな企業でも、特定の部署の業績を伸ばしたいと思ったら、そこの予算を増やして人員も増やします。当たり前のことです。それをやらずに、精神論だけで「もっとがんばれ」と言っているだけでは、決してよい結果は出せません。教育も同じことです。